Apple Watchにできることは31年前の腕コンと変わらない“ゼロハリ”竹村教授のつれづれスマートウォッチ(前編)(1/2 ページ)

» 2015年07月09日 14時30分 公開
[竹村譲ITmedia]

このまま埋もれてしまうには惜しい話があった

 ITmediaのコンシューマー向け媒体(PC USER、Mobile、LifeStyle、eBook USER、デジカメプラス、ヘルスケア)が主催した読者参加イベントを4月18日におこないましたが、そのトークセッションでは、ゲストとして登場した“ゼロハリ教授”こと竹村譲氏と“kei_1”こと鈴木啓一氏からApple Watchの登場で盛り上がっていたスマートウオッチの歴史や実機の数々、そして、竹村氏が携わった「WatchPad」の企画と開発のエピソードなどを解説していただきました(この内容は、鈴木啓一氏によるリポートでも紹介しています)。

4月18日に行った読者参加イベントでは、「レトロデジタルガジェット」がテーマだった。そのトークセッションでは、Apple Watchにつながるスマートウォッチの歴史について実機とともに紹介した

イベントのゲストとして登場した竹村譲氏(左)と鈴木啓一氏(右)

 イベントに先立ち、このトークセッションのストーリーや構成の打ち合わせを数度にわたって行いましたが、そのときにも、製品企画と開発の現場にいた視点と、数多くの製品を実際に“購入”して使ってきたユーザーの視点からみたデジタルガジェットに関する竹村氏の考えを聞かせてもらいました。

 このとき聞いた竹村氏の話は、このまま埋もれさせてしまうのは実に惜しいほどに興味深いものでした。そこで、竹村氏に改めて記事として再構成をお願いし、記事として掲載することになりました。今回掲載する前編では、スマートウォッチ“第一世代”の紹介と、「なぜスマートウォッチのブームは繰り返すのか」について考察しています。

 それでは、竹村さん、お願いします。

竹村氏は、日本アイ・ビー・エムで、DOS/VやThinkPadの企画やブランド戦略などを担当して、日本におけるモバイルPC業界を立ち上げてきた。同時に、書籍や雑誌、Web記事などでモバイルコンピューティングやデジタルガジェット、そして、文具や時計などなどの情報を「ゼロハリ」のペンネームで現在も積極的に発信している。NOMADという言葉が一般的になるはるか昔からモバイルコンピューティングを実践してきたROADWARRIORだ

できることはずっと前から変わらない

 2001年にLinux OSで動作する腕時計PC「WatchPad」の企画に参加して以来、腕や眼や体の一部に取り付けるガジェットとは10年間も無縁だった。

 しかし、2010年の秋、ソニー・エリクソンが海外で出荷していた“LiveView”を個人輸入で2台も購入してしまった。LiveViewは、ストラップを取り付ければ腕時計にもなる、わずか15グラムのデバイスだ。

LiveView

 その登場はAndroid Wearより4年も前だが、それでも、今のスマートウオッチとほとんど同じことができるAndroidスマートフォン対応のコンパニオンデバイスだった。いや、よ〜く考えてみたら、2014年に登場したAndroid Wear対応スマートウォッチにしろ2015年に登場したApple Watchにしろ、できることにLiveViewと大きな差はない。

 もっとも“できること”という観点で考えるならLiveViewですら、いまから17年も前の1998年に出荷したセイコーインスツル(SII)の腕時計コンピュータ「Raputer」と比べて大きく進化したと思えるような機能はない。

 ここで、話は国立科学博物館に飛ぶ。ここには、江戸時代のお伊勢参りに行く旅人が携えていた道具を展示している。それは「携帯用の日時計」だ。日時計なので、正しい方位を知るための「方位磁石」を組み込んでいる。方位磁石は山深い街道を歩く旅人に正しい方角も示してくれる。現代のスマートウォッチでいえば“コンパス”が付いているようなものだ。

 江戸時代の携帯日時計には、“モデル”によって「矢立」(ペン・スタイラス)や「算盤」(そろばん)などを搭載したマルチファンクションのガジェットもあった。現代のビジネスマンが“Office”搭載のノートPCやタブレット、スマートフォンを携帯して出張や旅行に行くのとなんら変わりはないようだ。

江戸時代の旅人が使った携帯用日時計。これに矢立とそろばんを組み込んでドキュメント作成と計算ができるようにした携帯道具もあったという

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