ハイエンド端末が軒並み有機ELを採用する中、Rシリーズは液晶を採用している。ただ、今回は第5世代のIGZO液晶、10億色への対応、120HzのハイスピードIGZOからなる「Pro IGZO」を新規採用した。テレビCMなど、マスに向けたプロモーションではPro IGZOディスプレイが強くアピールされている。
パーソナル通信事業部 システム開発部 技師の関文隆氏は、今回、明るさがAQUOS R2と比較して2倍にアップしたことで、さまざまなメリットが生まれると話す。
「HDRの映像は値が絶対輝度で記録されているので、暗いディスプレイだと表現できない部分が出てきます。明るさが2倍になったことで、これまで削られてしまっていた部分も表現できるようになりました」(関氏)
また、屋外で強い日差しの下でも見やすい「アウトドアビュー」も可能になった。小林氏は「有機ELも明るくなったと言われますが、継続して輝度を出すのは有機ELでも難しい。これだけの輝度を連続で出そうとするとIGZOは圧倒的に有利。例えば、(屋外でプレイする代表的なゲームである)『Pokemon GO』の画面の見え方が明らかに違います」と力説する。
屋外でも見やすいディスプレイにするには2つのポイントがあるという。1つは輝度だが、それだけではダメだそうだ。
「光が画面上で反射して、拡散した光が目に入り、画面の暗い階調部分が見えなくなります。輝度を上げることである程度はカバーできますが、見えないところは見えない。その部分は画像処理でサポートすると効果的です」(関氏)
AQUOS R3は輝度アップと画像処理の両方をサポートしたことでアウトドアビューを実現したわけだが、実はこの機能、数年前に“リストラ”されていたものだという。「当時、画像処理はやっていたのですが、輝度の部分が十分ではなく方法に悩んでいました。そこに機能の整理が行われ、リストラ枠に入ってしまったのです。今回、明るいディスプレイになったので復活させました」(関氏)
また、リフレッシュレートが120HzのハイスピードIGZOも実現している。縦方向で解像度が高くなるとリフレッシュレートの高速化は非常に難しく、AQUOS R2は100Hzにダウンしていた。今回はPro IGZOになったこと、プロセッサにSnapdragon 855を採用したことで120Hzが可能になった。R3のディスプレイ解像度で120Hzが出るようになったことは画期的なことだという。「表示の滑らかさ、残像の少なさをぜひ体感してほしい」と関氏はプッシュする。
本体デザインは、持ち上げるときの引っ掛かりやホールド感のよさを支える「Emotional edge」をAQUOS Rから継承。その上で、前面のガラスは3Dガラスに変更した。
「R2では、金属のフレームとガラスの間に樹脂のフレームを設けていました。それが今回、3Dガラスを使えるようになったことで、外観にきれいなつながり感を表現できました」(パーソナル通信事業部 商品企画部 主任の伏見聡氏)
何げなく見ただけでは分からないが、実はRシリーズの構造は変化してきている。巧妙な仕上げなので分かりにくいが、R2では樹脂が使われていて、「AQUOS R2 compact」では金属に直接2.5Dガラスが貼り付けられている。ただ、この方法だと少し厚く見えてしまうという。3Dガラスを使うことで「金属を抑えながらガラスが迎えにくる構造になって」(小林氏)、厚みが減っているという。
指紋センサーは引き続きディスプレイ下部に配置。小林氏は「画面下にある方が絶対使いやすい」という立場を取っている。「AQUOS zero」は指紋センサーを背面に配置したが、机に置いたまま使えないと言われたこともあるそうだ。また、画面内指紋センサーについては、検討しているとしながらも、液晶では構造的に難しい部分があるという。
「液晶だと、バックライトとバックライトホルダーがいります。導光板の中に光が反射するよう裏を押さえて、できるだけ光を前に出すようにする必要があります。有機ELにはそういったものがない分、指紋センサーを置けます。インディスプレイといわれていますが、ディスプレイの中にセンサーが入っているわけではなくて、ディスプレイの向こうにあって、表示素子の隙間から指紋センサーが見えているような置き方なんです。超音波を使っているタイプは、音波を吸収するようなフィルムを貼れないので制限があります」(小林氏)
ハードウェア面では、ワイヤレス充電(Qi)に対応したことも注目ポイントだ。
「ワイヤレス充電機能を付けると、どうしても電池領域を犠牲にすることになります。これまではワイヤレス充電に対応するよりバッテリー容量が大きい方がいいというお客さまが圧倒的に多かったのです」(小林氏)
しかもバッテリー容量が大きくなるとQiでの充電時間は長くなる。ワイヤレス充電と大容量バッテリーは相反するニーズだった。しかし、バッテリー持ちがかなりよくなったこと、Qi EPP規格が追加されてワイヤレス充電も高速になったこともあり「AQUOS PHONE ZETA SH-06E」以来の復活となった。しかも11W充電対応だ。
目立たないところでは、文字入力も改善されている。「S-Shoin3.0」にバージョンアップして操作スピードが向上。助詞始まりの言葉の変換が賢くなったという。例えば「昨日の発表はよかったです」という文章を入力する場合、「昨日の発表」で一度変換してしまうと、次は「はよかったです」を変換することになる。こうした助詞で始まる文章の変換精度が上がった。
また「晴れたわー」というような音引きを入れた言葉の場合、たいていはカタカタに変換されるが、平仮名で変換できるようになっている。さらに、例えば「東京」と入力したとき、従来は入力時間短縮のため「ディズニーランド」や「モノレール」といった長い単語を候補として上位に表示していたが、できるだけ短い単語を優先して表示し、一覧性を向上させた。
ドコモの夏モデルでは、AQUOS R3の他に、カメラレスの「SH-03L」とモバイルWi-Fiルーターの「Wi-Fi STATION SH-05L」も提供している。特にモバイルWi-Fiルーターはシャープ初ということで話題になった。
「シャープは通信機器メーカーですから、提案はずっと可能な状態です。5Gに向けて通信面の信頼性を高めていきたいという思いもあります」(小林氏)
開発陣の視線は5Gに向いている。5Gの主要サービスとなるであろう動画機能が充実したAQUOS R3で、5Gの楽しさを先取りできそうだ。
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