今回は、余剰パーツの有効活用という用途を想定して、Pentium Dual-Core E2180(2.0GHz)と2Gバイトのメインメモリを搭載した自作PCに、32ビット版Windows Vista Home Premium(SP1)をインストールした状態で本製品の動画エンコード速度をテストしてみた。チップセットはIntel G965 Express、グラフィックスカードはRadeon X550XT搭載のものという構成で、素の状態では、HDの動画編集やエンコードには使う気になれないスペックだ。
テスト用の素材は、HDVやAVCHDの民生用デジタルHDビデオカメラで撮影した動画ファイルを用意した。キヤノンの「iVIS HG21」で撮影した、24Mbpsという高ビットレートのAVCHD素材を含め、いずれも問題なく読み込めたほか、日本ビクターの「Everio GZ-HD7」や、日立製作所の「DZ-BD7H」など、HDVやAVCHDの規格に収まりきらないフォーマットのビデオカメラで撮影した素材も利用できたことを付け加えておく。ただ、映像のコーデックは同じH.264であっても、ファイルの保存形式がAVCHDやBDとは異なる、三洋電機の「Xacti DMX-HD700」で撮影したファイルは読み込めなかった。
今回試した動画エンコードの内容は下の表に示した通りだ。原則として最高画質の設定で出力し、変換に要する時間を計測した。FIRECODER WRITERは複数ファイルの結合に対応していないため、すべて1ファイルでの変換結果を掲載している。
比較対象として、同じマシンでソフトウェアによるエンコードも行なったが、FIRECODER WRITERはハードウェアエンコーダのオン/オフを選択できないため、同社の動画編集ソフト「EDIUS Pro 5」による出力結果を掲載する。したがって、ソフトウェア環境は完全に同じではない。
テストの内容 | ||
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変換前のファイル形式 | 変換後のファイル形式 | 素材の再生時間 |
HDV1080i(1440) | H.264(1440) | 13分57秒 |
SD MPEG-2(480) | 13分57秒 | |
H.264(1920) | HDV1080i(1440) | 16分38秒 |
SD MPEG-2(480) | H.264(1920) | 12分42秒 |
Canopus HQ(1920) | H.264(1920) | 12分42秒 |
HDV1080i(1440) | 12分42秒 | |
SD MPEG-2(480) | 12分42秒 | |
テスト結果は上のグラフを見れば一目瞭然(りょうぜん)だ。同社のWebサイトで「HDVからH.264への変換を素材時間の約半分で行なえる」とうたわれているとおり、今回試した限りでは、再生時間13分57秒のHDV1080i素材を6分45秒で変換できた。素材によって変換にかかる時間はもちろん異なるが、ソフトウェアエンコードによる結果を待たずとも、驚異的な変換速度を実現していることは明らかだ。
ちなみに同じ処理をソフトウェアで行なうと、素材の10倍近い時間(2時間9分34秒)がかかった。試しに、筆者がふだん動画編集に使っているCore 2 Extreme QX9650(3.0GHz)搭載PCで同じ処理を行ったところ、45分5秒を要し、やはりFIRECODER Bluには到底かなわない。
HDVとH.264の相互変換は素材の再生時間の半分前後で完了しているが、Canopus HQからの変換とアップコンバートはいずれも素材の時間より長くかかった。それでもソフトウェアエンコードに比べると圧倒的に速い。なお、Canopus HQからH.264への変換をCore 2 Extreme QX9650(3.0GHz)搭載PCでソフトウェアエンコードを行なった結果は58分20秒だった。
このように「ソフトの仕様と自分の用途が合致すれば」という条件はつくものの、非力な余剰マシンを5万円ほどの出費で超高速エンコード機に仕立てられるのだから、ビデオ編集や変換の機会が多いユーザーにとって本製品の魅力は強烈だ。
もうひとつ驚かされたのが超解像技術の威力だ。今回はアップコンバートの正確さを見るため、1920×1080ドットで記録したAVCHDビデオカメラの映像を720×480ドット(16:9)にダウンコンバートした素材を作成し、このダウンコンバート素材を使って、本製品によるアップコンバートを試みた。その結果を切り出したのが以下の画像だ。比較用にEDIUS Pro 5でアップコンバートした画像も掲載した。
見ての通り、FIRECODER Bluでは元の素材に迫る解像感を表現できている部分もあるほどで、全体的に見ても精細さには目を見張るものがある。ガンマ補正もかかるため、メリハリのある色再現になっていることにも注目したい。すべてのSD映像の素材で同様の効果が得られるとは限らないが、今回試した限りでは「超解像」の効果は高かった。
半面、変換にかかる時間はさすがに長く、13分弱の素材に対して3倍ほどの時間がかかっている。ただ、ここで注目すべきは変換中のCPU使用率で、アップコンバート中は4%ほどしかCPUリソースを消費しなかった。ソフトウェアによるアップコンバート中のCPU使用率は、今回テストに使ったPentium Dual-Core E2180(2.0GHz)搭載PCで2コアとも常時100%、Core 2 Extreme QX9650搭載PCでも4つのコアすべてが常時90%前後だった。
ということは、高画質でのアップコンバートを行なえるのに加え、エンコード専用機を用意できない場合でも、1台のPCで動画の変換中に別の処理を行なうという、従来考えられなかったような作業効率のアップも期待できるというわけだ。もちろん、アップコンバート以外の変換作業でもCPUの使用率は低く抑えられ、高めの処理でも40%を上回ることはなかった。
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