コラム
» 2018年11月17日 06時00分 公開

特集・ビジネスを変える5G:「5G」は「LTE」と何が違う? 歴史と共に振り返る (1/2)

最近、「5G」という言葉をよく耳にする。今までの携帯電話と何が違うのか。歴史を振り返りつつ解説する。【追記】

[井上翔,ITmedia]

 最近、さまざまな場面で「5G(ファイブジー)」という言葉を聞く。しかし、「何やらすごいらしい」ということは分かっても、それが一体何なのか理解しきれていない人もいるだろう。

 この記事では、過去の移動体通信(携帯電話)システムを振り返りつつ、5Gとは何なのかを改めて紹介していく。

(記事中の通信速度は特記のない限り理論値)

5Gロゴ 移動体通信の業界団体「3rd Generation Partnership Project(3GPP)」が定めた「5G」ロゴ

携帯電話(移動体通信)の世代を振り返る

 5Gは「Fifth Generation」、つまり5世代目の移動体通信システムという意味だ。

 「5世代目」となると、これまでに4世代の移動体通信システムが存在したということ。これまでのシステムを簡単に振り返ってみよう。

1G(第1世代):アナログ方式で電話を“ワイヤレス化”

 移動体通信の第1世代は、区画(セル)ごとに無線基地局を設置し、セルをまたいで利用できる「セルラー方式」のアナログ無線電話で、1970年代後半から1980年代前半にかけて商用サービスとして実用化された。

 商用サービス第1号は、1979年に日本電信電話公社(※1)が同社独自の規格で提供を開始した「自動車電話」だった。その後、米国では「AMPS」、欧州では「NMT」「TACS(※2)」という規格に基づく移動電話の商用サービスが始まった。1980年代半ばには、手に持てる“携帯電話”が登場。本当の意味で持ち運べる電話への進化が始まった。

 1980年代後半以降、日本ではNTT(※1)は「NTT大容量方式(HiCAP)」、日本移動体通信(IDO:現在のKDDI)はHiCAPとTACS、DDIセルラーグループ(現在のKDDI・沖縄セルラー電話)はTACSでアナログ携帯電話サービスを提供するようになった。

※1 同公社は1985年に「日本電信電話株式会社(NTT)」として民営化。NTTは1992年、移動体通信事業をエヌ・ティ・ティ移動通信網(現在のNTTドコモ)に譲渡した
※2 AMPSの一部仕様を変更した規格

1Gの携帯電話 NTTドコモの第1世代移動体通信システム(HiCAP)を利用した自動車電話や携帯電話(PLAY 5G 明日をあそべで撮影)

2G(第2世代):アナログからデジタルへ パケット通信も

 移動体通信の第2世代は、無線通信をアナログからデジタルへ移行したことが特徴で、1990年代前半から普及が始まった。

 日本や韓国など、ごく一部を除く国・地域では「GSM」と呼ばれる規格が普及した。GSM規格に基づく商用サービスは1992年にドイツで始まり、それ以降パケット通信(※3)用の規格拡張を行いつつ、今でも現役だ。ただし一部の国・地域においてサービスを終了するキャリアも出始めている。

 一方、日本では国内開発規格である「PDC」が広く採用された。1993年にNTTドコモグループがサービスを開始し、デジタルホングループ、デジタルツーカーグループ(共に現在のソフトバンク)やIDO、DDIセルラーグループやツーカーグループ(現在のKDDI)も順次PDC規格を用いた通信サービスを開始。

 米国では、PDC規格と技術的に近い2G規格「D-AMPS(デジタルAMPS)」が1993年から商用化された一方、1995年に米Qualcommが提唱する新規格「cdmaOne」も登場した。cdmaOneは通話時の音質が良好で、パケット通信もより高速だった。ハンドオーバー時に瞬断しにくいことも大きな特徴だった。日本でも、DDIセルラーグループとIDOがcdmaOne規格を使ったサービスを1998年から順次開始している。

※3 デジタルデータを小分けして伝送する通信

2Gケータイの皆さん NTTドコモの2G携帯電話(デジタル・ムーバ)たち。パケット通信を利用するコミュニケーションデバイスや「iモード」が登場したのもこの世代(PLAY 5G 明日をあそべで撮影)

3G(第3世代):より高速なデータ通信を実現

 移動体通信の第3世代は、旺盛になるデータ通信への需要に応えるべく、パケット通信のより一層の高速化が図られた。2Gまでは国・地域ごとに乱立する傾向にあった移動体通信規格を世界で統一しようという動きもあったものの、いくつかの規格が「標準」とされ、その中でも「W-CDMA(ワイドバンドCDMA)」と「CDMA2000」の2規格が広く普及した。

 W-CDMAはNTTドコモと欧州の通信機器メーカーが主導して開発した規格で、「UMTS」と呼ばれることもある。従来よりも広い電波帯域を使うことで通信速度を向上。音声通話とパケット通信を同時に行う「マルチアクセス」にも対応した。この規格は「HSDPA」「HSUPA」(両者をまとめて「HSPA」と呼ぶこともある)、HSPAをさらに高度化した「HSPA+」といったデータ通信面での拡張規格を内包しつつ、現在に至っている。

 一方、CDMA2000はcdmaOne規格をベースに広帯域化した規格。標準の「CDMA2000 1x」の通信速度は下り最大144kbps、上り最大64kbpsと従来より高速化。データ通信をより高速化した「CDMA2000 1x EV-DO」という拡張規格もある。

FOMA端末たち NTTドコモのFOMA(W-CDMA)携帯電話たち。2000年代後半にはケータイ(フィーチャーフォン)からスマートフォンへのシフトが始まった(PLAY 5G 明日をあそべで撮影)

4G(第4世代):データ通信に特化して高度化

 次は第4世代……といきたいところだが、3G規格の次にくる通信規格の策定にはある程度の時間が必要となることが予想された。一方で、より旺盛になるデータ通信への需要と、増加し続ける回線数に対応するには3Gの規格拡張では限界が見え始めていた。

 そこで登場したのが「LTE(Long Term Evolution)」という通信規格。ドコモが2004年に提唱した「Super 3G」というコンセプトを下敷きとして、3Gから4Gへの橋渡しを中長期的に行うべく生まれた。下り通信と上り通信で別帯域を用いる「FD-LTE(FDD-LTE)」と、下り通信と上り通信で同一帯域を用いる「TD-LTE(TDD-LTE)」の2方式があり、現在では全世界で両方式が用いられている。

 LTEが従来の移動体通信規格と大きく違うのは、パケット(データ)通信に特化し、「高速化」「低遅延(応答速度向上)」「多接続(同時に通信できる端末数の増加)」の3点を重視して開発されたことにある。それゆえに当初は音声通話は従来規格にフォールバック(※4)することで対応していたが、後に音声をデータとして送る「VoLTE(Voice Over LTE)」という規格が作られ、音声通話にも対応した。

 2011年4月、LTEに複数の周波数帯を使って通信する「キャリアアグリゲーション(CA)」を始めとする新技術を盛り込み、名実ともに“第4世代”を担う「LTE-Advanced」という規格が登場。2013年6月に韓国で初めて商用サービスが開始された。

 “長期間の革新”という名の通り、LTEとLTE-Advancedは長期間にわたって規格のアップデートがなされ、現在では国・地域によっては下り1Gbps超、上り100Mbps超の通信を実現している。

※4 通信方式を切り替えること。切り替え先の規格次第では、通話中にモバイルデータ通信ができない問題も発生する

LTE NTTドコモのLTE端末たち。より高速な通信で、リッチなサービスが普及し始めた(PLAY 5G 明日をあそべで撮影)
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