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» 2007年01月12日 14時00分 UPDATE

2007 International CES:米国のTV局は“YouTube”と手を結ぶ──CBS基調講演

日本のTV局は話し合いすら拒否するが、米国のTV局は共に手を組んで番組作りに取り組んでいる。CBSの考える“YouTubeとの付き合いかた”が基調講演で紹介された。

[富永ジュン,ITmedia]
kn_ceb761.jpg CBS社長兼CEOのレズリー・ムーンバス氏

 米国3大ネットワークの1つに数えられるCBSは1月9日(米国時間)に行われた基調講演で、ビデオチャット、SNS、動画共有といったインターネット上の「新しいメディア」をTVやラジオといった「旧来のメディア」に積極的に取り込んで、より良質なコンテンツを視聴者に届ける取り組みの数々を紹介した。

「本日この場で発表されることは、皆さんが『伝統的な巨大メディア企業』に予想しているものとは少し違ったものになるだろう」と前置きして、CBS社長兼CEOのレズリー・ムーンバス氏は基調講演を開始した。その言葉通り、ドラマやトークショーなどの番組をインターネット上で配信するだけに留まらず、いかに最新のテクノロジーを取り入れてコンテンツのインタラクティブ性を高め、ITが支配する新時代においてもメディアの第一人者であり続けようとするCBSの前向きな姿勢がうかがえる発表となった。

 5割を越える視聴者がTV番組をインターネット上で見ている現在、CBSのような巨大メディア企業もその影響力を無視できなくなってきた。これまではまったく別の世界と考えられていたTVやラジオなどの「旧来のメディア」とインターネット上の「新しいメディア」の間の線引きは今後完全に取り払われて1つの「メディア」に融合し、その中で生き残っていくためには視聴者の声に熱心に耳を傾ける必要があるとした。

 全米No.1の視聴率を誇る同社の大ヒットドラマシリーズ「CSI:科学捜査班」では、公式Webサイト上で各エピソードのあらすじやニュースといった情報を公開しているほか、オンライン、携帯電話、iPodなどさまざまなプラットフォーム上での番組配信を展開している。また、携帯電話向けにドラマの成り行きをリアルタイムで予想する賞金付きクイズを実施したり、登場人物の人間関係に視聴者の声を反映させるなど視聴者に向き合った番組作りを行っている。

 スポーツファン向けには、関連会社CSTV Networkが「Fans Only」と呼ばれるオンラインコミュニティを提供している。Fans Onlyは、専用のプレーヤー上で複数の視聴者がビデオチャットを通じてスポーツ中継番組の動画を同時に鑑賞できるのに加え、気になるシーンのリプレイ、カメラアングルの変更、3Dモデリングによる選手の動きの分析といった機能が利用できる。

 従来よりハガキや電話などで視聴者が番組に参加することが多く、インタラクティブ性が高いとされているラジオにおいても、視聴者との「完全なる」インタラクティブ性を実現する斬新な試みが行われている。その試みとはトーク番組「The Opie and Anthony Show」内のいちコーナーで、ビデオチャットサービス「paltalk.com」内に番組専用のチャットルームを開設し、視聴者からリアルタイムで送られてくるライブカム映像や視聴者同士のテキストチャットを話題に番組ホストであるオーピィとアンソニーがトークを繰り広げるというものだ。視聴者はトーク内容に対する反応をテキストチャットで自由に話し合うことができ、そのテキストチャットを収録スタジオ内で見ているオーピィとアンソニーのさらにそれを次のトーク内容につなげていくという趣向となっている。

kn_ceb833.jpg CSTV Networkが提供する「Fans Only」では複数人がビデオチャットをしながら試合を観戦できる。
kn_ceb845.jpg 「The Opie & Anthony Show」では、視聴者からのウェブカム映像やチャットをその場でトーク内容に反映させている。

 また、さまざまなオンラインサービスにCBSは投資している。その例として、同社のレズビアンを題材にしたドラマ「The L word」の内容とタイアップしているSNS「OurChart.com」や100万アカウントを突破した巨大オンライン3Dアバター生活シミュレータ「Second Life」などが紹介された。また、自宅のTVや動画をインターネットを通じた端末ならば外出先でも視聴できる家電「Slingbox」を開発して販売するSling Mediaにも投資を行っている。同社は、指定した動画をメールでほかのユーザーと共有できるサービス「ClipNSling」を提供している。

 これらの視聴者とのインタラクティブ性を高める取り組みの中でもとくに注目されるのが、2006年10月にYouTube上で開始した「CBS Brand Channel」だ。これはCBS、CSTV Network、Showtime Networkが所有するニュース、スポーツ、エンターテイメント番組の動画をYouTube上で“合法的に”無料配信するというもの。大多数のコンテンツホルダーがYouTubeを著作権を侵害する脅威と見なしている中、CBS Brand Channelは開始後3カ月で4万人もの視聴者と750億PVを獲得し、さらにはCBSの視聴率が向上するという相乗効果を生み出している。YouTubeとのパートナーシップはこれだけに留まらず、インターネットから従来のメディアへのコンテンツ「逆流」の試みとして行われている「15 seconds」はYouTube上で一般公募された15秒の動画がCBSテレビ上で放送されるというものだ。このようにITと融合することにより、さらに魅力的なコンテンツを生み出していくことがこれからのメディア企業の使命だとムーンバス氏はアピールした。

kn_ceb899.jpg 「Second Life」の世界ではユーザーはありとあらゆる行動が許されている。画像は「STAR TREK」ごっこをしているところ。
kn_ceb921.jpg YouTubeの創業者の一人でありCEOでもあるチャド・ハーリー氏

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