ゲルにITはあるか?──モンゴルで見たIT事情山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/3 ページ)

» 2006年06月26日 00時00分 公開
[山谷剛史,ITmedia]

モンゴルの電脳街を捜す

 一般庶民がPCを買おうと思い立ったとして、何はさておき、モンゴル人の給料はどれくらいなのかという話になる。聞くところによると公務員の給与は1万円程度らしい。とはいえ、モンゴルでは「平均給与」という一言でくくれないほどに所得の差は激しい。所得の多い順に上からざっくり並べてみると、大企業の社長に始まって政治家、台湾や韓国などの出稼ぎから戻ってきた人々、小店舗の店主や小企業の社長、公務員、店員もしくは社員、家畜で生計を立てている人々、家畜を失って都市生活を余儀なくされた人々といったところか。モンゴルの年間平均気温は摂氏0度だというが、日変化をみると最高気温45度から最低気温−50度という激しさで、それを平均すると0度なる。モンゴル人の平均給与もそれに通じるものがあるという。

 モンゴルでは「所得水準の松竹梅」でいうところの「竹の上」の人々がPCを購入できるだけの財力を持つ。首都のウランバートルでもPCを所有するのは人口比でいえば少数にすぎない。とはいえ、少ないながらもPCユーザーがいるわけで、ウランバートルには電脳街、というよりはPCショップが集まった「電脳ビル」がいくつかある。電脳ビルに入居していないショップも多数あって、両者を合わせると結構な数がウランバートルにある。モンゴルに行く前に、ウランバートル滞在経験のある日本人や日本にいるモンゴル人に電脳街の場所を質問したが、そのときに得られた回答はいまから数年前の情報であった。今回の取材で現地で確認できたPCショップの数はそれよりも確実に多いと思われた。数年前に比べてこの手のショップが数を増やしているのだろう。

 最大の電脳ビル「ComputerLand」は1階から4階までPCショップが詰まっていて、どの階も細い通路の両脇にPC関連の店が並んでいる。そこではショップブランドのPCからプリンタ、PCパーツ、PCソフト、キーボードやマウスなどの周辺機器、そして日本から流れてきた中古ノートPCが主に売られていた。日本からの中古ノートPC以外、とくに周辺機器において、中国から輸入されたものが多いのがモンゴルという国の立場を象徴しているといえなくもない。客層は若い男性ばかりで、込み具合は「平日昼間の秋葉原電気街」といったところだ。

写真左はウランバートルで最も大きな電脳ビル「ComputerLand」だ。この都市のPCショップはビルにまとまって入居しているケースが多い

ComputerLandの内部。日本の電脳街を思えば人出が多いとはいえない

 参考までに、あるショップブランドPCの価格を紹介しよう。CPUにPentium D 805(動作クロックは2.66GHz)、メモリは DDR2が512Mバイト、HDD容量が40Gバイト(Serial ATA対応)、光学ドライブはCD-RW、56KbpsのFAXモデム、17インチCRTディスプレイ、スピーカー、キーボード、マウスという構成で約7万2000円。17インチ液晶ディスプレイがセットならば日本のショップブランドと同じような構成で同価格になる。そうだったなら「なかなかやるなっ」といえるが、ここはモンゴルなのでCRTでも仕方のないところ。これでもモンゴルは「PCを1家に1台」と先の首相がうちあげたおかげで、PC関連製品は“ゼロ関税”輸入できる。そのため、輸入品の塊であるPCといえどもさほど高い価格にはならないのだ。

 電脳街で見かけた最安値のショップブランドPCがCeleron/800MHzの旧世代デスクトップPCで約1万8000円(モンゴルの貨幣単位でいうところの18万トゥグルグ)。日本の中古PCはPentium III世代がほとんどで、約3万円から見つかった。

 モンゴルの庶民的な食べ物は、山羊のあったかいミルクが入ったお椀にモンゴル餃子を入れたもので、これが50円する。これを基準にすると、デスクトップPCは食事360杯分でノートPCは食事600杯分の価格となる。日本での定食が1つ800円と考えると、モンゴル人感覚でデスクトップPCは(800×360=)28万8000円、ノートPCは(800×600=)48万0000円となる。モンゴル人にとって、PCは買えないものではないが買うには勇気がいる高額商品である。

 Celeron/800MHzのショップブランドPCが未だに売られていると書いたが、ウランバートルから遠く離れた町に滞在する日本人によると、そこで使われているPCはPentiumIII世代のハードウェアとWindows 98の組み合わせを使うのが、官民問わず一般的なのだとか。

ヤギミルクに入れたモンゴル餃子は1つ50円。写真右の日本から入ってくるPentium III世代中古PCはこの食事が360杯分ということになる

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