富士通「伊達モデル」はダテじゃない!――デスクトップPC累計2000万台出荷の工場を見てきたゴールドに光る記念モデルもお披露目(2/4 ページ)

» 2015年02月23日 19時30分 公開
[フォレスト・ヒーロー,ITmedia]

トヨタに学んだ生産革命、震災を乗り越えて地元福島に貢献

 富士通アイソテック社長の岩渕氏は、記念式典の前に出荷2000万台までの取り組みを紹介した。

 岩渕氏によると、最初の転換期は2003年、トヨタ生産方式に学んだ同社独自の「FIT生産革新運動」だという。「未知への挑戦、ものづくり革命」を目指したその活動実績はすさまじい。継続的な改善と革新、人材育成によって、PCの製造手番は10年間で8割も削減、PC生産性は3.8倍向上、PC棚残(棚卸時の在庫量)も24%削減された。まさに、生産革新運動は順風満帆に見えた。

製造現場の変化(製造開始当初、2003年、そして現在)
トヨタに学んだ「生産革新運動」の取り組み結果

 ところが2011年3月11日、東日本大震災が発生。震度6弱の激震が工場を直撃する。天井は崩落、ラックが転倒、生産ラインには甚大な被害が生じた。「幸いにも従業員スタッフに負傷被害はなかった。不幸中の幸いだった」と岩渕氏は、当時を振り返る。

東日本大震災から38日で復旧完了

 この被害を受け、富士通グループのBCP(事業継続計画)を初めて発動し、震災から12日後には島根富士通でPCの代替地製造を開始した。そして、福島工場も震災発生からわずか38日後に復旧を完了させている。

 この奇跡的なリカバリについて岩渕氏は、「富士通グループあげての支援、地元福島の方々のさまざまな協力のもと実現できた」と感謝する一方、「これからも富士通アイソテックは福島でのものづくりを通じて、地域社会へ貢献していく」と意気込みを語った。

量産直後からの高品質を可能にする「FJPS」とは?

 次に、岩渕氏は福島工場の未来に向けた取り組みについて、最新技術やノウハウを紹介した。「グローバルに通用するQCD(Quality Cost Delivery)+Greenの実現」を目指す「FJPS(Fujitsu Production System)」という概念だ。

「FJPS(Fujitsu Production System)」の概念図

 FJPSは生産と開発の2つの軸で構成される。

 受注から物流・配送までの「生産(軸)」においては、「自立(自律)活動」と「平準化の追求」を継続的に追求していく。企画から生産までの「開発(軸)」では、「デジタル工房」「ものを作らないものづくり」「デジタル生産(仮想工場)」という3つのアクションを行い、開発工程の同時進行、納期短縮、効率化を図る「コレント開発」を実現する。

 この開発(軸)における取り組みは、具体的な開発例を見ると分かりやすい。「デジタル工房」では、3Dスキャナやバーチャルホログラフィーといったバーチャルリアリティを活用、3Dプリンタも用いて企画者のアイデアを素早く形にする。つまり、商品企画、開発上流のプロセスで「知の集約」および「スピードアップ」を図るというわけだ。「アイデアを早い段階で“形”にすることは重要だ」と岩渕氏は語る。

「デジタル工房」の概要

 次に「ものを作らないものづくり」では、落下衝撃時の応用解析、電磁波ノイズの解析、基板のノイズ解析、装置の曲げ剛性解析、静電気の放電特性解析、装置の放熱特性解析などを行い、コンカレント化で開発期間を短縮しつつ、信頼性や品質の向上、コスト低減も図る。

「ものを作らないものづくり」の概要

 最後に「デジタル生産(仮想工場)」では、「ものを作らないものづくり」の結果から設計データや工程分析を行い、ラインシミュレータを用いた効率的な生産ラインと、ロボットシミュレータを用いたロボットシステムの構築について事前に検証する。これにより、実際の工場で量産初日から「垂直的な立上げ」の高品質生産を可能にするという。

「デジタル生産(仮想工場)」の概要
「デジタル生産(仮想工場)」によるシミュレーションのイメージ

 岩渕氏は、これらの取り組みによって「グローバルに通用する高い生産性と市場競争力を確立する」と力強く意気込みを語った。


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