USB Type-Cには、従来のUSBにある“向き”という概念が存在しない。これを応用すると面白いことが可能になる。USB Dual Roleの仕組みでは、USBで接続された2つの対向デバイスが「ホスト」と「デバイス」にもなることが可能だ。「USB OTG」では主に“ケーブルの向き”で両者の判別していたが、USB Type-Cにはそもそも“向き”が存在しないため、両者の関係は最初のネゴシエーションで決定される。
また、その役割も常に一定ではない。USB PDで電気を供給する側を「ソース(Source)」、電気を受け取る側を「シンク(Sink)」と呼ぶが、この役割は途中で入れ替えることができるのだ。
例えば、2台のノートPCをUSB Type-Cで接続すると、ネゴシエーションの後にUSB PDを通じて片方からもう片方への電気が供給される。仮にソースを「マシンA」、シンクを「マシンB」としておき、一定時間が経過してマシンAよりもマシンBのほうの残りバッテリー容量が大きくなったとする。この場合、再ネゴシエーションを経て電力的に余裕のあるマシンBからマシンAへと通電方向が反転することがある。つまり、ソースとシンクが入れ替わったというわけだ。
こうした状況が発生するかはケース・バイ・ケースだが、このようなDual Roleが可能になる必須条件としては、どちらのマシンともに「プロバイダ(Provider)」と「コンシューマー(Consumer)」の機能を持っていることが求められる。プロバイダはソースになることが可能な機能で、コンシューマーはシンクになることが可能な機能となる。例えば、USB PDを介して電源を供給するACアダプタは一般に「コンシューマー」にはなれないため、このようなDual Roleが発生することはない。
さらに興味深いのは、通常のUSB接続では一意に決まっていた「ホスト→デバイス」の関係と通電方向が、USB Type-Cでは異なっていても問題ないということだ。
Dual RoleではUSB接続された2つのデバイスの間で「ホスト」と「デバイス」の関係が入れ替わり、データの流れる方向が変化することがある。この際、ホストとデバイスの関係は変化しても、通電方向がそのままの状態で維持されるケースもあり得る。PC側はホストとして周辺機器を制御しつつ、同じUSBケーブル(Type-C)を介して外部から給電を受けることも可能というわけだ。
これは、Windows 10 MobileでContinuum for Phonesを使った場合、周辺機器と接続しながら、同時にスマートフォン本体も充電が可能になるメリットがある。これがスマートフォンやタブレットにおけるUSB Type-C採用の重要なポイントだ。
恐らく今後市場にリリースされるLumiaデバイスの多くでUSB Type-Cが採用されるほか、Surfaceなど他のハードウェア製品においても順次採用が進んでいくと思われる。
コネクタ形状が変化し、さらに混在状態にあるとき、われわれユーザーはデメリットを被ることが多いが、USB Type-Cに関しては今後さらに便利な環境を手にするうえで重要な変化の途上にあると考えている。
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