店舗を変えるモバイル決済

ロイヤルHDが“完全キャッシュレス”の店舗をオープンした理由:モバイル決済の裏側を聞く(1/2 ページ)

» 2017年12月20日 06時00分 公開
[田中聡,ITmedia]

 「現金お断り」――。ロイヤルホールディングスが11月6日に東京都馬喰町にオープンした「GATHERING TABLE PANTRY」は、クレジットカードか電子マネーでしか決済できない“完全キャッシュレス”を実現したことで注目を集めている。

 キャッシュレス化を進める店舗が増えているとはいえ、現金での支払いを排除するのは思い切った決断だ。その理由を探るべく、GATHERING TABLE PANTRYにお邪魔し、ロイヤルホールディングス企画開発部の泉詩朗氏と、経営企画部 コーポレートコミュニケーション 担当部長の吉田弘美氏に話を聞いた。

GATHERING TABLE PANTRY 「GATHERING TABLE PANTRY」

やけに静かな店内 その理由は?

 入店して「おや?」と思ったのが、店内がやけに静かだったこと。取材をした17時〜18時がコアタイムより少し前だったこともあるが、ファミレスのようなバタバタした雰囲気もない。GATHERING TABLE PANTRYでは、客と店員が大きな声を出さなくて済むよう工夫を施している。

 まず、店員に「iPhone」「Apple Watch」「リーダーライター」を配布し、テーブルにはメニューを閲覧できる「iPad」を置いている。客がiPadで注文をすると、キッチンに置かれているiPadに通知が届くので、注文のために店員を呼ぶ必要はない。配膳が完了して店員が「終了」をタップすると、売り上げが確定する。

GATHERING TABLE PANTRY 店員が持つリーダーライター、iPhone、Apple Watch
GATHERING TABLE PANTRY 各テーブルに置かれたiPadから注文をする
GATHERING TABLE PANTRY 写真を豊富に掲載し、「見て楽しめる」デザインを目指した
GATHERING TABLE PANTRY 注文すると、キッチンのiPadに通知が届く

 この「セルフオーダー」を採用したのは「お客さま同士が楽しく盛り上がっているときに邪魔をしたくない」(泉氏)ため。「オーダーをするときに店員の顔色をうかがったり、忙しそうだからと遠慮したり、そういうところで気を遣ってストレスを感じさせたくなかったのです」(同氏)

 会計もテーブルで行う。客がタブレットから支払い実行の操作をすると、店員のApple Watchに「Slack」の通知が届き、どのテーブルから呼び出されているかが分かる。利用できる決済手段は、各種クレジットカードと、楽天Edy、交通系ICカード、nanaco、QUICPay、iDの電子マネー。決済サービスは「楽天ペイ」を採用している。

GATHERING TABLE PANTRY 店員を呼び出して会計する
GATHERING TABLE PANTRY 店員にSlackで通知が届く

 支払い手段は楽天ペイのiPhoneアプリで決定し、実際の支払いはリーダーライターで行う。POSレジに付随するハンディターミナルだと「メーカーによって操作性が違うので、慣れていない人は覚えるのが大変」(泉氏)だが、iPhoneなら多くの人が慣れているので、ほぼ研修なしで覚えてもらえるという。また、楽天ペイの決済アプリには、iPadのメニューで確定した売上金額が自動で入力されているので、入力ミスによる間違いを防げるメリットもある。

GATHERING TABLE PANTRYGATHERING TABLE PANTRY メニューで確定した金額が、楽天ペイ側に自動で反映される(写真=左)クレジットカードか電子マネーか、決済手段を選ぶ。「Aさんは1000円、Bさんは500円」など、それぞれの決済額を決める形で割り勘もできる(写真=右)

 このように注文から支払いまでの流れをスムーズに行えるのが、GATHERING TABLE PANTRYの特徴だ。注文と会計以外で店員を呼び出す操作もiPadから行えるので、「すいませ〜ん」と声を上げる必要は一切ないというわけだ。

GATHERING TABLE PANTRY セルフオーダーから会計までのシステム。システムの開発はマウント・スクエアが行っている

店長の負荷を減らすのが大きな狙い

 そして本題のキャッシュレス決済である。会計がスムーズに行えるメリットがあるのはもちろんだが、キャッシュレス化については「店長業務の負荷を減らす」狙いの方が大きい。

 「店長はお店が閉まってからが大変なんです。売り上げの合計金額と現金が合っているかなどの現金管理に時間がかかります。だいたい40分ぐらいでしょうか。金額が合わなかったら1枚ずつレシートを調べないといけません」と泉氏は現金のデメリットを説明する。店長の「働き方改革」を実践するためには、現金をなくすのが最善と判断した。

 現金がなくなれば、店長はレジ締め業務から解放される。iPad(システム側で計上した金額)とiPhone(実際に決済した金額)を照らし合わせるだけでよいので、「30分以上は短縮できるし、うまくいけば10秒ぐらいで確認が終わる」(泉氏)。

 実際、店員からは「楽になった」「残業が減った」という声が挙がっているそうだ。

キャッシュレスを広げたいわけではない

 キャッシュレスが注目を集めているGATHERING TABLE PANTRYだが、吉田氏は「キャッシュレスを広げていくという考え方ではありません」と話す。大切なのは「快適に働く環境を作ること」で、その一環としてセルフオーダーやキャッシュレス決済を採用したというわけだ。「ミスを起こさない、ストレスを感じさせないことを主軸に考えています。他に従業員が働く上でいい環境があれば、チャレンジしていきたいですね」(同氏)

 もちろん、ユーザーにとってもキャッシュレス決済は利便性が高く、どんどん増えてほしいと思う人は多いだろう。例えば同じくロイヤルホールディングスが経営している「ロイヤルホスト」や「てんや」でもキャッシュレス決済が広がれば……とも思えるが、既存店にまで広げるのは簡単な話ではないようだ。

 GATHERING TABLE PANTRYは親会社であるロイヤルホールディングスが経営していえる店舗だが、他の店舗はグループ会社が経営している関係もあり、親会社の一存だけでは決められない。「ロイヤルホストやてんやなどの(規模が)大きな店舗だとシステム1つを動かすのがものすごく大変なので、さまざまな研究開発をするには、親会社がまず投資をしながらやっていく」(吉田氏)のが最適と判断した。

 GATHERING TABLE PANTRYで実験的にセルフオーダーやキャッシュレス決済を実施し、その成果によっては、既存の店舗に導入することもあるかもしれない、とのこと。「GATHERING TABLE PANTRYは、当社にとって初めてのR&D店舗。継続して研究開発を行っていきます」(吉田氏)

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