会社や出先で「あ、あのファイル、自宅のPCにはあるのに」と思ったことのある人は決して少なくないだろう。これを実施できる手段が「リモートアクセス」である。
昨今は、重要なファイルはローカル(普段使うPCのストレージ内)にコピーさせず、オンライン上で参照するのみとすることで内容漏えいのリスクを低減するオフィス内ファイルサーバやクラウドストレージサービスなど、セキュリティの重要さが特に叫ばれるオフィスシーンでも活用例が増えている。個人ニーズにおいても、家では主にデスクトップPCを使い、外出時はノートPCやスマートフォン、タブレットデバイスを使う人であれば「リモートアクセス」ができると、より便利に快適にスマートデバイスを活用できるようになるのは間違いない。
一方、オンライン上のストレージ領域を活用し、複数の機器で便利に共有できる“クラウドストレージ”サービスも増えている。こちらはすでに利用している人も多く、手軽に導入できる半面、数十Gバイト単位の保存容量を確保するならばそれなりの利用料が月額コストとして発生し、「自宅のPCにあるファイルを全部」まではさすがに難しい。今回のテーマであるリモートアクセスと、クラウドサービスは互いに補完関係にあるものといえる。
さて、ではリモートアクセスはどう行うか。昨今のPCやモバイル機器は原則としてインターネットに接続して利用するものなので、インターネットにさえつながっていれば簡単にできるように思える。しかし、それは意外に難しかった。なぜなら、家庭向けのインターネット接続は商用・法人向けのそれとは違い、インターネット側(外部ネットワーク)からのアクセスを想定していないためだ。商用・法人サイトのWebサーバは固有のIPアドレス(常に同じIPアドレス)を持ち、それが「(例えば)www.itmedia.co.jp」といった固有のドメイン名・ホスト名(いわゆるURL)にひも付けられている。そのため「www.itmedia.co.jp」へWebブラウザでアクセスすると、そのWebサーバにある情報をインターネット経由で取得できる。
ところが家庭向けのインターネット接続は固有のIPアドレスは持たない。(固定IPアドレスを持ち、自宅でサーバを設置するほどの層は別だが)基本的にプロバイダ(ISP)から空いているIPアドレスを都度付与される仕組みのため、原則として接続するたびに変更され、もちろん固有のドメイン名もひも付けられていない。もっとも昨今は常時接続環境が普及しているため、ひんぱんにインターネットの接続/切断を行う機会はなくなり、一定期間は同じIPアドレスを使いつづけることも可能だが、常時アクセス可能かという保証はないということになる。
もう1つの壁、特に現実的な問題になるのは「PCを常時起動」しておけるかどうかだ。当然、未使用時も自宅のPCは電力をそれなりに消費しているし、ひとり暮らしはともかく、使いもしない(ように見える)PCの電源を入れっぱなしにするのは、家族の同意もたいていは得られない。
これらの壁を乗り越え、手軽に自宅リモートアクセスを実現するキーワードが「ダイナミックDNS」と「Wake on LAN」だ。
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