以上をまとめると、次のようになる。
つまり、外観ががらりと変わったからといって、製品の価値が高まったかというと、必ずしもYesとは言えない。これまでなかった画期的な機能を追加したことで部品の実装が変わり、やむを得ずボディデザインを変えなくてはいけなくなったというケースもあれば、単なるハッタリという場合もあるわけで、一目で見抜くことは非常に難しい。また、ボディデザインを変えたことで壊れやすくなったり、放熱がうまくいかなかったりと、予想外のトラブルが発生するリスクもある。
一方、外観がほとんど変わらない新製品というのは、見た目に頼らずして製品の価値を高めた、ユーザーから見て「当たり」の製品である確率が、実は高い。中身に自信があるので、あえて外見を変えなくても構わない、という考え方でリリースに至っただけで、手抜きではまったくないからだ。新製品をいち早く手に入れて回りに見せびらかしたいユーザーからすると、なかなか購入のモチベーションは上がりにくいが、外観が枯れているがゆえ不良などが発生しにくい利点もあり、PC周辺機器において実は狙い目と言える。
ただしカラーバリエーションの追加が主になっている新製品は、むしろそのこと自体が目的であり、中身はまったくといっていいほど進化していない場合がある。はっきり言ってしまうと、カラーバリエーションの追加が前面に出てきている製品は、旧来の製品から買い替える価値はそれほどない、ということになる。
これらに当てはまる具体的な製品名の言及は本稿では避けるが(スマートフォンや電子書籍端末などで、ズバリこれらの例に当てはまる製品が思い浮かぶ人も多いはずだ)、どのメーカーもこうした傾向はそう大きくは変わらない。違いがあるとすれば、企画担当者が派手なリニューアルを好むか好まないか、経営者の鶴の一声で判断がひっくり返ることがあるかないか、といった程度のものだ。こればかりは法則性がないので、せいぜいその企業単位で過去にどのような事例があったかをチェックするほかはない。
もちろんこうした見分け方にも例外はある、例えば、不具合対策で内部の部品を差し替えるにあたり、旧来の製品と区別するために型番を変えるというケースだ。これは外観が変わらない割には製品の価値はほとんど高まっていないので、前述の分類からするとイレギュラーということになる。
もっとも、不具合対策の場合、通常の新製品発売のスケジュールからはズレてリリースされるのですぐに見分けがつくほか、型番が旧来製品の型番の後ろに「A」とか「N」とつけただけのことが多いので(言うまでもないがNはNEWの頭文字だ)一目瞭然である。
また、多くのメーカーでは、2サイクル続けて同じ外観のモデルを出すことはほとんどない。つまり、上記のような理由で外見そのままの新製品を出して、その翌年にまた同じような状況になった場合、外観を変えないことでユーザーががっかりする、新鮮味が皆無といったデメリットが大きくなりすぎるので、そこはさすがに変えてくるということだ。逆に言うと、2サイクル続けば外見のモデルチェンジは高確率で行われるわけで、上記の法則は当てはまらなくなる可能性がある。
ということで、例外事項も決してなくはないのだが、どのメーカーも年次の予算計画を立てて新製品をリリースしている以上、こうした傾向は大きくは変わらない。ユーザー自身も新製品を投入するメーカー側の視点に立って、こうした新製品の当たり外れを見抜くための目を養ってもらえれば幸いである。
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