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» 2014年10月08日 08時30分 UPDATE

タブレットに“超高性能”という新提案:「VAIO Prototype Tablet PC」を濃密にチェックする (1/5)

4コア/8スレッド対応の第4世代Core Hプロセッサ、Iris Pro、PCIe SSD、Adobe RGB対応の12.3型“2560×1704”液晶、ワイヤレスキーボード、筆圧ペン……新生VAIOが放つ超高性能タブレットの試作機に込められた数々のこだわりを追う。

[前橋豪,ITmedia]

新生VAIOから「高性能すぎるタブレット(の試作機)」が登場

 2014年7月1日にVAIO株式会社としてPC事業を再スタートしてから約3カ月、新会社がお披露目する最初の新設計モデルは、規格外の高性能を備えた「モンスタータブレット」の試作機だった。

 既報の通り、同社は米ロサンゼルスで開催中のクリエイター向けイベント「Adobe MAX 2014」にて、新コンセプトの12.3型Windowsタブレット「VAIO Prototype Tablet PC」を初公開し、VAIOブースに展示している。

tm_1410vaio_tab_r_01.jpg 「Adobe MAX 2014」で公開された12.3型Windowsタブレット「VAIO Prototype Tablet PC」。ボディカラーはブラックで統一され、左上に「VAIO」のロゴ、画面下にタッチセンサー式のWindowsボタンがある
tm_1410vaio_tab_r_02.jpg 背面には「VAIO」ロゴと大きめのスタンドを内蔵。VAIOロゴは、文字をエンボス加工でくぼませ、輪郭をダイヤモンドカットで輝かせている。ペンは側面に磁力で吸着できるが、しっかり固定できるホルダーもある

 同社が公開した仕様を見ると、OSのWindows 8.1 Updateはともかく、ノートPC向けCPUで最上級となる4コア/8スレッド対応の第4世代Core Hプロセッサ、CPU内蔵グラフィックスの上位版であるIris Pro Graphics、2560×1704ピクセル(3:2)の高解像度に対応しつつ、Adobe RGBカバー率95%の広色域まで備えた12.3型液晶ディスプレイ、PCI Express接続の高速SSDなど、とてもタブレットとは思えないハイスペックが並ぶ。

 さらに、タブレット本体の内蔵スタンドと、非使用時の画面カバーも兼ねたワイヤレスキーボードを組み合わせることで、ノートPCスタイルに早変わりする2in1デバイスとしても利用でき、筆圧対応のデジタイザスタイラスも備えている。キーボード着脱式の2in1としての基本設計は、ソニー時代の11.6型Windowsタブレット「VAIO Tap 11」(2013年11月発売)に近く、その進化系といった印象だ。

tm_1410vaio_tab_r_03.jpg 背面のスタンドを開き、画面カバーを兼ねるワイヤレスキーボードと組み合わせれば、タブレットとノートPCを1台で両立する2in1デバイスとしても利用できる。デジタイザスタイラスも採用し、筆圧検知を生かした繊細なペン入力も可能だ
tm_1410vaio_tab_r_04.jpg 背面のスタンドを開いて自立させた様子。タブレットの内蔵スタンドは、中央付近にヒンジがあって下から上に開くものが多いが、今回の試作機はヒンジが下部にあって上から下に開く独特の構造だ
tm_1310vaiotap11_01.jpg 画面カバーを兼ねるワイヤレスキーボード、ペンと組み合わせた構成は、かつての11.6型Windowsタブレット「VAIO Tap 11」に近い

 Prototypeの呼称通り、まだ試作機の段階で、発売する時期や地域、価格は未定としている。ソニー時代からVAIOのフラッグシップモデルは、安曇野で設計から製造までを一貫して行う「安曇野モデル」であることが特徴の1つだったが、それも未定とのことだ。

 現時点で発売時期の目安が語られないということは、今年の秋冬商戦には販売されない可能性が高い(同社の関取高行社長は2014年度内、つまり2015年3月までに新製品を投入すると語っているが、その新製品が今回の試作機とは限らない)。

 とはいえ、試作機ながら他に類を見ないスペシャルな仕様は、「新会社でもVAIOらしい独自性は健在」とアピールするのに十分なインパクトがある。今後、日本のユーザーが触れられる機会についても検討中という。

突出した性能はクリエイターのため

 VAIOのプロダクトプロデューサーという立場で、商品企画を担当する伊藤好文氏は、今回の試作機を「クルマに例えるならば、コンセプトカー」と語る。コンセプトカーとは、その企業が目指す次のクルマの在り方を形として見せるものだ。VAIOは新会社発足時に「本質+α」というスローガンを掲げたが、それを具現化した1つがこの試作機となる。

tm_1410vaio_tab_r_05.jpg VAIOが2014年7月1日に開催した新会社設立の記者説明会では、関取高行社長が「本質+α」という言葉を何度も強調した。それを具現化した1つが、今回の試作機となる

 コンテンツを受動的に楽しむのに適したスマートフォンやタブレットが一般に普及し、これらとのすみ分けとして、PCはより生産性の向上やクリエイティブユースに適した高性能を求められている面があり、コンシューマーからビジネスに軸足を移すPCメーカーも多い。新生VAIOが本質+αとして目指すのも、PCならではの性能や生産性、そこから生まれる価値の提供だ。

 今回は高性能なPCが必須のクリエイターに着目し、創作活動がデスクに縛られることなく、どこでもインスピレーションやアイデアをデジタルデータとして形にできるよう、「持ち運べるタブレットでデスクトップPCレベルの性能を実現すること」を目指した。一般向けの主力PCに比べて、狭い市場が対象になるが、この試作機で得られたフィードバックや成果は、VAIOの他機種に生かすことも視野に入れて開発している。

tm_1410vaio_tab_r_06.jpg 今回の試作機は、クリエイター向けに「持ち運べるタブレットでデスクトップPCレベルの性能を実現すること」を目指した。ワイヤレスキーボードとタブレット本体は磁石で吸着する仕組みで、画面を保護して手軽に持ち運べる

 その源流は、ソニー時代の2012年10月に発売した2in1デバイス「VAIO Duo 11」までさかのぼる。VAIO Duo 11にビジネス用途を想定してペン入力機能を搭載したところ、予想外にイラストレーターや漫画家の注目を集め、モバイルで創作活動ができることを高評価する声が大きかった。

 続く2013年6月発売の「VAIO Duo 13」でも同様の傾向が見られ、より本格的で高性能なクリエイター向けタブレットに需要があると確信したというわけだ。今回の試作機をAdobe MAXで初披露したのも、クリエイターの認知拡大を一気に図るために違いない。

 幸いなことにVAIOの新会社には、ソニー時代からVAIOの名機を開発してきた中心的な3人のプロダクトマネージャーが在籍しており、事業規模がソニー時代から縮小しても、世界を驚かせる優れたPC(特にモバイルPC)をゼロから生み出る開発力が備わっている。これが依然として他社に対する大きな強みだ。

 今回の試作機はVAIO Duo 13から発展させて考え出したとのことで、同製品の開発を統括した笠井貴光氏(VAIO Z1/Z2、VAIO type SZにも関わる)によるものかと思ったが、直近でVAIO Pro 11/13を担当した宮入専氏(旧VAIO type T、VAIO type ZやVAIO SAにも関わる)が中心となって開発を行ったという。ちなみにもう1人のマネージャーは、VAIO type GやVAIO type Z、VAIO Xの開発を率いた後、開発部門で部長を務めていた林薫氏だ。

 笠井氏と林氏についてだが、関取社長に以前聞いたところ、「もちろん、3人のマネージャーで1機種だけを開発しているわけではない。それぞれに新製品の準備を進めている。後は想像におまかせしたい」とのコメントだった。今回のクリエイター向けに特化した試作機の製品化だけでなく、VAIOの新モデルが今年度内あるいはそれに近いタイミングで登場する可能性も大いにあり得る。

ys_duo08.jpgtm_1306_duo13_r2_26.jpg VAIOはスライダースタイルの2in1デバイスである「VAIO Duo」シリーズを中心に、筆圧対応のペン入力を追求してきた。2012年10月発売の「VAIO Duo 11」(写真=左)と、2013年6月発売の「VAIO Duo 13」(写真=右)
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