Windows 10スマホ/タブレットがUSBの進化でもっと便利に――Dual Role+Type-Cの仕組み鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(1/3 ページ)

» 2015年10月13日 00時00分 公開

Windows 10世代のUSBインタフェースは何が変わった?

 ご存じ「USB(Universal Serial Bus)」は、今日のデバイス間接続になくてはならない重要なインタフェース規格だ。Windows 98 SE(Second Edition)で初めて本格的にサポートされ、既に15年以上が経過している。その間にUSBの規格は拡張を続け、「Windows 10」の世代ではUSBにおける新しい概念として「USB Deal Role」が導入された。

 これは、従来「ホスト→デバイス(ペリフェラル)」という一方通行だったUSBデバイス間の関係を状況に応じて入れ替えることで、自身が「ホスト」にも「デバイス」にもなれる仕組みだ。

 以前も紹介したが、USBは「Type-A」と「Type-B」の主に2種類のコネクタ形状があり、これで「ホスト(Type-A)」と「デバイス(Type-B)」という関係が決まる。

 ただし、USBポートによってはどちらの種類のケーブルも挿入可能な「Type-AB」という両対応なものも存在する。これは一般に「USB OTG(On-The-Go)」と呼ばれ、主にスマートフォンやタブレットで採用例が多い。スマートフォンの場合、PCとの接続や充電時には「デバイス」として機能するが、外部ディスプレイへの出力やメモリカードなどデータの吸い出しには「ホスト」として利用する必要があるためだ。

 このように、役割に応じてホストとデバイスの機能が入れ替わる仕組みをUSB Dual Roleと呼ぶ。Windows 10、特にスマートフォン向けOSの「Windows 10 Mobile」では重要な概念だ。

 Microsoftは同OSをプリインストールしたスマートフォン「Lumia」の新モデルにおいて、「USB Type-C」ポートを標準搭載とするなど、USB Dual Roleの普及に重要な“地ならし”を進めており、今後数年内にWindowsを中心とした世界でUSB Dual RoleならびにUSB Type-Cの仕組みは非常に重要なものとなっていくだろう。

Lumia 950/Lumia 950 XL 米Microsoftが10月6日(現地時間)に発表した「Windows 10 Mobile」搭載スマートフォンの「Lumia 950」「Lumia 950 XL」は、インタフェースに「USB Type-C」を採用する。なぜ、USB Type-Cが必要なのかの鍵は、Windows 10 Mobileの新機能「Continuum for Phones」にある

 このUSBの新しい概念やType-Cについては本連載の過去記事やイベントリポートで解説しているので、興味のある方は是非一読いただきたい。本稿では、このUSB Dual RoleとUSB Type-Cを用いた「USB Power Delivery(PD)」で、近い将来にどのようなことが可能になるのかを紹介しよう。

なぜWindowsで「USB Dual Role」が重要なのか

 それではなぜUSB Dual RoleやUSB Type-Cが非常に重要なのだろうか。

 スマートフォンを外では持ち歩き、自宅や職場ではPCにつないで同期したり充電するだけという使い方なら、USB Dual Roleは必要ない。しかし、スマートフォンの役割は日に日に拡大しており、ときには外部のデータを吸い出したり、外部ディスプレイや特定の周辺機器にUSB経由で接続してスマートフォンから制御を行う場合など、PC的な使い方をする場面が増えている。

 ここで問題になるのが、「USBバスパワー」と呼ばれる通電の仕組みだ。USBバスパワーでは、USBケーブルを通じて5ボルト×500ミリアンペア=2.5ワットの給電を行い、接続されたデバイスを外部給電なしで駆動させることが可能だが、通常は「ホスト→デバイス」方向にしか電気を流すことができない。

 これの何が問題かというと、PCあるいはスマートフォンをPC的に動作させた場合、USBの役割としては「ホスト」で動作しているため、外部(この場合はデバイス側)からの給電を受けられなくなる。特にスマートフォンでは、外部の周辺機器と接続している間は充電できないことになるのだ。

 Windows 10 Mobileには、ディスプレイやキーボード/マウスをスマートフォンに接続することで、通常はスマートフォンの小さい画面で動作するUWP(Universal Windows Platform)アプリを、あたかもデスクトップPC上であるかのような大画面と操作感で利用できる「Continuum for Phones」という機能が用意されている。

 これら周辺機器がWi-FiやBluetoothを利用したワイヤレス接続であれば問題ないが、もしUSBポート経由での有線接続の場合、前述の理由から充電はできず(スマートフォンが「ホスト」になるため)、バッテリーを一方的に消費していく形となる。そこで出てくるのが、USB Dual RoleならびにUSB Type-Cというわけだ。

Continuum for Phones Windows 10 Mobile搭載スマートフォン「Lumia 950」「Lumia 950 XL」のUSB Type-Cを純正アクセサリの「Microsoft Display Dock」と接続することで、このドックを介して外部ディスプレイやキーボード/マウスが接続でき、Continuum for Phones機能によるデスクトップPC的な使い方が可能になる

 スマートフォンと並んで今後重要になるのが、「2in1タブレット」におけるUSB Dual RoleとUSB Type-Cの役割だ。

 2in1タブレットは、持ち運ぶときと、自宅や職場で使うときとで周辺機器の接続形態が大きく異なる。キーボードまたはドッキングステーションの着脱により、通電方向、つまりホストとデバイスの役割が入れ替わるのだ。この辺りの事情はスマートフォンに似ている。

 またスマートフォンと比べ、充電に必要なワット数がより高い傾向にあり、この場合は急速充電のためにUSB Type-Cと「USB PD」の仕組みが重要となる。「USB 3.1 Type-C」では複数のプロトコルやインタフェース通信を束ねることが可能なため、本体サイズの限られたタブレット製品では数少ない搭載ポート数で、複数の周辺機器接続や充電をこなせるというメリットがある。ちなみに、USB PD 2.0規格では最大100ワットまでの給電がUSB経由で可能だ。

 外部インタフェースとして「USB-C」(Appleはそう呼ぶ)を1つしか搭載しない新型「MacBook」には賛否両論があるが、今後はこうしたタブレットや小型ノートPC製品がWindowsでも増えてくると予想する。

USB Dual Role 2in1タブレットでは、USBにおけるデバイスの役割が変化する「USB Dual Role」機能が重要になる(IDF15の資料より)
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