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» 2016年04月24日 06時00分 UPDATE

牧ノブユキの「ワークアラウンド」:PC周辺機器界に「ペヨング」は生まれない? (1/2)

「ペヨング」のような特売を意識したブランドは多くの業界に存在するが、PC周辺機器業界では、量販店で特売に使われるという意味では同様ながら、明らかな格落ち製品となるケースがしばしばだ。その理由について見ていこう。

[牧ノブユキ,ITmedia]
ペヨング まるか食品の「ペヨング」

 まるか食品から「ペヨング」なるカップ焼きそばが発売されて話題になっている。同じ製造元によるカップ焼きそば「ペヤング」と見た目はほぼ同一でありながら、めんの量が若干少ないなどの差異があり、そのぶん実売価格が安く設定されていることが特徴だ。

 なぜわざわざ名称も含めて偽物っぽい製品を、同一メーカーが発売するのか。その理由はずばり、スーパーなどでの特売対策や、ドラッグストアなど安価な製品を求める販路に対する商材という位置付けだ。

 普通に考えると、ラインアップを1つに絞って大量生産した方がコストを下げられるように思えるし、実際その通りであることが多いのだが、ビジネス上はこのような複数のラインアップを用意しておくことはさまざまなメリットがあり、これはPC周辺機器やアクセサリーの業界でも同様だ。

 もっとも「特売用の品」というくくりは同じだが、そのコンセプトは全く異なっており、明らかな格落ちとなるケースもしばしばみられる。今回はこうした「メーカーの特売用ブランド」について見ていこう。

特売専用の製品を投入することで定番品の価値を守る

 一般的に、量販店で売られる製品は「定番品」と「特売品」の2通りに分けられる。定番品は通常の棚に、特売品はそれ以外の場所、特売用のワゴンのほか、俗に「エンド」と呼ばれる通路に面した棚に山積みで陳列されるのが常だ。

 こうした特売品は、定番品と同一の品が(一時的に価格を下げて)投入されることもあるが、実はこれはメーカーにとってはあまり好ましいことではない。というのも、特売に合わせて価格を下げると、店頭にある定番品の在庫分も価格を下げなくてはならず、在庫数を調べてそのぶんの値引伝票を入れなくてはいけなかったりと、煩雑な処理が発生するからだ。

 この補填(ほてん)処理は、店頭に並んでいる在庫に対してだけでなく、店のバックヤードにある在庫にも当然のように発生するので、100個や200個といった大量のストックがあると、特売で得られる利益のほとんどが食い尽くされてしまいかねない。もともと特売セールでは利益はスズメの涙であることも珍しくないが、店舗在庫があまりにも多いと、セール期間中に限れば赤字になるケースも少なくなかったりする。

 最近はPOSの発達で、在庫分ではなく販売数に対して補填を入れるケースも増えており、この問題は徐々に解消しつつあるが、同一製品で2種類の納入価格が存在することは、なにかとトラブルを招きやすい。例えば返品が発生した際、特売分とみられるにもかかわらず店側が通常価格とみなして赤伝票を切り、メーカーが泣き寝入りせざるを得ないといったパターンがその典型例だ。

 さらに、これが一番のネックなのだが、定番品の値下げを頻繁に行っていると、いつしか特売での価格が当たり前という風潮が生まれてしまう。最近ではファストフード店の「全品○○円セール」などでよく見られる光景だが、製品の価値そのものが下がってしまい、客が通常価格では買わなくなってしまうのだ。こうなるともう取り返しがつかない。

 そもそも、定番品を値引いて特売用に回すのは、長期的に見てメーカーにメリットはあまりない。ではなぜやっているかというと量販店がそれを要求するからで、もし要求を飲まなければ競合他社の参入を許し、定番品の枠を奪われかねないので、メーカーとしても対応せざるを得ないのだ。こうした状況でしぶしぶやっているにもかかわらず、特売が常態化して定番品が売れなくなってしまっては元も子もない。

 ここで浮上してくるのが、定番品とは別に特売用の製品を用意しておき、特売のときはそれを投入するというワザである。普段から店に在庫があるわけではないので値引きや補填はもちろん発生せず、返品が発生した際の単価も明白なので、伝票上のやりとりもシンプルになる。

 今回のペヨングのように、内容量を減らすなどして原価を下げるのがセオリーだが、こうした取引上のメリットが生まれるのであれば、実は原価は同程度でも、メーカーにとってはメリットは十分にある。

特売用ブランドが必要とされる2つの理由

 もっとも、こうした「特売用ブランド」についてはリスクもある。その1つが、定番品との間で共食いが起こりかねないことだ。よく似た製品と2種類が店頭に並んでいて、一方が明らかに安ければ、ユーザーがそちらに流れる懸念は当然のように発生する。

 しかしこれについては、大きく分けて2つの理由で、多くの業界では特売用ブランドは合理的という風潮になりつつある。

 1つは、定番品と特売用で役割を明確に分けるこの仕組みでは、特売品に食われて一時的に定番品の売上が減っても、特売品がなくなればすぐに売上が復活するのである。同じ製品を定番と特売で共用しているのと違って、どれだけ待っても安くなることはないので、客の側も諦めがつきやすいからだろう。

 もう1つは、ドラッグストアやディスカウントストアなど、低価格製品を定番として展開するチェーン店の台頭だ。こうした安売りチェーンの価格帯に合わせて定番品を安くしていると、近隣のスーパーとの売価に差がつき、取引上も摩擦が発生する。

 そのため、こうしたドラッグストアやディスカウントストアに対しては、スーパーで特売用に扱っている製品をこちらでは定番品として展開することで、両者のメンツを立てつつ、メーカーとしても利益を確保するのである。これは特売用ブランドがなければできないワザであり、販路を広げるためには欠かせないというわけだ。

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