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» 2011年11月24日 17時00分 UPDATE

「5GHz帯無線LANルータ」導入のススメ:第5回 「450Mbps」対応ルータ購入前に復習──IEEE802.11nはなぜ高速か (1/2)

PC以外にスマートフォン、AV機器などにも利用シーンが広がっている「無線LAN(Wi-Fi)」。個人向け製品にこれまでより高速な「最大450Mbps通信」対応モデルが増えてきたが、改めて「なぜ高速になるのか」を技術面から解説する。

[坪山博貴,ITmedia]

より高速な「450Mbps通信」、どんな仕組みか

photo 最大450Mbpsの無線LAN通信に対応する、NECアクセステクニカ「AtermWR9500N(HPモデル)」

 コンシューマー向け無線LANブロードバンドルータは2011年11月現在、2009年9月に正式認証された「IEEE802.11n」が最新・主流の無線LAN規格として採用されている。IEEE802.11nは、それ以前の最大54MbpsとなるIEEE802.11a/gから大きく通信速度を向上させ、一部のエントリーモデルやポータブル型を除く無線LAN機器の多くが対応する。同時に、ノートPCの内蔵モジュールやUSB無線LANアダプタに代表されるクライアント(内蔵、搭載する側)も、たいていはIEEE802.11nをサポートするようになっている。

 一方、2011年半ばより「より高速」とうたう製品も登場してきている。それが「450Mbps無線LAN対応」のIEEE802.11nモデルだ。今回より、数回に分けてこの「450Mbps無線LAN」の特徴や購買ポイントを探っていこう。



 “450Mbps対応の無線LAN”は、これまで標準だった最大300MbpsのIEEE802.11n対応製品との接続互換性を損なうことなく、450Mbps通信対応の機器同士でより高い通信速度が望める点を特徴とする。この背景には、コンシューマー向けの製品として競争力のある価格での製品化が技術的にも可能になり、かつ「より高速な無線LAN通信」を必要とするシーンが増えつつあるのも製品化に至った理由とも1つと考えられる。

photo PC内蔵型の3×3 MIMO対応無線LANモジュール「Intel Centrino Advanced-N 6230」

 さて、今やノートPCにはほぼ標準で無線LAN機能が備わるが、450Mbps通信対応となるとまだそれほど多くはない。PC内蔵モジュールとしては2009年に「Intel WiFi Link 5300」が、2011年現在の最新世代では「Intel Centrino Advanced-N 6230」などが3×3 MIMOでの最大450Mbpsの無線LAN通信をサポートするが、これらを採用するノートPCはまだ一部に限られている(一部、BTOなどにて選択できるモデルがいくつか存在する)。

最大450Mbps通信を実現する「3×3 MIMO」技術

 では、最大450Mbpsの無線LAN通信はどうやって実現するか。450Mbps通信対応モデルは「3×3 MIMO」と呼ぶ技術を採用し、これまでの最大300Mbps(2×2 MIMO)から1.5倍の速度向上を果たしている。

 ひとまずIEEE802.11n規格のおさらいをしよう。IEEE802.11nは、通信速度が100Mbpsを超える新世代の無線LAN規格として、2003年にIEEE802.11タスクグループによって策定開始、2006年3月にドラフト1.0、2007年6月にドラフト2.0、2009年9月に正式規格となり、規格上の最大通信速度は最大600Mbpsとされた。また、正式規格の決定時にすでにドラフト2.0対応として製品化済みだった最大300Mbpsに加え、最大450Mbpsの仕様も決定された。

 これまでの規格と大きく違うのが「MIMO」技術の導入にある。MIMO:Multi Input Multi Outputをごく簡単に説明すると、送信・受信でそれぞれ複数の無線機とアンテナを準備し、反射波も含めて同時に複数の電波を送受信することで通信速度の向上を図る技術だ。重要なのはどのアンテナも同じ周波数を使用する点で、使用する周波数帯域はそのままに通信速度を大幅に向上させられる。

 MIMOは送信側がデータを分割し、分割したデータをそれぞれ別のアンテナを使って送信する。同時に送信する電波はストリームと呼ばれ、2つのアンテナから同時にデータを送信する場合は“2ストリーム”と表現する。受信・クライアント側も、複数のアンテナから同じ周波数で送信された電波を複数のアンテナで受信し、送信元のアンテナ単位で電波を合成・復元することで、本来のデータとして処理する。送信側のアンテナの位置と受信側のアンテナの位置、電波が届く時間のずれから、複数の電波は異なる重なり方をした合成波として受信側のそれぞれのアンテナに届く。このときに受信した複数の合成波を比較、演算することで合成・復元を行っている。端的だが、無線LAN(をはじめ、携帯電話などの無線技術)はかなり複雑な仕組みで無線通信していることが分かると思う。

 さて、これまでのIEEE802.11nの300Mbps通信対応製品は、送信側と受信側に最低2つずつのアンテナを備え、同時に2つの電波を送受信する“2ストリーム”だった。対して450Mbps通信対応製品は最低3つずつのアンテナを備え、3つの電波を同時に送受信する「3ストリーム」とすることで、通信速度を1.5倍に高速化させた。改めて「3×3 MIMO」という表記は、送受信にそれぞれ3つずつのアンテナを利用するMIMOという意味である。

 「なんだ、アンテナを1つずつ増やしただけか」と思うかもしれないが、実際に合成波を取り出す比較・演算処理は1ストリーム増えるだけで非常に複雑になる。機器にもそれなりの処理能力を要し、かつ送信される複数の電波ができるだけ「異なる経路できちんと受信側に届く」よう複数のアンテナを配置する必要があるなど、単にアンテナを増やすだけでは簡単に通信速度の高速化にはつながらない。もちろんこれまでの2×2 MIMO(最大300Mbps)でもアンテナ配置は重要だが、「3×3 MIMO」の最大450Mbps通信ではさらに重要になり、これを小型のボディで実現するにはメーカーに蓄積されたノウハウも非常に重要になる。

 このほかIEEE802.11nの高速化技術は、二次変調にIEEE802.11a/gと同じOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)方式を採用しつつも、サブキャリア数を増やし、符号化率を最大6分の5(IEEE802.11g/aは4分の3)に高効率化させている。これにより1チャネルあたり(20MHz幅)の通信速度が54Mbpsから65Mbpsへ高められた。さらにフェージング(移動や時間経過で電波の受信レベルに揺れが生じる現象)対策として、データ間に挟み込むガードインターバルを800nsから400nsと半分とするオプションも準備し、さらに72Mbpsまで高めた。

 また、MIMOとともに大幅な高速化に貢献しているのが、隣り合った周波数帯を2チャンネル分(40MHz幅)利用する「デュアルチャネル」だ。ここでも単純にデータ送受信に利用するサブキャリアを単に2倍にするだけでなく、1チャンネルのみの利用時に必要となる中心周波数の空きにもサブキャリアを割り当てて“2倍以上”の高速化を実現する。結果、IEEE802.11nの1ストリームは最大150Mbps、2ストリームで同300Mbps、さらに3ストリームで同450Mbpsというスペックになるというわけだ。

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