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» 2014年01月24日 18時40分 UPDATE

Mac 30年の歩みを林信行が振り返る:Macは30年を経ても「最高の自転車」であり「最良の紙」 (1/4)

個人のクリエイティビティを増幅するコンピュータ、Macの30年を林信行氏が振り返る。Macは何が“特別”なのか。

[林信行,ITmedia]

30年を経ても変わらない「パーソナル」なコンピュータ

 アップルが最初の「Mac」を発表したのは今日からちょうど30年前、1984年1月24日だ。

og_mac30_001.jpg 小さなボディに最高の性能を詰め込んだ最新Mac Pro(撮影:矢野渉)

 同社初のパソコンは「Apple I」、マウスを初めて採用したコンピュータなら「Lisa」という製品もある中、Macは一体、何が特別だったのか? それはこの製品に込められた「思想」であったり、そこから派生したいくつかの「特質」なんじゃないかと思う。

 Macの特質の中でも最大のものが「個人を尊重している」こと――Macはパーソナルな(個人のための)コンピュータなのだ。

 Lisaは「使い始めて20分で操作が覚えられる」簡単さは備えていたが、価格的にも用意されたソフトにしても企業/ビジネス向けだった。これに対してMacは(米国での)販売価格も、利用できるソフトも一般の個人を意識しており、形も愛らしかった。

 例えばソフト。最初からついているソフトウェアの1つとしてMacPaintというお絵描きソフトが標準でついていた。1980年代前半、パソコン用ソフトと言えばゲームか、ワープロ、表計算ソフトくらいしか種類もなかったが、Macには、このゲームでも、事務用でもないソフトが付属しており、箱から出してすぐに創造的な楽しみを味わうことができたのだ。

 ちなみに初期のMacは画面の解像度も粗く、白黒しか表現できなかったが、それでもがんばれば、こんな絵も表現できるのだとスティーブ・ジョブズが気に入っていた橋口五葉の木版画「髪梳ける女」の絵が使われていたことはあまりに有名だ。

 「愛らしい形」という話だと、彼が開発中のLisaを「額が広過ぎてクロマニヨン人風だ」と評していた話を、スティーブ・ジョブズ伝記のどれかで読んだのを思い出す。ジョブズは、LisaやMacの本体の形を人の顔に見立てていた。実際、よく見ると初代Macは、その大きさも、アゴを思わせるくびれも含め、人の顔のようだ。

 人間は人の顔くらいの大きさに愛着を持ちやすい。

og_mac30_002.jpg 最新Mac Proもどこか人の顔を連想させるサイズだ

 2000年にジョブズが自信満々に発表した失敗作「Power Mac G4 Cube」もそれくらいの大きさだ。透明のプラスチックケースの上部に張り付いた立方体の本体を、ジョブズは「まるで試験管に浮く頭脳のようだ」と形容していた。やはり、人の頭を意識していたのだろう。

 初代Macの発表から30年経った今、一番旬な最新型Macといえば、黒い円柱型のMac Proだが、この製品も、やはり大きさや形で、どこか人の顔を連想させる。

 初代Macは、起動時にMac本体を擬人化したアイコンが表示された(線画のMac本体のディスプレイ部分に笑顔が描かれている)。今のMacには擬人化の要素はないが、暗い場所にいくとキーボードが光って文字が浮かび上がったり、書類を端までスクロールすると、ボヨーンと跳ね返る動きをしたり、最新Mac Proもケーブルを挿そうと思って本体を手に持つと背面に並ぶ各ポートの種類を示すマークが下から順に光が灯ったりと、たまにチラっと見せる愛らしい(憎らしい!?)仕掛けが製品への愛着を強める。しかも、ただ細々としたギミックを加えるのではなく、きちんと使ったときの風景を思い描きながら製品のデザインに落とし込んでいく。

 例えば初代Macをデザインしていた時、ジョブズは「これは重役の机の上におかれることも多いパソコンだ。その机の正面に座るゲストの側からもきれいに見える必要がある」とMacの背面を美しくすることにもこだわった。

 その思想は、その後のMacにも引き継がれ、初代iMacの発表会では「弊社のPCの背面は、下手な会社のPCの正面よりも美しい」とまで言わしめた。もちろん、Mac Proに至っても、背面の美しさはもちろん、ケーブルをたくさん挿して使う風景も想定して、ケーブルに引っ張られて本体が転ばないように、しっかりとした重みが加えられている。

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