大解説! NVIDIA新世代GPU「GeForce GTX 980」「GeForce GTX 970」の新機能高性能なMaxwellがやってきた(4/5 ページ)

» 2014年09月19日 11時30分 公開
[本間文,ITmedia]

「非同期ワープ」でVRヘッドマウントも最適化

 GM204は、「Oculus Rift」などのVRヘッドマウントへの対応も考えている。VRヘッドマウントディスプレイでゲームを行う場合、より広範囲な視野角とヘッドトラッキングなどの演算要素が加わるため、描画遅延が深刻な問題となる。そこで、GM204ベースのGeForce GPUでは、MFAAによる処理性能向上による遅延時間の低減に加え、描画範囲よりも広い空間をあらかじめGPU側で処理しておき、ヘッドトラッキングによる移動を感知して、先のフレームで大きめに描画しておいた範囲であれば、最小限の遅延時間で次のフレームを描画できるようにする「非同期ワープ」(Asynchronous Warp)という技術をサポートする。

OS処理の最適化やMFAA(写真=左)、非同期ワープ技術(写真=右)などにより、VRヘッドマウント利用時のレイテンシを約半分に低減できる

新世代アーキテクチャで実現した省電力

 省電力化では、アーキテクチャの変更が大きな役割を果たしている。Maxwellでは、SMの構成をKeplerの192 CUDAコアから128 CUDAコアに減らしつつ、演算処理のスケジューリングに最適化を施すことで少ないコア数でより優れたパフォーマンスを実現するとともに、省電力化を図っている。GeForce 980では、同じTSMCの28ナノメートルプロセスルールを採用したGeForce GTX 680に比べて、消費電力あたりの演算性能で2倍、グラフィックスパフォーマンスでも、CUDAコア数は1536基から2048基と約30%増ながら高クロック化もあって約2倍に向上している。

従来のGeForce GPUと省電力性能を比較する

第3世代のカラー圧縮技術とは

 GM204で採用した新しいメモリコントローラでは、メモリ圧縮技術が新しくなり、より低負荷で4Kなどの高解像度描画ができるように工夫している。NVIDIA 上級副社長でGPUアーキテクチャ開発を指揮するジョナ・アルベン氏は、「GM204では、NVIDIAにとって第3世代となるカラー圧縮技術を採用することで、メモリ帯域を約25%低減することを可能にした」と説明している。

GM204では、メモリコントローラの改良でカラー圧縮率が向上した。このおかげでメモリ帯域を大幅に節約することが可能になった(写真=左)。カラー圧縮と、キャッシュ効率の改善などにより、メモリ帯域は約25%向上している(写真=右)

NVIDIAにとって第3世代のメモリ圧縮技術によって、ゲーム画面の大半のカラー情報は圧縮できるようになった。ピンク色で示した部分が、圧縮できたカラー情報だ

「VXGI」でアポロ11号の月着陸をリアルに再現

 GM204では、2Dマップ上のピクセルのように、3Dマップ上における方形(キューブ状)の処理単位となる「Voxel」(ヴォクセル)に対し、透過光や反射光など複雑な環境光を比較的低負荷で再現する「VXGI」(Voxel Gloval Illmination)のハードウェアアクセラレーションを可能にした。VXGIによって物質ごとに異なる反射率や透過率、2重、3重に反射する光なども再現したコンピュータグラフィックスをリアルタイムで描画できるようにする。

 NVIDIAは、VXGIの優位店を紹介するデモとして、アポロ11号の月面着陸シーンをコンピュータグラフィックスで再現した。月面を覆う塵(レゴリス)やアポロ11号本体の各素材ごとに異なる反射特性をVXGIによって忠実に表現してみせている。このデモは、EPIC Gamesが開発中の次期ゲームエンジン「Unreal Engine 4」をベースに開発したもので、光源の拡散率などを円錐(コーン)の大きさや底面積の広さで定義する「コーン・トレーシング」と呼ぶ技法などを用い、写実的なコンピュータグラフィックス表現を可能にした。

GM204でサポートするVXGIにより、複雑な環境光のシーンもリアルタイムのコンピュータグラフィックスで表現できるようになる(写真=左)。太陽やライトなどの直接光源だけでなく、物体による反射光や干渉物による光の低減など、複雑な光がいくつも存在する(写真=右)

VXGIでは、3Dマップ上にVoxelと呼ぶ方形の基準点を作り(写真=左)、光源の拡散率などを円錐(コーン)の大きさや底面積の広さで定義する「コーン・トレーシング」と呼ぶ技法などを用い(写真=右)、写実的なコンピュータグラフィックス表現を可能にする

右半分はアポロ11号の月面着陸時の写真で、左半分がVXGIによるリアルタイムコンピュータグラフィックスだ(写真=左)。VXGIを使ったアポロ11号のデモにおけるVoxel表示。Voxelの大きさは一定ではなく、拡散率や透過率によって変化する(写真=右)。VXGIによるVoxel処理のハードウェアアクセラレーションにより、通常の環境光処理に比べててレンダリング性能は約3倍向上する

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