スマホ特価販売の「闇」 転売対策に右往左往する販売店の声元ベテラン店員が教える「そこんとこ」(2/2 ページ)

» 2022年05月25日 07時00分 公開
[迎悟ITmedia]
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転売前提の「お客さま」への対策に対する販売店の対策

 販売スタッフのモヤモヤの原因の1つでもある、転売前提の「お客さま」の来店。店舗、あるいはキャリアはもちろん、販売店も転売に対しては一定の対策を講じています。

 特価販売の端末には「お1人さま1台限り」という制限を設けています。もし5台同時に契約したいといわれた場合でも、ご来店のお客さま1人につき限り販売台数を1台に限ることで、転売目的でのまとめ購入を防げます。

 転売目的の「お客さま」は同じ端末を何台も買おうとする傾向にありますから、意外と効果はあります。

 契約手続きの完了時に、端末の動作確認を必ず行うようにしています。パッケージを開封して、電源を入れて、架電の確認までが一連の動きです。

 端末をすぐに売却する前提だからか、「SIMカードは別の端末で使うから端末の箱は開けないでくれ」と言われることもよくあります。買い取り業者によっては、開封すると査定額が下がることもありますからね……。

開封 転売対策として、パッケージの開封や開通確認を実施することも珍しくありません

転売抑止をするには「システム」が必要

 まとめ買いや買い取り時の査定額が下がるような「対策」を講じている販売店ですが、「買う」側も無策ではありません。上記の対策では防げない購入もあるといいます。

 「『1人1台』なら『2人2台』だ」ということで、家族を連れて「買い」に来る「お客さま」もいます。で買いに来ればいいと、家族を連れてくる人も多いです。家族連れであれば、普通の「利用目的の契約」との見分けは難しいですからね。

 家族まで使うのか……と正直驚いてしまうのですが、そこまでやってでも転売したいという人もいるのです。

 一部で「買い回り」と呼ばれているようですが、うちだけじゃなく他店でも同じ端末を買っているという人がいるんですよね。手続きを進めている際に「他店はもっと早くやってくれた」とか「今日はここ(他店)の方が安い」とか、よそでも買っている話を堂々とする人も少なくないです。

 本当であれば、その話を聞いた時点で販売を断ればいいのかもしれません。しかし、システム上「契約不可」とならない限り、そうも行きません。顧客管理システムで「買い回り」を検知できるようになっていればいいのですが……。

 「買い回り」という呼び方もある通り、最近は複数のお店を巡って特価品を購入するような人もいて、SNSでその様子を“披露”する人もいます。1店舗だけでは防ぎようがありませんし、システムを使って未然にはじくことも困難です。

 以前、この連載でも取り上げていましたけど、キャリアの顧客管理システムで確認できる契約情報には限りがあります。私たちのような一般の販売店では、買い回りを検知できるような情報は確認できません。

 一般販売店の場合、契約を承認するかどうかの判定を上位の代理店やキャリアが運営する「審査センター」が行います。その判定過程で「過去90日以内に機種変更をしている」「最近新規契約を行った」といった情報は提供されますが、1人(1名義)1台限り適用できる施策を適用済みかどうかという情報は提供されません

 システムベースで買い回りを抑止する仕組みがないので、現状では店頭での「約束」「お願い」ベースでしか転売を防ぐ術がありません。台数を限定したり、購入後の開封を実施したりと、店としてできる対策はしているのですが、さすがに他店で買えてしまう“穴”までは防げません

 1日の来店が少ない店なら「さっきも来てましたよね」「先週も来てましたよね」とお客さまの顔は覚えられるかもしれません。しかし大規模な店は、来店客が多いのはもちろんですがスタッフも多く配備されています。「前に買ったお客さまだ」と認識せずに再び案内する可能性はゼロではありません

 繰り返しですが、現在はシステムで不適正な購入者を検知することに限界があります。システムでアラートを出すなど、仕組みを整備しないと「健全な販売」の実現は難しいと思います

 販売店としては健全な契約/販売を実現したいと苦心しているものの、システム面で限界があるという悩みを抱えている様子が伺えます。

グループ グループ企業でデータベースを共有して「グループで1人1台」としている販売店もあるが、グループ外の販売店での購入を抑止することは難しい

規制は必要 でも厳しすぎると自らのクビを締めるジレンマ

 法規制や競争の進展によって、携帯電話料金はここ数年で安くなりました。一方で、ハイエンドモデルを中心に端末価格が高騰しています。端末が高いとなると「買い控え」が起こるのは当然です。

 ここ数カ月の店舗の様子を見れば、端末の割引販売が店舗にとっての「カンフル剤」として有効なのは明らかです。しかし、そのことに目を付けて転売目的でやって来る「お客さま」も再び増えてしまったことも事実です。「利用するユーザーに対して適切な還元を行う」という観点に立つと、現状は決して健全とはいえません。

 この現状について、あるスタッフの言葉が印象に残ります。

 現在の法令が携帯電話販売店の苦境を深めたということについて、総務省はどう考えているんでしょうね……。自分たちの政策が各方面にどのような影響を与えたのか、負の側面も含めてしっかり検証してほしいと思います。

 総務省の有識者会議の様子を見ていると、法律やガイドラインで転売を規制したいという意図を感じます。しかし、先の改正法令の検証をすることなく、法令改正によって販売に関する規制をを強化してしまっては規制にがんじがらめになった携帯電話販売店が余計に窮地に陥る可能性もあります

 「新しい稼ぎ口を見つければいい」とか「そんな商売はやめてしまえばいい」という人もいますが、それでもやっていける販売店(代理店)は一握りだと思います。何より、オンラインに順応しきれない人の受け皿としての販売店を無くすのはかなり難しいと思います。ITmedia Mobileの読者の皆さんは「若い人なら何とかなる」と思っているかもしれませんが、インターネットをうまく使いこなせない若い人も思った以上にいるんですよ。特に地方部ではそれが顕著です。

 総務省は、携帯電話を持っている人を支える存在としての販売店をなくしてもいいと考えているんでしょうかね……? 法令改正で右往左往させられるのは、もうウンザリです。

 この声を、総務省や有識者はどのように考えるのでしょうか……?

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