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» 2015年05月30日 13時00分 公開

鈴木淳也の「Windowsフロントライン」:「Windows 10 IoT」とはどのようなOSなのか? (1/3)

PCやタブレット、スマホ向けの次期OSとして注目されている「Windows 10」。しかし、陰の主役とも言える「Windows 10 IoT(Internet of Things)」はあまり知られていない。現在明らかになっている情報をまとめよう。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

Microsoftの目指す「IoT(Internet of Things)」とは?

 これまで「Windows 10(for PC)」「Windows 10 Mobile」といったPCやスマートフォン/タブレット向けOSに関する最新情報を多数紹介してきたが、今回はWindows 10におけるもう1つの主役と言える「Windows 10 IoT」に関する情報をまとめよう。

今回はIoT(Internet of Things)版のWindows 10に迫る

 「IoT(Internet of Things)」は、昨今のIT業界で最も注目を集めているバズワードの1つだが、実のところIoTがカバーする領域は非常に広く、ベンダーによってその意味するところが異なっている点に注意したい。

 Internet of Things(モノのインターネット)というように、PCやスマートフォンのようなスマートデバイスだけでなく、家電から自動車、ビルの設備、果ては単なるセンサー装置まで、ありとあらゆるデバイスにネットワーク接続機能を持たせ、これらを相互に接続する、あるいはセンサーから得られる情報を集約することで、そこに隠れている情報を新たに“発見する”ことを主眼としている。

 つまり、IoT本来のビジョンを実現するためには、さまざまな要素を組み合わせて互いに補完し合う必要があり、個々の要素技術を持つベンダーがIoTの名の下に自社の技術や製品をさかんに宣伝しているわけだ。

 例えばIntelであれば、Atomに代表される小型SoCがあるほか、大量のデータをクラウドに集約した際に、素早く効率的にデータをサーバ上で処理するための「Xeon」のような高性能プロセッサを売り込むことができる。

 BroadcomやQualcommのようなチップベンダーであれば、高性能な通信モジュールや、IoTの小型デバイスにネットワーク機能を持たせる通信スタックが主力製品となる。ネットワーク機器ベンダーのCisco Systemsは「IoE(Internet of Everything)」のコンセプトの名の下に、高性能なエッジルータをアピールしているし、IBMやOracleのようなソフトウェアベンダーは大量のデータを効率よく分析するためのアプリケーションやミドルウェア製品を扱っている。

 では、Microsoftはどうだろうか? まずは、IoTに対応した個々のデバイスを集約して管理し、データ解析を効率よく行うためのクラウドサービス「Microsoft Azure」が中核にある。そしてAzureへの接続機能を提供し、IoTデバイス上で“よりリッチ”で開発効率のよいアプリ実行環境を提供するのが、「Windows 10 IoT」というクライアントOSの存在だ。

 同社は、この「フロントエンド」と「バックエンド」の2種類のソフトウェア(サービス)を主軸にIoTの世界を攻略しようとしている。

Windows EmbeddedからWindows 10 IoTへ

 Microsoftが現在提示しているWindows 10 IoT製品の概要を紹介しよう。以下はWindows 10 IoTのロードマップとラインアップの一覧となる。これらの製品群はすべて、従来「Windows Embedded」の名称で呼ばれていたものが、Windows 10の世代でWindows 10 IoTへとリニューアルしたものだ。

組み込み向けWindows 10のロードマップ。従来は「Windows Embedded」の名称で提供されていた製品が、「Windows 10 IoT」で包含されるようになる
現状で提供が発表されているWindows 10 IoTのエディションは「Windows 10 IoT for industry devices」「Windows 10 IoT for mobile devices」「Windows 10 IoT Core」の3種類だ。要求スペックで、基となったWindows Embeddedの種類や用途が想像できるだろう

 Windows Embeddedは組み込み向けに最適化されたWindows OSのバリエーションであり、その中身には「Windows for PC」とほぼ同じ構成でPCへの導入をターゲットにした「Windows Embedded」と、少ないメモリやプロセッサパワーで動作し、主にARMプロセッサで動く小型デバイスをターゲットにした「Windows Embedded Compact」の2種類がある。

 後者は以前まで「Windows CE」の名称で呼ばれていたものだ。Windows CEから分化し、スマートフォンでの利用に特化する形で改良が加えられたのが「Windows Phone 7/8/8.1」で、現在の「Windows 10 Mobile」への系譜になっている。

 組み込み向けWindowsで複雑なのは、そのラインアップ構成だ。現在のところ、下記の3種類の製品が一般提供されているが、このほかに業界向けの特殊用途製品として「Windows Embedded POSready(Windows Embedded Industry)」「Windows Embedded Handheld」「Windows Embedded Automotive」などのラインアップが用意されている。

  • Windows Embedded 8
  • Windows Embedded 7
  • Windows Embedded Compact

 身の回りを見てみると、いわゆる一般的なPCの用途以外では、空港などの公共施設やビルで見られる「サイネージ」や「情報掲示板」、チェックイン/アウトや情報検索、チケットの購入に用いる「KIOSK端末」、銀行やコンビニの「ATM端末」、スーパーやレストランの「POSレジ端末」などでWindowsの利用例が多い。

 これらの端末ではWindows Embedded、Windows Embedded POSready(Windows Embedded Industry)が用いられることが多く、Windows 10の世代では「Windows 10 IoT for industry devices」という製品ですべて包含されることになる。

 なお、POSreadyでは特殊用途として「バーコードスキャナ」「クレジットカードリーダー」などの入力装置をサポートするためのドライバが特別に用意されていたが、これらはすべてWindows 10 IoT for industry devicesでの標準サポート対象となり、POSreadyの製品カテゴリはWindows 10の世代では消滅している。

 また新たに、Bluetooth接続経由でのレシートプリンタやキャッシュドロワーがInboxドライバ経由でサポートされており、サードパーティ製の支払いターミナル(電子マネー支払いの非接触読み取り装置やICチップ付きクレジットカードでPINコード入力が可能なカード読み取り装置)を組み合わせることで、POSまわりの実装で必要な要素はすべて補完できるようになるとみられる。

Windows 10 IoTでは「Windows Embedded POSready」という製品カテゴリはなくなり、すべて「Windows 10 IoT for industry devices」へと包含されるようになる。これまで別途サポートされていたリーダーやスキャナ装置のドライバはすべてWindows 10 IoTに標準で搭載されるようになり、新たにプリンタやキャッシュドロワーなどの装置のBluetooth接続をサポートする
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