ワープロソフトで文書作成するときだけでなく、メールの作成や表計算ソフトでの作業、あるいはWebを通じて資料を取り寄せるための住所入力でさえ、日本語の入力は欠かせない。
日本語を入力する際に必須なのが、日本語入力システムだ。日本語入力システムは、Windows XPに「IME 2002」が標準で付属している。また、「Office 2003」には「IME 2003」が付属している。したがって、多くの人はこのいずれかを使って日本語入力をしていると思う。
私は長年ATOKという日本語入力システムを使っている。なぜ、無料で組み込まれている日本語入力システムがあるのに、わざわざお金を出して別のものを使う必要があるのか? 疑問に思う読者も多いだろう。そこで、読者と一緒に、この疑問を解決しよう。
私が、ATOKを使う理由は2つある。ひとつは、変換効率の差だ。普段ATOKを使っていて、たまに標準のIMEを使わなくてはならないことがあると、思い通りに変換されずにイライラする。
しかしこれは、辞書学習の差だと思う読者もいるだろう。よく使う単語は上位の候補として表示され、また単語登録もしてあるのだから、変換結果に差が出るのは当然だ。そこで、これらを除いて、完全に初期状態で変換を比較してみて、どのくらい差があるかを調査してみよう。
もうひとつは操作手順だ。慣れ親しんだ操作手順で処理ができるということが大きい。しかし、それ以上に、歴史があり毎年改良を加えているATOKに一日の長があると思えるのだ。私が“ここがポイント”と判断する操作の手順を詳細に比較してみよう。果たしてどのくらい違うのか。そして、それは、価値のある違いと言えるかどうか。
最終的にはそれぞれの読者が判断すればよいが、その材料を提供しよう。
では始めよう。まず、変換効率の調査だ。
辞書学習を排除するために、新規インストール状態のATOK 2006とWindows XPに付属の標準IMEを用意した。そして、いくつかのサンプル文書を用意した。内容はあまり専門的にならない範囲でバラエティを持たせたつもりだ。変換キーを押すタイミングも同じにするために、必ずマル(句点)まで読みを入力してから変換させることにする。なおOffice 2003に付属のIMEについても調査したが、用意したサンプル文書の範囲ではWindowsに付属の標準IMEとまったく同じ変換結果だったことを付け加えておく。
で、その変換結果だが、あまり差のでないものは除外して、典型的なものを2つあげておこう。
スポーツ
ジャンル | 原文と出典 | ATOK 2006 | 標準IME |
スポーツ | 荒川静香(プリンスホテル)の胸で輝きを放つ金メダル。2004年に世界王者に輝いた後、一度は引退を考えた。新採点法に悩まされた。だが、荒川はスケートを「楽しむ」と心に誓って苦難を乗り越えた。荒川の言葉を振り返る。 | 荒川静香(プリンスホテル)の胸で輝きを放つ金メダル。2004年に世界王者に輝いた後、一度は引退を考えた。新採点法に悩まされた。だが、荒川はスケートを「楽しむ」と心に誓って苦難を乗り越えた。荒川の言葉を振り返る。 | 荒川静香(プリンスホテル)の胸で輝きを放つ金メダル。2004年に世界王者に輝いた後、一度は引退を考えた。審査移転法に悩まされた。だが、荒川はスケートを「楽しむ」と心に誓って苦難を乗り越えた。荒川の言葉を振り返る。(-1) |
この【スポーツ】のサンプルは、素直な文章だ。しかし、「しん」+「さいてん」と判断するか「しんさ」+「いてん」と判断するかの違いが出ている。筆者はこのあたりに“ATOKの安心感”を感じるのだ。
天声人語
ジャンル | 原文と出典 | ATOK 2006 | 標準IME |
社会 | 花粉症用の医薬品を扱う企業数社がいま、くしゃみや鼻水の憂さを晴らす川柳を募集している。「花粉症笑ったあいつも今年から」。記録的な飛散量だった昨春、協和発酵(東京)に寄せられた句だ。前年まで患者をからかっていた知人がふいに仲間入り。古参患者の視線は冷たい。 | 花粉商用の医薬品を扱う企業数社が今、くしゃみや鼻水の憂さを晴らす川柳を募集している。「花粉症笑ったあいつも今年から」。記録的な飛散量だった昨春、協和発酵(東京)に寄せられた管。前年まで患者をからかっていた知人が不意に仲間入り。古参患者の視線は冷たい。(-2) | 花粉症用の医薬品を扱う企業数者が今、くしゃみや鼻水の憂さを晴らす川柳を募集している。「花粉症笑ったあいつも今年から」。記録的な悲惨量だった昨春、協和発酵(東京)に寄せられた管。前年まで患者をからかっていた知人が不意に仲間入り。古参患者の視線は冷たい。(-3) |
この【朝日新聞の天声人語】の変換でも差が出ている。「飛散量」も、ATOKならではの適切な変換が得られていると思う。
以上の結果を見ると、確実に変換効率の差があることが分かるだろう。もちろんこれだけで全体を云々することはできないが、ここに挙げなかったサンプルでも、ほとんどATOKの方が良い変換結果が得られた。
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提供:株式会社 ジャストシステム
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2006年4月19日