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Windows 10でAndroidとiOSアプリがそのまま動く!?――「Project Astoria/Islandwood」に迫る鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/3 ページ)

» 2015年05月13日 19時00分 公開
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「Project Islandwood」はiOSアプリのWindows 10移植を加速させるか?

 Project Astoriaに非常に大きな期待がある半面、iOSアプリのポーティングを目指す「Project Islandwood」は、まだまだこれからといった印象を現時点で受ける。

 Build 2015の基調講演では、iOS向けゲームアプリの「Candy Crush Saga」をWindows 10デバイス上で動作させるデモストレーションが披露されたが、そのポテンシャルは感じられるものの、実際にどれだけのiOSアプリ開発者がWindowsストアでのアプリリリースに興味を示すのかは、実際にフタを開けてみないと分からないと筆者は考えている。

Build 2015でも度々デモストレーションが紹介されていたiOS用ゲームの「Candy Crush Saga」が、UWPのストアアプリとして利用できるというのがProject Islandwoodの特徴となっている

 周辺サービスやAPIが基本的にすべて網羅され、開発環境までそのまま流用できるProject Astoriaに対し、Project Islandwoodの開発は「Visual Studio」上で行うため、すべてのプロジェクトやリソースをいったんXcodeからVisual Studioに取り込む必要がある。また現時点でサポートされているiOSのAPIはすべてではないため、既存のコードによっては書き換えや最適化が必要となる。

 iOSアプリのコードがWindows 10でもそのまま動作するよう、一部の仕組みは最小限のコード変換で利用できるよう配慮されているが、Project Astoriaほどの至れり尽くせりではない。この辺りの開発環境やコード変更事情がiOSアプリ開発者にとってのハードルとなる。実質的にはVisual StudioでiOSアプリの開発言語であるObjective-Cをサポートし、APIや一部サービスをラッピングしてポーティングにかかる手間を軽減したイメージだ。

Project Astoriaとは異なり、Project IslandwoodではiOSアプリ開発の基点となるXcodeからプロジェクトやリソースをVisual Studioに読み込んで開発を行う
実質的にVisual StudioがObjective-Cに対応したようなイメージだ
忘れてはいけない大きな特徴として、iOSアプリがARM版のWindows Mobileだけでなく、通常のx86/x64プロセッサを搭載したPC版Windowsでも動作する点がある。これまで固定画面での利用が多かったiOSに比べ、スクリーンサイズやアスペクト比が可変となるため、労力を惜しまないのであれば、この辺りのコード変更が必要になる
APIや周辺サービスが至れり尽くせりだったProject Astoriaに比べ、Project Islandwoodでは「比較的メジャーなAPIのインプリメンテーションが優先される」というように、現時点ではまだ開発途上版といった印象だ
Project IslandwoodによるiOSアプリのWindows 10へのポーティングは、今後のバージョンアップも含め、実際に“使える”レベルに達するにまだ少し時間がかかるとみられる

 昨今のスマートフォン事情を鑑みるに、iOSアプリを開発するデベロッパーのモチベーションは「シェアの多さ(より多くのユーザーに使ってほしい、売上を伸ばしたい)」「先進的事例に積極的にチャレンジしたい」という2つにあると筆者は考える。

 特に日本の場合は前者の「シェアの多さ」は無視できない部分で、ポーティングのハードルが上がれば上がるほど、後発でシェアの低いWindows Mobile 10にデベロッパーの目を向かせるのは依然厳しいだろう。

 また比較的シンプルなアプリのWindowsへのポーティングは容易だと考えられるが、Project Islandwoodでどの程度iOSアプリ全体をカバーできるかは未知数だ。おそらくアプリのポーティングにおける順路としては、iOS版よりもAndroid版を経由したほうが現時点でハードルが低いのではないかと予想する。

 この辺りの事情も含め、開発途上にあるProject Islandwoodに興味ある方は専用ページをチェックしてみてほしい。

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