「Koboを通じて読書革命を」――楽天の電子書籍事業第2幕の幕開け

» 2012年07月02日 21時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]
楽天代表取締役会長兼社長でKoboのディレクターも務める三木谷浩史氏の手にはKobo Touch

 楽天は7月2日、電子書籍事業に関する記者発表会を開催し、昨年買収を発表したカナダの電子書籍事業者Koboが手掛けるサービスを国内でも展開することを正式に発表した。発表会に先立ってお伝えしたとおり、7月19日から端末の販売とストアサービス「Kobo イーブックストア」を同時に開始し、端末である「Kobo Touch」の価格は7980円。特設サイトでは予約受付が始まっている。

 koboは現在、世界190カ国、900万人が利用する電子書籍サービスを運営。Kobo Touchなどの自社製品だけでなく、iOS、Android OS、Windows OS、Mac OS向けにもアプリを用意している。日本ではまずKobo Touchの提供から開始し、ほかのプラットフォーム向けのアプリも今後提供予定となっている。

Kobo Touch

 日本市場に投入するKobo Touchは、グローバルモデルと比べハードウェアレベルでの違いは見られない。Amazon.comのKindleなどと同様、モノクロ16階調の電子ペーパー(E Ink)ベースの端末で6インチの画面サイズは600×800ドットの解像度。サイズは114(幅)×166(奥行き)×10(高さ)ミリ、重量は185グラム。内蔵メモリは2Gバイトで、ユーザー利用可能領域は1Gバイトほど。通信機能はWi-Fi(IEEE 802.11b/g/n)のみで3Gモデルは非搭載。インタフェースとしてmicroUSBおよびmicroSDカードスロットを装備し、バッテリー持続時間は約1カ月。本体カラーはブラック、シルバー、ブルー、ライラックの4色。追ってフォトレビューもお届けする予定だが、これらハードウェア的なスペックは以前紹介したレビュー記事などを参照してほしい。

 ただし、ソフトウェアレベルでは若干変更点がある。まずは日本語フォント。国内向けに販売されるKobo Touchはフォントにモリサワの日本語フォント2種を含む11種類のフォントを搭載(フォントサイズは17段階に変更可能)する。また、ビューワエンジンはACCESSが「NetFront BookReader v1.0 EPUB Edition」をKoboにライセンス供与しており、実際に端末上でもそれが確認できた。ACCESSやKoboはEPUB 3ビューワのリファレンス実装を開発することを目的とした「Readium」プロジェクトに参画しており、比較的“クセの少ない”EPUB3ビューワといえそうだ。

 Kobo Touchの価格は7980円。楽天会員だと予約特典として楽天スーパーポイントが最大3000ポイント付与されることを考えると、現在日本で販売されているE Inkベースの端末としては非常に安価な価格設定といえる。楽天はこれを“挑戦価格”とし、加えて家電量販店などでも販売することで市場の拡大を狙う考え。ただし、端末を逆ざやで販売する考えではなく、端末でも薄利が見込める価格だという。

 そのほか、Koboに特徴的なソーシャルリーディング機能も「新しい読書の楽しみが提供できる」(三木谷氏)として紹介された。「KoboはFacebookと連携している唯一の電子ブックリーダー。感想などを共有でき、新しいソーシャルな楽しみを加え、新しい読書の楽しみが提供できる」とし、同社が5月に出資した画像ソーシャルサービスの米Pinterestとの連携も進めていく考えも示された。

評価の高いKoboのソーシャルリーディング機能により「新しい読書の楽しみが提供できる」と三木谷氏

ストアはEPUB3を全面採用、「ほぼすべての出版社が協力的」

 Kobo イーブックストアはコンテンツのファイルフォーマットにオープンな国際標準である「EPUB3」を全面採用。日本語コンテンツは3万点ほどのラインアップからスタートするが、Koboがグローバルで販売しているコンテンツも含めるとラインアップは約240万点となる。

 日本語コンテンツのラインアップは「有り体に言うとほぼすべての出版社が協力的。ストアに並ぶ時期が多少ずれる程度」(三木谷氏)としており、Kobo専用の独占先行コンテンツの提供なども行いながら将来的には150万点のラインアップを目指したいとしている。なお、現時点ではEPUB3の取り扱いが出版社ごとに異なるのが現状であり、EPUB3で納品するところもあれば、楽天側(正確には制作会社だが)でフォーマットの変換を掛けているものもあるようだ。現在はまだ具体的な動きはないが、出版デジタル機構との連携も視野に入っていることもうかがえる。また、楽天がKoboの買収前から展開している電子書店「Raboo」については、今後何らかの形で統合予定とした。

将来的には日本語のコンテンツで150万点を目標に掲げた。ただしそれが達成される時期については特に語られなかった

三木谷氏「日本で、世界で、読書革命を起こしたい」

Koboを通じた教育面での貢献についても言及した三木谷氏。電子教科書への展開も期待される

 発表会で楽天の三木谷氏は、「私自身、人生の中でさまざまな本との出会いがあり、人格が形成されていった」と本への思いを吐露。しかし、日本では読書離れが進んでいるとも話し、ある意味「国家的な危機」だと危機感をあらわにした。

 また、日本には非常に多くの優れたコンテンツがあるが、それらは日本に閉じていると指摘。国家と企業が協力してコンテンツの国外売り込みを推進している韓国の例を挙げ、日本のコンテンツが海外進出する手助けをすることで、日本の文化的・経済的発展に貢献したいと話した。

 質疑応答では国内で電子書籍の普及を阻む阻害要因は何だと考えているかを問われた三木谷氏。さまざまな要因があるとしながらも、フォーマット含めた“規格”が統一されていないため複雑化、コスト高になっていたこと、端末の価格が比較的高かったこと、さらに前述のとおりコンテンツが国内に閉じていたことなどを挙げたが、いったんハードルを越えてしまえば拡大するだけと事業展望を語った。

 三木谷氏は、日本の電子書籍市場について、「これまでもいろいろなメーカーが電子書籍にチャレンジしてきたが、残念ながらあまりうまくいっていない。楽天が行き着いたのはオープンでグローバルなプラットフォームの必要性だった」と話し、そのためのグローバルデバイスがKoboであり、「日本で、世界で、読書革命を起こしたい」(三木谷氏)とした。

 また、Koboは海外で個人出版サービス「Kobo Writenig Life」も展開しているが、国内での展開は未定。三木谷氏によると、「将来的にはサポートしていくことになるだろうが、現時点で具体的な日程は決まっていない。それよりも既存のコンテンツを集めていくことに注力したい」という。Amazonが自社で出版レーベルを立ち上げていることについては、「Koboは出版社を作る気はない」とし、出版社や作家とのWIN-WINの関係を築きたいとしている。

海外からの電子配信に消費税課税「フェアであればよいと考えている」

 Koboの国内展開が正式にアナウンスされ、またAmazonもそれに続くことから活況の兆しが見える日本の電子書籍市場。しかし、その中で新たな火種も抱えつつある。端的に言えば、海外からの電子配信に消費税の課税を検討する財務省の動きに象徴される動きだが、これについて三木谷氏は、「フェアであればよいと考えている。ルールに従ってやるのみだが、海外でプラットフォームを整備し事業を展開しているKoboがこの事業の主体であり、日本での業態はその延長線上にある」と説明。基本的には消費者が収める消費税をいただく筋道が立たないし、法律上、徴収する義務がないものを徴収するのは逆に問題があるとした。

 また、欧州では教育・文化的な配慮から出版事業、あるいは電子書籍への消費税(付加価値税)が低く抑えられており、ブラジルでは本そのものに対する消費税は例外的に免除されていると説明。「国の発展という意味でさまざまな角度から検討してもらいたいし、関税との整合性を取っていく必要があるだろう」(三木谷氏)とも述べた。

 最後に三木谷氏は、「いい読書は人間を変える。人間が変われば社会も変わる。Koboを通じて、よりよい社会を作っていけるよう、読書革命を起こしていきたい」と繰り返し“読書革命”への強い意気込みを語った。

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