エクスチェンジコーポレーション(以下、ExCo)が提供している決済サービス「Paidy」に、ダイナテックのホテル予約システム「ダイレクトイン」を連携させることが決定。2018年4月から順次、3100の国内ホテルや旅館の予約時に、Paidyで決済ができるようになる。
Paidyは携帯電話番号とメールアドレスを使った後払いの決済サービス。クレジットカードを事前に登録する必要はなく、翌月にコンビニエンスストアや銀行振込、口座振替で支払いができる。
手順としては、支払い手段でPaidyを選択し、電話番号とメールアドレスを入力。その後、SMSで送られてくる認証コードを入力すれば支払いが完了する。他のサービスでIDやパスワードに相当するのが電話番号とメールアドレスで、認証コードを送信することで本人確認をしているというわけだ。
現在、Paidyは約70万店舗のECサイトで提供されているが、これを宿泊施設に拡大するというのが今回の発表。つまりオンラインで宿泊の予約をする際に、支払い手段としてPaidyが選べるようになる。
ExCoのラッセル・カマー会長は「日本のEコマースでは55%がクレジットカード、45%が代引きかコンビニ支払いが使われている。特に若者は、カード番号をオンラインで入力するのが不安だったり、そもそもカードを持てなかったりする人が多い。Paidyはカードが要らないのでとても便利。全てモバイルで操作でき、自動振替ならペーパーレスだ」とPaidyのメリットを説明する。なおPaidyユーザーの90%がスマートフォンから決済しているとのこと。
ExCo 執行役員 営業本部長の橋本周知氏は、Eコマースの市場規模が拡大する中で、特に旅行サービス市場の伸びが顕著だと説明。また、2017年の国内旅行者数は訪日外国人に比べて日本人は10倍以上いるという統計もあり、まずは日本人旅行者をターゲットとしてサービスを提供する。
ホテルがPaidyを導入することのメリットは、まずクレジットカードを持っていない人たちに使ってもらえること。これによって宿泊施設は新たなユーザーを獲得できる。ユーザーは事前に支払い手続きをしているので、当日のキャンセルを抑えやすくなる。またユーザーが宿泊をキャンセルした場合でも、キャンセル料はExCoから加盟店(ホテル)に支払い、ユーザーからはExCoが別途徴収するため、ホテル側にとってはキャンセル料が100%保証される形になる。
予約システムを手掛けるダイナテックの齋藤克也社長は「宿泊施設の大きな問題点の1つとして『キャンセル』がある。現地払いだとなかなかキャンセル料が取れないが、一方で事前のカード決済も25%ほどで頭打ちの状態。事前決済に誘導していくことで、キャンセルを抑止することにもつながっていく」と、Paidy連携のメリットを話す。
初期費用や固定費用は掛からず、店舗側が支払うのは、1トランザクションあたりの決済手数料のみなのもメリットだ。
ではユーザーがPaidyで宿泊費を支払うメリットはどこにあるのか。ExCoの調べでは、約30%のユーザーが宿泊施設を予約する際に事前にカード決済をしており、残りの約70%は現地で支払っているという。カード決済をしない理由として「セキュリティの不安」や「カードを持っていない」などが挙げられるが、Paidyがこれを解決。クレジットカードを使わなくても、ユーザーは現地で精算する必要がなくなるのがメリットだ。
Paidy自体は分割払いにも対応しているが、ダイレクトインと連携した宿泊施設での支払いで、分割払いには当初は対応しない。また支払限度額は設けていない。
クレジットカードはポイントをためられるのがメリットだが、Paidyでのポイントサービスは現時点では予定していない。ただ、「コンビニで支払ったユーザーに抽選で1000人に500円をキャッシュバックするというキャンペーンは実施している。支払う行為自体にワクワク感が出るようなことはやっていきたい」(橋本氏)とのこと。特に宿泊施設での支払いは高額になるので、何かしらの還元策は期待したいところだ。
与信審査は、SMSで送られてくる認証コードを入力した時点で行われ、約1秒以内で完了するという。Paidyを初めて利用する人に対しても、電話番号とメールアドレスから判定しているというが、その判定基準は「企業秘密」(橋本氏)。
橋本氏とラッセル氏によると、審査にはAIエンジンを活用しており、ECサイトでのPaidyによる決済は、9割強が審査を通っているという。「何百万回と審査をする中で、AIエンジンは日々改善している」とラッセル氏。
なお、MVNOなどで提供されているSMS対応のデータSIM(音声非対応)を使っている場合でも登録は可能だが、「審査が通るかは別」(ExCo担当者)とのこと(評価が下がるかもしれない)。大手キャリアの電話番号なのか、MVNOの電話番号なのかも見ており、ここも審査結果に関係していそうだ(大手キャリアを長年契約している人は審査が通りやすくなる、など)。
Paidyでは、2018年度をめどに、リアル店舗での決済サービスも提供していく予定だが、決済手段や導入店舗などは未定。「バーコードになるかもしれないが、店舗側とユーザーのニーズ次第だと思っている」(橋本氏)
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