Intelが「Thunderbolt 3」を発表――USB 3.1 Type-Cとの共存で延命へ【詳報】COMPUTEX TAIPEI 2015(2/3 ページ)

» 2015年06月03日 05時00分 公開

USBとコネクタを共通化しつつ、転送速度で差別化

 USB 3.1 Type-Cはその性質上、Thunderboltのお株を奪う規格とも言えるが、なぜThunderbolt 3のような規格が存在する余地があるのだろうか?

 その1つは転送速度の問題にある。USB 3.1にはGen 1(5Gbps)とGen 2(10Gbps)の2種類があるが、それでも最大で10Gbpsの転送速度だ。これは60Hzの4Kデータ転送にはやや厳しい転送帯域だと言われている。

 一方でThunderbolt 3は、コネクタこそUSB 3.1 Type-Cと共通化されているものの、規格そのものは独自で最大40Gbpsの転送速度を実現しており、Thunderbolt 2の最大20Gbpsから大幅な高速化を果たした。

 これなら、60Hzの4K映像をディスプレイ2枚に同時出力しても、まだUSB 3.1など別のプロトコルのデータを転送する余力がある。ケーブル1本ですべてを済ませるなら、用途にもよるが、本来は大容量転送が必要なわけで、その意味でThunderbolt 3は依然として必要とされる。

40GbpsというThunderbolt 3の転送速度は、USB 3.1 Gen 2の10Gbps、Thunderbolt 2の20Gbpsと比べても大幅に速く、これが複数プロトコルを包含したうえでさらに同時高速転送にも対応できる理由だ
60Hzの4K出力を同時に2画面で行うなど、現行規格では最も高速な部類に入る。そのため、Thunderbolt 3の出力線が1本でも、途中分岐させることでDisplayPort 1.2のディスプレイを2枚並べて4K出力が可能だ
Thunderbolt 3に60Hzの4Kディスプレイ2画面を接続して同時に表示したところ
ケーブルが接続されたノートPC左側面のThunderbolt 3は、USB 3.1 Type-Cと同じ形状のコネクタだ
分岐アダプタでDisplayPort 1.2を2画面出力している
Thunderbolt 3の40Gbpsの帯域でどこまで他のプロトコルを包含できるかの比較をまとめたもの。少なくとも、他のプロトコルを包含しつつ、60Hz 4Kを2画面分収容するにはこのクラスの帯域が必要だというのが分かる
転送帯域の広さを利用して、GPUを外部デバイスに搭載してThunderbolt 3経由で本体やディスプレイと接続するというソリューションも考えられる

 コネクタやケーブルをUSB 3.1 Type-Cと共通化したことも大きなポイントだ。見た目の形状はThunderbolt 3とUSB 3.1 Type-Cで共通なため、USB 3.1 Type-CのケーブルをThunderbolt 3対応のポートに装着すれば、そのままUSBポートとして利用できる。

 一方で、対向となる接続されたデバイスがThunderbolt 3に対応していた場合、接続はUSBのプロトコルではなくThunderbolt 3のプロトコルで行われ、USB 3.1がサポートする5〜10Gbpsの転送速度ではなく、Thunderbolt 3の「Passive」版と呼ばれる20Gbpsでの接続が確立される。

 さらに高速な転送速度が必要ならば、対向となるデバイスがともにThunderbolt 3に対応しているという条件で、Thunderbolt 3の「Active」版ケーブルを利用することにより、最大40Gbpsの接続が可能になる。このActive版ケーブルは、USB 3.1 Type-Cとは互換性がない。

 またThunderbolt 3には光ファイバーを用いたActive版ケーブルも用意され、こちらは最大60メートルでのデバイス間接続が可能だ(通常の銅線は最大2メートル)。2016年以降を目標に提供される。

Thunderbolt 3で興味深いのは、転送プロトコルそのものはThunderboltの特性をそのまま引き継いでいることだ。例えば、最大6台までのデイジーチェーンを行いつつ(つまり末端デバイスまでの中継器を5台挟む)、末端に変換器を通してUSBやDisplayPortのデバイスを接続しても、そのまま利用できる
前述のように、複数プロトコルを包含できるだけの転送容量があるため、単にディスプレイを接続するもよし、別のデバイスをさらにつないでデータ転送に用いるもよしと、PC側の配線を非常にシンプルにできる
この特性を利用したのがドッキングステーションだ。PCはステーションとケーブル1本(Thunderbolt 3)で接続するだけで、後はステーションにあらかじめ接続された周辺機器とすべてのやりとりを行いつつ、充電までもが可能になっている。特にノートPCやタブレットPCで効果を発揮するだろう
ドッキングステーションを利用して、PCに給電を行いつつ、すべてのデータ転送や周辺機器の接続をThunderbolt 3ケーブル1本で行うデモ展示。PC本体とドッキングステーションの間はケーブル1本しかなく、電源さえ接続されていないことに注目だ
こちらはSSDの内蔵ストレージだが、Thunderbolt 3ポートが2つとDisplayPortが内蔵されており、2台のPCからストレージの共有や外部ディスプレイ出力が可能な“ハブ”の役割を果たす。今後、Thunderbolt 3だけでなくUSB 3.1 Type-Cの採用が増えることで、この種のデバイスが大量に市場へ出回ることになるだろう
用意されるケーブル規格は3種類だ。「Passive 20Gbps Copper」は廉価版の規格に位置付けられ、これはいわゆるUSB 3.1 Type-Cのケーブルがそのまま流用できる。Thunderbolt 3の真価を発揮するのは「Active 40Gbps Copper」のケーブルを利用した場合で、さらに長距離の伝送を必要とする場合には来年以降登場の光ケーブルを使う
Thunderbolt 3ではイーサネットのプロトコルも包含可能なほか、単純にPC同士をP2P接続することでファイル共有を可能にしたりと、簡単にネットワークを構築できる。特にファイル交換の手順が煩雑なWindowsやMacといった異なるOS間でのデータ交換では重宝するだろう
P2P接続で2台のPC間でファイル共有を行っている様子。動画再生も問題がなく、内蔵ストレージのように気軽に利用できる

 つまりThunderbolt 3は、見た目がUSB 3.1 Type-Cと共通のポートやコネクタを採用しながら、対向するデバイス同士がThunderbolt 3に対応していた場合、ケーブルを専用のものに変更することで一気に転送速度を高速化できる。

 ただし、これでは紛らわしいため、Thunderbolt 3に対応したポートやケーブルには従来のThunderboltロゴが刻印される。ユーザーにとっては、これが目印になるだろう。また従来のThunderbolt周辺機器を使いたいユーザーには変換コネクタが用意されるので、これで資産をそのまま生かせる。

コネクタはUSBと共通化されたが、これまでの説明にあるようにThunderbolt 3はUSBとは異なる規格であり、その区別のためにポートやケーブルの対応デバイスに従来のThunderboltロゴが付与される
Thunderbolt 3のコネクタを従来のThunderbolt 2以前の規格のものに変換するコネクタ。これで従来から利用しているThunderbolt周辺機器が流用できる

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