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» 2018年03月30日 06時00分 公開

MVNOの深イイ話:なぜMNOのテザリングは有料で、MVNOは無料なのか (1/3)

MNOのテザリング有料化問題は、大多数のMVNOにとって対岸の火事ですが、なぜMNOはテザリングに課金したいのか。なぜMVNOにとって対岸の問題であるのか。MVNOはテザリングをどのように考えているのか。この点を解説します。

[佐々木太志,ITmedia]
テザリング Wi-Fi機器を通信可能にする「テザリング」

 少し前ですが、KDDIが一部のデータ定額プランにおいて、それまでキャンペーンとして無料で提供してきたテザリングオプションの料金を徴収するというニュースが話題になりました。また、ソフトバンクは同様のキャンペーンを延長したものの、5月末にはその延長も切れることから動向がにわかに注目されています。また、NTTドコモは無料キャンペーンを無期限で延長しているものの、はっきりと無料化したとは言っていない状況です。ここに来て、MNO(キャリア)のテザリング料金がホットトピックとなっています。

 この問題は、大多数のMVNOにとって対岸の火事ですが、なぜMNOはテザリングに課金したいのか、なぜMVNOにとって対岸の問題であるのか。MVNOはテザリングをどのように考えているのか。そのあたりを今回は解説しようと思います。なお、筆者はMNOの中の人ではないため、今回の記事には多分に個人的推測が含まれています。その点についてはあらかじめご了承ください。

テザリング KDDIはテザリングの無料キャンペーンを3月31日で終了する。写真は、キャンペーン終了の案内メール

テザリングと料金プランの微妙な関係

 なぜMNOの中にテザリングを有料にしようという動きがみられるのでしょうか?過去をひもとくと、禁止されたり、高額請求の適用になったりと、テザリングの扱いは不遇であったことが分かります。

 2000年代、第3世代携帯電話(3G)が普及した頃、KDDIが「EZフラット」で端緒を切り、他のMNOが追随したのがデータ通信の「定額制料金プラン」です。この定額制料金プランによって多くのユーザーが心行くまで携帯電話を利用できるようになり、さまざまなアプリや「写メ」が広く普及するようになりました。

 なぜ定額プランが実現できたのでしょうか? この頃の定額制料金プランは、今のMNOやMVNOの料金プランで当たり前となっている「定量制料金プラン」(一定の料金で使えるデータ量をあらかじめ決め、そのデータ量に達するまでは高速通信を自由に楽しめ、データ量を超過した場合は通信速度が遅くなるプラン)は、まだ技術的に難しい時代ですから、本当に使い放題のプランでした。

 ただ、当時の携帯電話(ガラケーや初期の3Gスマートフォン)が消費するデータ量は、今時のスマートフォンに比べれば微々たるものだったので、MNOも安心して使い放題の定額性料金プランを提供できた、と言えます。

 ところが、PCは別です。PCでは当時から数10MBといった大容量のファイルをやりとりすることは決して珍しくありませんでしたし、Winnyに代表されるP2Pアプリや、Windows Updateなどのバックグラウンド通信も大量のデータを消費します。

 そのため、初期の3Gのスマートフォンでは、テザリングによりPCの通信をスマホに流すことを禁止したり、外部機器を接続した際の上限料金をスマホだけを使ったときとは別に設定したりして、PCを使ってモバイル通信を楽しみたいお客さまにはUSBドングルやWi-Fiルーター用のデータプランを別に契約させていたのです。この頃は、PCでデータ通信をするためにイー・モバイルやUQコミュニケーションズのWi-Fiルーターを別途契約することも一般的でした。

 つまり、当時のMNOの料金プランに対する考え方は、「定額制料金プランにはいまだ技術的に上限は設けられない。そのため、ネットワークの負荷になるような「使い方」を制限することで、使われすぎて赤字になったり、ネットワークが専有されて他のお客さまに迷惑が生じたりすることを防ぐ」というものだったのです。この頃は、ガラケーやスマートフォンの1バイトと、PCが使う1バイトは必ずしも平等でなく、携帯電話会社がお客さまの利用用途に介入してくることが当たり前だったということです。

 時が流れ、2011年、NTTドコモはテザリングを解禁し、かつ4G LTEの料金プランとして開始した「Xiパケ・ホーダイ」において、初めてテザリングのデータ料金をスマートフォンの料金と同じに扱うようになりました。これは、4G LTEというより広帯域のネットワークの導入により負荷であると見なされる使い方のしきい値が上がったこと、またXiパケ・ホーダイがそれまでの(3Gの)完全定額制料金プランと異なり、月間7GBの上限が設けられていたことに理由があると思われます。

 まだまだ定量制料金プランとはいえない荒削りのプランでしたが、上限が設けられるようになった以上は、「月間7GB」のデータ量を買ったユーザーにとって、その7GBをスマートフォンで使おうがPCで使おうが自由である、という新しい(今となって当たり前ですが)考え方がこの時点で登場したといえます。

 では現在はどうなっているでしょうか。ドコモが2014年に日本のMNOとして初めて提供した4G LTEの定量制料金プラン「パケあえる」では、テザリングは引き続き無料で利用できるものの、その後に登場した大容量プラン「ウルトラデータパック」ではテザリングを使うためのオプション料金が設定されました(ただ、その時点からオプション料金無料キャンペーンが開始され、今に至るもオプション料金は取られていない)。

 KDDIとソフトバンクは、多くのプランにおいてテザリングは依然として別途申し込みが必要な有償オプションサービス(プランにより+500〜1000円程度)であり、それがさまざまな施策により無料となったり、取られたり、ということになっています。

 つまり、2011年頃から普及した「スマートフォンで使おうがPCで使おうが1バイトは同じ1バイト」という考え方は、定量制料金プランと共にMNO各社に普及したものの、「テザリングをする」ということに対し課金するという考え方は、いまだに各社に根強く残っている、というわけです。

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