言うだけ無駄? こんな要望はメーカーに採用されない牧ノブユキの「ワークアラウンド」(1/2 ページ)

» 2016年03月16日 06時00分 公開
[牧ノブユキITmedia]

こんな要望はメーカーに言ってもムダ?

骨折損?

 前回は、メーカーに対する効果的な意見要望の上げ方について考察した。PCやスマートフォン、周辺機器などの製品に対する意見や要望をメーカーに伝える際、その表現や伝達ツールの選び方が間違っていると、伝わるものも伝わらなくなってしまうからだ。

 もっとも、どれだけ適切に伝えたとしても、メーカーに全く相手にしてもらえない要望や、言っても無駄な要望というのは存在する。今回はそれらのタイプと、具体的な理由について説明しよう。

古いOSへの対応

 最初に挙げられるのは「古いOSに対応してほしい」という要望だ。現在であればWindows 7以前のWindows OSに対応してほしいとか、Android 4.x系列に対応してほしいといった要望は、レビューサイトや口コミサイトでもよく見られる。

 しかし、これははっきり言って無駄である。既にユーザーが減りつつあるOSバージョンは、よほどのシェアを持っていない限りサポートすることはなく、またその場合もどの範囲までサポートするかは製品の発売時点で決まっており、後から追加されることはあり得ない。

 またこれが自社製品ではなく、外部からの取り売り製品であれば、なおのこと確率は低くなる。というのもこの場合、費用を払ってプログラムの作成を外部に発注しなくてはいけないからだ。そもそも開発費をかけたくないがゆえに外部から完成品の状態で買っているわけで、そこに追加で外注費を払うことなど、まず考えられない。要望を上げるのも無駄なら、要望を読まされるほうも時間の無駄なので、さっさと諦めるべきである。

Mac対応

 「Macに対応してほしい」という要望も“言うだけムダ”な意見の代表例である。誤解されると困るが、決してMac対応が不要と言っているわけではない。メーカーの対応は基本的に以下の3つに分かれるため、ユーザーが意見を言おうがメーカーの方針に影響を与えないという意味である。

  1. Macに対応することは既に決まっているが、ドライバのリリース(もしくは動作確認)だけが遅れている場合
  2. Macに対応しても売上が伸びないことが過去のデータかは明らかであり、メーカー自体が開発を止めている場合
  3. そもそも技術的にMac対応が困難である場合

 1は、リリースのスケジュールまで決まっていることがほとんどなので、要望を上げたところで大勢に影響を与えない。「声が大きければ、優先順位が繰り上げるかもしれないじゃないか」と考える人もいるかもしれないが、Macの動作確認や検証はそれ専門の部隊が行っていることが多いため、「要望が多いから現在やっている別OSの検証を中断してMacを繰り上げよう」ということにはまずならない。

 2は、過去にユーザーからの要望を受けてMacに対応したのにコストを回収できなかったという明確な事例がメーカーにあるならば、要望を上げただけでそれをひっくり返すのは難しい。少なくとも前回と今回がどう違うのかを立証しなくてはいけないし、その前回の具体的な実績が示されていない以上、社外のユーザーがそれを提示することはまず無理だ。どうしてもMac向けに出したいという担当者が社内にいて、前回とは違うという裏付けを用意できて、初めて企画会議に提出できるレベルで、可能性は極めて低い。

 3は、メーカーも対応したいと考えていて、ユーザーもそれを望んでいるものの、技術的な理由で不可能というパターンであり、繰り返し要望を上げたところで効果はない。かえって現実性に乏しい要求をしてくる口うるさいユーザーというイメージを持たれてしまうだけなので、技術的に不可能であることが確認できれば、それ以上は深追いしないほうがよい。

iOSとAndroid対応

 今はスマホ対応と言えば、iOSとAndroid向けにアプリを出すものと相場が決まっている。それゆえ、このどちらかが対応から外れているようであれば、何らかの事情があると見るのが得策だ。前述のMac対応などと同じく、単にリリースが遅れているだけの可能性も高い。

 ゆえにわざわざ「iOS版はまだですか」「Android版はまだですか」と声を上げたところであまり意味はなく、そればかりかリリースを急かされた開発側によってβ版クオリティのアプリが公開されてユーザーのほうが不利益を被る原因になりかねないので、ここはじっくりと待ったほうがよいだろう。特にiOS版については、ストア側の審査もあり、メーカー側ではリリース時期がコントロールしにくい。焦らずにじっくり待つべきだ。

 ただし、同じスマホOSでも、ニーズが読みにくいことからメーカー側が対応を決めかねているプラットフォーム、例えば現在だとWindows 10 Mobileなどは、どんどん要望を上げたほうがよい。そのほうがメーカーとしてもユーザーの声という裏付けができて動きやすくなるからだ。つまりニーズがあることが明確に分かっている場合と、そうでない場合とでは、要望の効果も全く変わってくるわけだ。

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