「これまでなかった新発想の製品」をライバルメーカーはなぜ軽視するのか?牧ノブユキの「ワークアラウンド」(1/2 ページ)

» 2016年06月26日 06時00分 公開
[牧ノブユキITmedia]
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 「これまでなかった新発想」などと華々しいうたい文句で登場する製品がある。今ではすっかり当たり前になったUSB扇風機も当初はそうだったし、キャラクターを模したUSBメモリもその発想のユニークさがさまざまなメディアで取り上げられたものだ。

 最近では、ディスプレイの上部に取り付けて小物を置けるテーブルや、左手専用のトラックボールなどが、PC周辺機器のニュースとしてはちょっとした話題になったことを覚えている人もいるだろう。

 しかしこうした“これまでなかった”新製品について、ライバルメーカーは意外なほどさめた目で見ていることが多い。大手メーカーになるとその傾向はさらに顕著で、慌てて競合製品を投入することはほぼ皆無と言っていい。これは決して製品化するための技術力や企画力がないわけではなく、確固とした理由が存在している。今回はそれらの内幕に迫ってみよう。

それは、他社が製品化しなかっただけ?

 これまで見たことがない新機軸の製品が登場すると、マスコミやメディアは「画期的」「アイデアが面白い」といった具合に、称賛の声を送る。今まで目にしたことがなかった製品が形となって目の前に現れたわけだから、そのように表現したくなるのはもっともだ。

 しかしライバルメーカーの視点は、こうしたマスコミやメディアとは随分異なっている。というのも、こうした新機軸の製品は、自社でも過去にアイデアとして挙がっていたものがほとんどだからだ。もちろん「なるほどそんな発想があったのか」と誰もが地団駄(じだんだ)を踏む製品が全くないわけではないが、それはほんの一握りでしかない。

 大抵は「あー、誰々さんが企画書出してたのとそっくりだね」とか「打ち合わせで冗談で言ってた例のアレ、他社さんがホントに出しちゃったよ」とさめた目で見ているものなのだ。

 「そんな都合よく、別のメーカーでそっくりのアイデアが浮かぶのはあり得ないのでは?」と思うかもしれないが、そもそも製品のアイデアというのは、他業界でヒットした製品をヒントにしたり、技術の進歩によってこれまで不可能だったことが可能になったのがきっかけだったりと、トリガーとなる部分は大抵同じだ。それゆえ、ポッと出の小規模メーカーが思い付く程度のアイデアは、大手メーカーであれば社内の開発担当や企画担当など、誰かが既に話題にしていることがほとんどだったりする。

 彼らの中に「うわっ、先を越された」という焦りは全くない。そればかりか「製品化しちゃって大丈夫なのか?」という目で見ていることもしばしばだ。というのも、先に思い付いたにもかかわらず企画段階で中止に至った製品は、何らかの問題があって製品化が見送られたケースがほとんどだからだ。

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