ポケモンGOのNiantic野村氏に聞く 東京でゲームを開発することに決めた理由(1/3 ページ)

» 2018年08月13日 15時00分 公開

 累計ダウンロード数は8億超――「Pokemon GO(ポケモンGO)」で世界的な大ヒットを飛ばしたメーカーといえば、米Nianticだ。その前にリリースした「Ingress(イングレス)」も含め、「位置情報やAR(拡張現実)技術の組み合わせで“歩いて遊ぶ”」をコンセプトにした、ユニークなスマートフォン向けゲームアプリで注目を集めている。

 Nianticは、Google内で「Google Maps」や「Google Earth」を開発していたメンバーを中心に設立した社内ベンチャーのNiantic Labsとしてスタートし、2015年に独立。現在は米カリフォルニア州サンフランシスコ市内に個性的なオフィスを構え、最新技術を探りながら新作ゲームの開発に取り組んでいる。

 そんなNianticは2018年7月31日、日本に開発チーム「Tokyo Studio」を設立すると発表した。チームを率いるのは、Google時代に「ポケモンチャレンジ」のエイプリルフール企画を手掛け、それがきっかけとなり現在ポケモンGOのディレクターを務めている野村達雄氏だ。

Niantic Niantic「Tokyo Studio」代表の野村達雄氏。ポケモンGOの生みの親として知られる。今後もポケモンGOのディレクターは続けていくという

 これまでNianticの日本法人であるNiantic Japanは、ポケモンGOやイングレスのユーザーサポート、イベント企画運営、企業および地方自治体とのパートナーシップといった業務を行ってきた。つまり、ゲームの開発は国内でしてこなかったわけだが、Niantic Japan内に新設したTokyo Studioはゲームの開発に専念する。

 Tokyo Studioは野村氏を中心に、2018年前半からNianticに参加した5人を加え、合計6人のメンバーでスタートした。リーダーの野村氏を含め、メンバーの5人がGoogle出身者だ。

 UX・デザインリードの片山まどか氏は、Google MapsやYouTube Mobileを担当し、ポケモンGOのゲームデザインにも最初期から関わっていた。エンジニアリングリードの淺川浩紀氏は、Google Japan時代にGoogle Mapsのサーバ開発に関わり、開発チームのマネジャーも務めている。ソフトウェアエンジニアの小酒井隆広氏と岩さき直木氏もGoogle Mapsに関わっており、いわば5人とも位置情報サービス開発のスペシャリストだ。

 あと1人のソフトウェアエンジニアは、Google出身者がほとんどのメンバーでは異色となるドワンゴ出身の川平航介氏。前職ではサーバからクライアント開発までを担当しており、特にサーバ方面ではリアルタイムで数十万、数百万というユーザーに動画配信するという難しいチャレンジを行ってきた。世界中で膨大な数のユーザーが同時アクセスするゲームを開発するNianticにとって、多大な貢献が期待される。

Niantic Niantic「Tokyo Studio」のメンバー。左から川平航介氏、小酒井隆広氏、岩さき直木氏、片山まどか氏、淺川浩紀氏、そして野村氏

 こうしたプロフェッショナルが集ってスタートしたNiantic JapanのTokyo Studioだが、ポケモンGOやイングレスの開発を進めるために立ち上げたわけではない。Nianticの強みである位置情報・ARのプラットフォームを生かして、「新しい技術で新しいゲームを開発」していくのだという。

 当面の目的は「日本を拠点とする会社ならではの製品開発」と「ともにゲーム開発をしていくメンバーの募集」となる。特に「Nianticを通じて世界に通用するゲームを作りたい方はぜひチャレンジしてほしい」と野村氏が語るように、人材募集が最初の大きなミッションだ。2018年内にもメンバーを2倍程度の規模に増やす計画を掲げている。

 Nianticがどのような製品を開発しており、今後Tokyo Studioでどのような製品をどういったメンバーと開発していきたいのか、野村氏に聞いた。

Niantic Tokyo Studioが目指すもの

―― Tokyo Studioの設立に至った背景と、現在の活動内容について教えてください。

野村氏 現段階でのメンバーは6人で、まだ試作をいろいろ繰り返している段階です。具体的な(ゲーム)タイトルや活動内容についてはこれから決めていきます。自社で何かオリジナルの作品を作るオプションもありますが、日本でスタジオを建てていることもあり、どこかの有力なIP(コンテンツ)と組むことも視野に入れています。

 先日発表した「Niantic Real World Platform」(位置情報ゲームアプリを支えるARプラットフォーム)のように自社の新しいテクノロジーがありますので、まずはその研究開発成果をどのように応用できるか、いろいろ試作していきます。

 いずれにしても、タイトルについては位置情報とAR技術を組み合わせるのが基本です。Nianticのミッションである「Adventures on foot with others」(みんなと歩いて冒険する)、人を外に連れ出す、というのがコアにあり、そこは維持します。

 なので、ゲームスタジオだからといって、コンソール向けにゲームを開発するということはありません。ベースはモバイルであり、AndroidやiOSで動作することが基本路線です。その他、付属品としてポケモンGOとともに開発した「Pokemon GO Plus」のような可能性は考えられますが、現時点では何とも言えません。

Niantic Tokyo Studio記者発表会で「Niantic Real World Platform」を紹介する野村氏。写真の「Computer Vision」技術では、深層学習で学習データを記憶させていくことにより、コンピュータ自らが一定の確率で写真内の物体を認識できる。これを用いたARの例では、椅子の上のピカチュウや、デスクの上の花瓶が違和感なく描画できているのが分かる

―― 日本のIPという話が出ましたが、これらのIPには世界市場を視野に入れているというより、日本市場向けのものが多くあります。Tokyo Studioで開発するゲームも日本をターゲットにするものが登場する可能性はあるのでしょうか。

野村氏 日本ローカル向けの可能性はありません。基本的に、日本で作られたものでもグローバル向けに提供していきます。「日本のIPを世界に」という考えで、世界展開を前提にしています。日本はアニメやゲームなど世界展開できるIPが多数あると思います。

 Niantic全体で見れば、東京スタジオは一構成員で、そこが出す新作ゲームというわけです。Tokyo Studioの出すものがNianticの他製品と違うわけではありません。米国でもゲームを作るいろいろなチームがあって、日本でもチームを立ち上げて新しいパートナーを見つけていくという流れになります。

―― それでは、日本の東京にある開発チームならではの強みは何でしょうか。

野村氏 現在のチームメンバーはみんな過去十年近く地図に関わってキャリアを積んでいるベテランで、位置情報におけるプロフェッショナルです。そこが一般的なゲームスタジオとは大きく違うところだと思います。

 Tokyo Studioはたまたま日本国籍のメンバーが集まっていますが、本社のポケモンGOを作っているチームも米国人だけではなく、いろいろな国やバックグラウンドを持った人たちが集まっています。

 募集人員も日本人だけが対象ではなく、アジア圏とか中国とか、ベトナムでもシンガポールでもどこでも、日本近辺の人材をTokyo Studioで吸収できたらと考えています。たまたま地理的な理由で日本の東京に設立したという話であって、本社と文化が全然違うものを作ろうという意図はありません。

―― ポケモンGOの開発チームの話がありましたが、新タイトルの開発にどの程度の人員を想定しているのでしょうか。

野村氏 ポケモンGOのローンチ時には、エンジニアとデザイナー合わせて10人くらいしかいない小規模なチームでした。それでもあれだけのインパクトが出せるのです。

 現在、開発の部分だけでポケモンGOのメンバーは20人以上ですが、Tokyo Studioでの開発でもいたずらにチームサイズを大きくするつもりはありません。プロジェクトによって最適なチームの規模は変わりますので、新タイトルをどのくらいのボリュームで作るのかで人員の数も決まってきます。

 現在6人のチームを、2018年内には2倍くらいの規模にしたいと考えていますが、これは今後作るゲームの規模にもよります。

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