LINEやSyn.とどう差別化する? “行動促進メディア”として生まれ変わるGunosyの狙い

» 2014年11月12日 01時01分 公開
[村上万純,ITmedia]

 700万ダウンロードを突破したニュースキュレーションアプリ「Gunosy」が次に目指すのは、あらゆるサービスの入口となる「スマホ・ポータル」だった。Gunosyは11月11日に同社初となる事業戦略発表会を開催。予約や買い物などの決済行動をGunosyアプリ上で行う新サービス「Gunosy Platform」を発表した。ニュースキュレーションアプリとして多くのユーザーを獲得したGunosyは、なぜプラットフォーム化の道を歩むことにしたのか。福島良典CEOと竹谷祐哉COOがその背景を語った。

photo 左からGunosy 竹谷祐哉COOと福島良典CEO

買い物、予約ができる「検索いらず」なスマホポータルに

 2011年10月にリリースされたGunosyは、2014年3月にテレビCMを、翌4月には海外展開を開始し、順調にユーザー数を伸ばしてきた。11月時点で700万ダウンロードを突破しており、特にここ数カ月の伸びは目を見張るものがあり、「2014年10月は月間100万ダウンロードを記録し、成長が加速している」と福島氏は話す。1年後には2000万ダウンロードを達成すると見込んでおり、機は熟したと言わんばかりに、今回のプラットフォーム化が明かされた。「構想自体は3年前からあったが、ある程度ユーザーが集まらないと意味がないと思い、このタイミングになった」と福島氏は説明する。「Gunosy 5000万人都市構想」というコンセプトの下、Gunosyという都市に住む人々の生活ポータルとなるべく、さまざまな生活密着型サービスとの連携を強化していく。

photo スマホポータルを再定義する

 提携メディアは200を超え、その内の100メディアに月間100万PVを送客、広告を出稿する企業は400社以上と実績も付いてきた。デイリーのアクティブユーザーをマンスリーのアクティブユーザーで割った値は46%で、ユーザーが普段からGunosyを愛用していることが分かる。福島氏が最も強調したのは、「累計100万コンバージョン」という数字。これは送客先で実際に予約や購買などの行動に至った回数で、Gunosyが単なるニュースアプリではなくユーザーの行動を促すメディアとして機能していることを示している。今後は100以上のメディアで月500万PVを送客し、500以上の企業と提携、取引件数25万以上を目指すとしている。

photo Gunosyの実績

 コンバージョンについては、新構想の根幹をなす部分でもある。これまでユーザーは興味関心のあることを自ら「検索」し、そこから予約や購入をしてきたが、「Gunosyではこの検索がいらなくなる、情報収集、予約・購入、旅行プランの比較などをGunosy上で完結させる」と福島氏は説明する。

photo 使用イメージ

企業とユーザーの関係を強化

 12月からは、アプリの右下にチャンネルボタンを常駐させる。ボタンをタップするとユーザーの興味のあるチャンネルをレコメンドしてくれる。これにより、フォローされているにもかかわらずPVが芳しくなかった各媒体へのさらなる送客を図る。

 また、これまではニュースメディアばかりだったチャンネルに、旅行や買い物、宅配、ラジオ分野などのチャンネルを追加し、Gunosyアプリ内でそれらのサービスを受けられるようにした。旅行プランを企業担当者とユーザーがメッセージでやり取りできるオンラインチャットの機能も提供する。これにより、ユーザーが配信されたニュースを読むという単純な図式から、興味のある企業やサービスの情報を受け取り、実際にコミュニケーションを取りながら次の行動につなげていくという導線ができた。

 決済についてはGunosyが外部にAPIを提供し、基本的にGunosy内で完結させるようにする。アプリ上での取引が増えてくると、「今後Gunosyポイントのような独自サービスが必要になってくるかもしれない」と竹谷氏は今後の展望を語った。

photo Gunosy内で一連の行動を完結させる

 パートナー企業の第1弾として発表されたのは11社14サービスで、「au」(KDDI)のエンターテインメントコンテンツ、クーポンサイトの「Groupon」(グルーポン・ジャパン)、求人サイトの「ジョブセンス」(リブセンス)、旅行サイトの「DeNAトラベル」(ディー・エヌ・エー)など。「現在は日常生活に近いサービスとの連携が主だが、今後は消費者金融、不動産などさらに分野を広げてパートナーを増やしていきたい」と竹谷氏は話す。

photo パートナー企業一覧
photo パートナー企業は順次増やしていく

「LINE」や「Syn.」との違いはどこに?

 スマートフォン時代のプラットフォーム構想と言うと、記憶に新しいのが10月9日に開催されたLINEの発表会だ。

 LINEもオフラインとオンラインの結びつきをより強固にし、日常生活に密着したサービスとの連携を強化していく方針を示した。両者は一見似た性質を持つサービスに見えるが、竹谷氏は「LINEはユーザー同士がコミュニケーションを取る場で、Gunosyは企業とユーザーがコミュニケーションを取る情報プラットフォーム」と定義し、両者は似て非なるものだと主張する。

 スマホ向けポータルを目指す取り組みとしてKDDIが10月に発表した「Syn.」(シンドット)も「互換的な存在」(福島氏)と位置付けており、Syn.はユーザーとコンテンツとの出会いを与える場であるのに対して、「Gunosyはこれまで分断していた企業とユーザーとのシームレスな購買・予約行動を可能にするもの」だと説明する。

 多くのユーザーを獲得するアプリが次々とプラットフォーム化を目指すと、当然ユーザーにとっての「場所」の数もその分だけ増えることになる。ユーザーは各プラットフォームを使い分けることになるのか、それともプラットフォームが淘汰(とうた)され、一握りの場所だけが生き残るのか――。日常生活に寄り添い、決済回りを囲い込むという基本戦略が類似してくると、パートナー企業や提供するサービスで差別化を図ることが求められそうだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年