「どうしてこうなった……」という製品がロングセラーになる理由牧ノブユキの「ワークアラウンド」(1/2 ページ)

» 2015年12月15日 15時00分 公開
[牧ノブユキITmedia]

独創的なApple純正バッテリー内蔵ケースが話題だが……

Smart Battery Case ユニークな形状が話題となったiPhone 6/6s用のバッテリー内蔵ケース「Smart Battery Case」

 Appleが発売した、形状があまりにも「独創的な」iPhone 6/6s用のバッテリー内蔵ケース「Smart Battery Case」が話題だ。通常のiPhoneケースとバッテリーを二層重ねにしたその構造は、両者の表面積が異なることから大きな段差があり、Appleらしいスマートさとは懸け離れているのではないかと、発売直後からネットで議論を巻き起こした。

 中にはこの形状を美しいと見なす人もいるだろうが、ここまで全世界的にデザインが話題になる製品もあまり例がなく、なぜこのような外観になったのかをいぶかる声は多い。ある海外の情報サイトでは、ケース一体型のモバイルバッテリーは既にさまざまな形状が意匠登録されており、たとえ純正メーカーといえども同一形状の製品を後発で投入するのは難しかったのではないか、という説を唱えているほどだ。

 こうした推測が正しいかどうかは明らかではない。また、実機をレビューするわけではないので、本稿で同製品のよしあしを論じるつもりはない(参考:ITmedia ヘルスケアのレビューはこちら)。ただ、デザインがどうであれ、基本的にメーカーは「売れれば正義」であり、Appleも何らかの勝算があってリリースに踏み切ったのだろう。

 もちろん、Appleだから目立っただけであって、世の中には一目見て疑問符がつくような製品があふれている。今回は特にPC周辺機器やアクセサリ業界でまれに見られる、どう見ても売れるとは思えないのに存続している製品について、いかなる理由で延命できているのかを見ていくことにしよう。

純正品を信奉するユーザーは想像以上に多い

 かつては「純正品=高価だが信頼性が高い、サードパーティー製品はその逆」というのは1つの定説だった。

 特にPC周辺機器については、本体メーカーが仕様を公開していないにもかかわらず、サードパーティーが独自調査をもとに互換製品を製造することも多く、本体側の機器がモデルチェンジすると全く動作しないことも珍しくなかった。それゆえ多少高価でも、純正品を好んで選ぶユーザーは少なくなかった。本体メーカーにとっても、サードパーティー製品は自分たちの上前をはねていく、コバンザメのような存在でしかなかった。

 しかし今では、サードパーティー製品の多さは、それだけユーザーにとって選択肢があるとみなされ、本体の価値を向上させることから、本体メーカーにも歓迎されるようになっている。

 本体メーカーもサードパーティーへの情報提供を惜しまなくなり、その結果として、製品の品質もかつてに比べると格段に向上した。中には粗悪な品が混じっている場合もあるが、割合はかつてほど多くはなく、またユーザー同士がネットで情報交換をするご時世、問題のある製品はあっという間に駆逐されるため、大きな問題にはなりにくい。

 とはいえ、やはり根強い純正品信奉を持つユーザーは一定数は存在する。Appleのようにブランド化している製品だけでなく、例えば電子辞書を買ったらそのケースも純正品を買うといった具合に、本体の動作に影響を及ぼさないアクセサリ類に関しても、純正品を選ぶユーザーは多い。本体ときちんと組み合わせられるか不安だから、安牌を取る形で割高な純正品を選択するわけだ。

 こうした現象は、PCに詳しいユーザーからすると滑稽にも見えるが、自分が普段あまり使っておらず、知見があまりないジャンルの製品を購入する際は、PCに詳しいユーザーも同じようなことをやっていたりするものだ。純正品に一本化しておけば、何か不具合があった場合に問い合わせる窓口も共通だし、同じ組み合わせで使っているユーザーも多いと考えられるため、問題が起こっても原因の追求がしやすいという利点もある。

 といった具合に、同じメーカーが作っている安心感や動作保証を重視して、あえて割高な純正品を選ぶケースは、サードパーティー製品に慣れ親しんだユーザーが想像するよりもはるかに多い。そうした意味では、冒頭のバッテリー内蔵ケースも、たとえデザインがどうであれ、純正品を信奉するユーザーの間では、少なからぬニーズがあることだろう。

「純正品信奉」を逆手に取って拡販するサードパーティー

 ところで、こうしたユーザーの「純正品信奉」を逆手に取った売り方は幾つもある。身近なところでは、サードパーティーがなるべく本体メーカーと似せたパッケージを用意するのもその1つだ。

 例えばApple製品と組み合わせて使うサードパーティーの周辺機器は、そのほとんどが白を基調としたパッケージであり、そのサードパーティーが普段使っているメーカーのド派手なイメージカラーが、Appleの周辺機器に限っては採用されないこともしばしばだ。

 さすがにメーカーロゴまでそっくりにするわけにはいかないので、店頭で見比べると見分けは容易なのだが、それでも一定の割合のユーザーは純正品か、あるいは本体メーカーのお墨付きが得られている製品だと信じ込んで買っていく。少なくとも、本体と同系列のカラーリングをパッケージに採用することで、同じ売場に陳列しやすくなり、結果としてAppleファンの目に留まりやすくなっているというわけだ。

 さらに上手を行くのが、本体メーカーの推奨製品として、本体メーカーの販売ルートに流通させる方法だ。自社のブランドをあまり出さないか完全に捨てることで、本体メーカーの販売ルートに一括で流通させられるうえ、本体メーカーお墨付きとあってユーザーの信頼も得ることができ、効果は絶大と言える。中抜きによって利益率は低くなるうえ、契約期間中は品切れなどが許されないため、体力のあるメーカーでないと無理な話だが、自社のブランドにこだわらなければ、有効な方法だ。

 本体メーカーにとっても、こうしたサードパーティー製品を取り込むことでラインアップを豊富に見せることができ、加えてサードパーティーから協賛金を得ることができるので、なかなかオイシイ話だったりする。周辺機器やアクセサリを販売して得られる利益よりも、実はサードパーティーからの協賛金のほうが額面では大きかったりと、なかなかしゃれがきつい状況になったりもする。

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