メーカーによって推奨数値は多少上下するものの、リチウムイオン電池は先ほど述べたようなプロセスで充電される。充電される容量はmAhという単位からもわかるように、「充電電流×充電時間」で決まるので、充電電流が下がる定電圧充電は、時間対充電効果が悪い。実際にCB-5Lへ、その1でも利用した三和電気計器の「PC20」を取り付け、充電中の電圧を計測すると、一回点滅時点がほぼ定電流充電に相当することがわかった(グラフ1)。
つまり、急いで充電するためにはこの時点で充電を終了し、余った時間を別の電池の充電に費やしたほうが効果的のように見える。本当にそうだろうか? 前回使った放電環境をそのまま使い、中途充電時の容量チェックを行ってみた。
充電時間は数回の予備テストを行った結果、BP-511ではおおむね43分、BP-511Aでは大体54分の充電時間(ただしバラつきがある)で1回点滅から2回点滅に移行していたので、この時間でタイマーをセットして定時間充電を行った。充電開始前にあらかじめテスト環境で放電を終了させた状態で行っている。
なお、連続点灯までの時間はBP-511で75分前後、BP-511Aで87分前後であるため、完全充電を行うためには2時間から2時間半かかる。要するに半分以下の充電時間でどのぐらい使えるのか? という計測になる。
計測は前回と同様、三和電気計器のPC20で電圧をモニターしつつ、秋月電子のニッカド電池放電キット「K-72」で約500mAの定電流放電を行っている。結果は以下のようになった。カッコ内は前回のフル充電の値を100としたときの換算値だ(グラフ2、グラフ3)。
表■中途充電での放電終了までの時間(単位:分)
t1 | t2 | |
---|---|---|
BP-511 | 107(84) | 79(76) |
BP-511A | 137(88) | 104(79) |
つまり3/4以上の充電が、1/3以下の充電時間で行われているということになる。電池1本ならば多少容量不足の不安があるとしても、予備電池を含む状況ならば2本のバッテリーの充電を1本のフル充電以下の時間で行えることになるのだ。そして、使用時間は1.5倍以上に伸びる。急いでいる場合の実用的充電方法と考えられるだろう。
ところで、この「中途充電法」は、充電時間を短くする以外にも「長期保存条件に適する」というメリットがある。ノートPCで使われているリチウムイオン電池について、東芝と日本アイ・ビー・エムのWebサイトに解説が書かれている。
リチウムイオン電池にとって過放電、過充電は問題になるとすでに書いたが、保存時のフルチャージもあまりよろしくない。この2つのサポートページに共通するのは、長期保存時は満充電ではない程度の充電量にして、涼しい場所で保管する、ということだ。
日本アイ・ビー・エムのページにはその理由も記載されている。現在のリチウムイオン電池は負極に炭素を使用しているが、フルチャージの場合はややバランスが悪く、この状態を持続していると負極の劣化に繋がるという(そして、保存に高温環境はよくない)。つまり迅速に利用したい場合だけでなく、保管時でも「中途半端な充電」が効果的ということになる。
ということで現在実践中なのだが、現在次のような使い方をしている。
この方法が真に電池の寿命を延ばすかどうかは、計測上の裏付けがないので分からないのだが、Webサイトなどの説明から「なんとなくよさそうかな?」と想像するしかない。現実に伸びるかどうかはかなり長期間の真面目なテストを行わないといけないのだが、そのあたりは電池メーカーに是非ともお願いしたい。あと、この方法が真に有用ならば「中途充電スイッチ」をリチウムイオン充電器に付けてほしいものだ。
ちなみに筆者が外出先で撮影練習をしていたところ、3本の「中途充電」電池がバッテリー警告を出したものの、約600枚の撮影が可能だった(警告表示を確認した時点で電池交換)。手持ちの電池を使い切ったあと、警告後も恐る恐る撮影してみたが、ストロボをすべてオンにしても、50枚ほど問題もなく撮れた。
次回はいよいよ、サードパーティ製互換電池をテストする予定だ。「安価で使える電池」として、果たして魅力ある製品なのか、じっくりと検証していきたい。
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