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iOS 11の「Apple Pay」は何が便利になったのか(2/3 ページ)

» 2017年09月24日 06時00分 公開

Apple Pay新機能の対応状況は?

 2016年10月に日本での提供がスタートしたApple Payだが、その仕組みは少々特殊なので、おさらいしつつ解説していこう。

 Apple Payに対応したクレジットカード(デビットカードやプリペイドカードも含む)をiPhoneに登録すると、そのカードの発行会社に応じてiDまたはQUICPayの機能が付与され、「デバイスアカウント番号」と呼ばれるそのiPhoneでのみ有効なバーチャールカードの決済番号がひも付けられる。

 またこれとは別に、クレジットカードの券面にある国際カードブランドの決済機能がバーチャルカードに付与され、こちらもデバイスアカウント番号がひも付けられる。

 つまり、1枚のカードを登録するごとに2つのデバイスアカウント番号が登録される仕様だ。iOS 11の配信直前までの段階では、前者が「店頭での非接触通信による決済」に用いられ、後者が「アプリまたはWebブラウザでの決済」という形で役割が分けられていた。

Apple Pay Apple製品とApple Payのサービス対応状況(Apple Pay公式ページより)
Apple Pay Apple Payが利用できる店にあるマーク、店舗、サービスの例

 ただし現時点では、Visaカードが日本のApple Payに対応しておらず、Apple Pay対応を表明するカード会社発行のクレジットカードであっても決済のブランドがVisaの場合、後者のデバイスアカウント番号は付与されない。つまり、店頭での支払いは可能だが、アプリまたはWebブラウザでの支払いには対応しない。また、iOSのWalletアプリからはSuicaにチャージできず、VISAカードを登録したSuicaアプリからチャージする必要がある。

 今回のiOS 11が配信されたことで、後者の国際カードブランドにひも付くデバイスアカウント番号を使って、いわゆるType-A/B系の決済サービスを日本国内発行のカードでも利用可能になったわけだが、関係各社の対応をもう少し詳しく見ていこう。

 トヨタファイナンスは同社発行のクレジットカードで、MasterCardの非接触決済サービス「Mastercardコンタクトレス(PayPass)」とJCBの「J/Speedy」が利用可能になったことを報告した。KDDIは「au WALLET」(クレジットカードとプレイペイドカード両方)でのMastercardコンタクトレス対応を認めている。

Apple Pay KDDIの「au WALLET」(クレジットカードとプレイペイドカード両方)でMastercardコンタクトレスが利用可能に

 一方でNTTドコモが「dカード」の対応について「現時点では未対応だが、対応を進めている最中」とのコメントを出しており、必ずしも全てのApple Pay対応カードがこの機能をサポートしているわけではないようだ。

 この他、iOS 11配信開始から2日ほどかけて、幾つかのカードでの利用可否が判明しつつある。

 au WALLETの場合、Apple Payに登録することで国際カードブランドとしてはMastercardコンタクトレスへのひも付けが行われるが、これに関してKDDIが対応状況について面白い回答をしている。

 iOS11以降のApple Pay(au WALLETプリペイドカード)は、国内外のMastercardコンタクトレス加盟店(一部店舗を除く)でご利用いただけます。

 Apple Pay(au WALLETクレジットカード)は、国内のMastercardコンタクトレス加盟店(一部店舗を除く)でご利用いただけます。海外利用も対応予定ですが、時期は決まり次第ご案内いたします。

 つまり、同じau WALLETでありながら、カード種別によって利用可能な店舗に違いがあるのだ。この対応の差は、カード発行会社の違いに由来すると推測される。「au WALLETクレジットカード」の発行主体はUFJニコスで、「au WALLETプリペイドカード」の発行はクレディセゾンだ。

 これ以外には、オリエントコーポレーション(オリコ)のカードがApple Pay経由でMastercardコンタクトレスを利用可能なことが確認できた。

Apple Pay TSUTAYAのセルフレジにて、Apple Payに登録したオリコカードでMastercardコンタクトレス(PayPass)決済を行ったところ

 一方でdカードが未対応であることを考えれば、この発行主体である三井住友カードは未対応または何らかの機能制限が現状ではあると予想できる。

 現時点での各社の対応はまちまちで、恐らくAppleやカード各社がこの新機能をアピールしない理由はこの辺りに由来する。今後は2017年中くらいをめどに残り各社の対応が進み、あらためてアナウンスされるとみている。

 また、対応機種による制限についても判明している。トヨタファイナンスによれば、「iOS 11.0以降にアップデートしたiPhone X、iPhone 8、iPhone 8 Plus、Apple Watch Series 3ならびに日本国内で販売されたiPhone 7、iPhone 7 Plus、Apple Watch Series 2」が対象となり、「iPhone 6s」以前の機種や海外で販売されたiPhone 7については未対応となっている。

 機能的にはMastercardコンタクトレスはFeliCaを必要としないため、ここで未対応となっているiPhone 6s以前の機種などでも問題なく利用できそうだが、現時点では未対応だ。これは「日本国内発行のカードを登録して、iDまたはFeliCaが利用できる機種」という縛りがあるのだと思われる。

 この他、トヨタファイナンスの説明によれば「Apple Payを設定済みの場合、再度設定する必要はない」とあるが、au WALLETのケースで「カードを一度削除して再設定しないと、読み取りエラーが発生して決済できない」という現象が確認できており、iOS 11以降の新機能を利用するにあたっては再設定を行った方がいいようだ。

 いずれにせよ、まだまだApple Payにおける新機能の提供は混乱状態にあり、正式発表があるまでは暫定的な対応と考えた方がいいかもしれない。

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