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» 2018年06月12日 06時00分 公開

モバイル決済の裏側を聞く:なぜNFC決済を導入? マクドナルドがモバイル戦略で目指すもの (1/2)

読者の皆さんで、これまでマクドナルドを利用したことがないという人は少ないのではないか。そんなマクドナルドが、Type-A/B方式のNFCを活用した決済サービスを導入した。その狙いは? マクドナルドのモバイル戦略を聞いた。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

 読者の皆さんで、これまでマクドナルドを利用したことがないという人は少ないのではないか。世界中どこでも手頃な値段で期待された味を楽しめるマクドナルドは、海外出張の多い筆者にはなくてはならない存在で、決済まわりの記事では毎回といっていいほど取り上げる定番のお店でもある。最近では電子マネー、特に筆者が主力としているモバイルSuicaにも対応したことで、日本で行く機会も非常に多くなった。

 気になるのは、同社のテクノロジーやモバイル戦略だ。

マクドナルドが導入したNFC決済(NFC Pay)とは

 日本マクドナルドは3月13日に、直営とフランチャイズを含む全国約2900店舗でNFCを使った決済サービスの提供を開始した(関連記事)。NFC決済とは、日本で普及しているFeliCa技術を使った非接触決済サービスとは異なり、いわゆるType-A/B方式と呼ばれる海外で一般的な技術を用いた非接触決済サービスで、MastercardやVisaといった国際ブランドが提供する「EMV Contactless」と呼ばれるものだ。マクドナルドはこの2ブランドに加え、American ExpressとJCBの2ブランドにも対応している。

 ここでNFC決済導入の意味は大きく2つある。1つはモバイルや新技術への対応だ。マクドナルドでは既に日本国内のFeliCa系サービスとして、iD、楽天Edy、Waon、nanaco、QUICPay、そして各種交通系電子マネーに対応している。これらはおサイフケータイ対応端末や国内で発行されるクレジットカードをApple Payなどに登録したユーザーであれば問題ないが、多くの海外端末にとって利用可能な非接触決済サービスはType-A/B方式のEMV Contactlessに限られている。

 ゆえにNFC対応によるモバイル端末の取り込みは、キャッシュレスが進む世界事情を鑑みれば重要なものだ。今後はさらにリストバンドやスマートウォッチを使った決済なども登場することを考えれば、より決済の間口が広がる。実際、GPSウォッチを販売するGarminがVisaとの提携で5月に「Garmin Pay」を国内で開始している他、フィットネストラッカーのFitbitが2018年内にも日本で決済サービスを開始することを予告している。

マクドナルド ウェアラブル機器を使って決済が可能なFitbit Pay
マクドナルド Fitbitでは2018年内にも日本での決済サービス参入を計画している

 2つ目はインバウンド対応だ。日本国内では現在NFC決済を利用する方法が限られており、今回の対応で最も恩恵を受けるのは海外からの旅行客だ。例えば国策としてクレジットカードやデビットカードへのNFC機能搭載を推進したオーストラリアでは、同国のカード保持者の8〜9割程度がNFC決済を利用可能な状態で、店舗での非接触対応が進んでいる。同様にカードを発行するイシュアのほとんどがNFC搭載を必須とした英国やフランスでも急速に非接触対応が進んでおり、2020年までには欧州圏で全ての決済端末が非接触対応を義務付けられていることもあり、そう遠くないタイミングでオーストラリアに近い普及度合いを見せるだろう。

 一方で日本国内では、Visaがイシュアが発行するカードのNFC対応を半強制化したことで、今後はVisaデビットなどを中心に対応カードが増えてくるとみられる。日本において、現時点ではAmerican Express、JCB、Mastercardのブランドが付いたカードをApple Payに登録することがNFC決済利用の一番の近道だが、今後は豪欧のように物理的なカードを使ったNFC決済が身近なものとなるかもしれない。いずれにせよ、外国人にとってFeliCaベースの日本独自のサービスではなく、普段使いの決済手段を使えるのは、利用する側と店舗の両方にとってメリットがある。

マクドナルド NFCだけでなく、IC付きクレジットカード対応もインバウンド対策の1つ。磁気カードを店員に渡すのではなく、より安全なICチップを使って顧客が手元で操作を行う

 今回は、このあたりの新しい決済とモバイル対応についてマクドナルドに質問し、最新状況を整理した。

米国では同業他社と比較してもNFCへの取り組みが早かった

 NFC決済導入の狙いについて日本マクドナルド広報に尋ねたところ、「お客さまの利便性の向上のための取り組みの一環です。日本ではまだそれほど普及していませんが、今後の普及や海外からのお客さまの利便性を向上させるため導入しました。数値的な目標は設けておりませんが、多くのお客さまに利便性を実感していただければと考えております」との回答だった。

 インバウンドを主眼に、今後のNFC決済普及を見込んでの先行投資というスタンスだ。2020年の東京五輪開催に合わせ、公式スポンサーでもあるVisaは日本でのNFC決済環境整備に向けた取り組みを進めているが、まだ追いついていないというのが現状だ。

 日本での大規模チェーン導入事例は現時点ではマクドナルドが最初で、つい先日は流通大手のイオンが2020年3月までにグループ各社の10万台のPOSレジを“Visaタッチ”、つまりNFC対応にすることを発表したばかりだ。

 コンビニ大手のローソンも今年2018年秋以降に各店舗での新型POS入れ替えのタイミングに合わせてNFC決済に対応していく意向で、まずは大手チェーン店を中心にした対応となる。とはいえ、業界最大手の各社がNFC対応を表明するインパクトは大きく、マクドナルドを皮切りに、この動きは加速していくものとみられる。

マクドナルド モバイル端末に登録されたクレジットカードを使ってNFC決済する

 米国のマクドナルド店舗ではもともと百貨店のメイシーズ(Macy's)などと並んで2010年代初期から決済手段にNFCを導入しており、業界での取り組みが最も早い会社として知られていた。最近では欧州方面で広く導入が進んでいたEasy Orderと呼ばれるキオスク型注文端末の米国店舗への展開や、それに伴う注文会計と受け取りレーンの分離による店舗オペレーションの改善が進みつつある。

 キオスク型端末について、東京の大森駅北口店などに設置されていた端末は残念ながら実験は終了となり、現在では撤去されている。日本マクドナルド広報は、このテスト結果や今後の計画については公表できないとコメント。ただ、店舗改善戦略の一環として分かりやすくメニューを紹介できるよう「デジタルメニューボード」の導入を加速していくという。これはデジタルサイネージの一種で、カウンターや客席に設置される動的に変化するメニュー表として機能し、既に一部店舗で設置されていると同社では説明する。

マクドナルド デジタルメニューボードで置き換えられた最新型の店舗カウンター。注文と受け取りレーンが分離している点にも注目
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