新世代ミドルレンジGPU「Radeon RX 480」の性能をチェック競合最新GPUとの比較も(1/3 ページ)

» 2016年06月29日 22時23分 公開
[石川ひさよしITmedia]

→関連記事:Polarisの狙いは?:AMDの最新GPU「Radeon RX 480」まとめ

AMDのGPUも14nm FinFET世代に突入

 さて、ようやくPolaris世代のGPUが登場したわけだが、ここでRadeon RX 480のポジションを把握しておこう。Radeon RX 480が、発表当時で199〜250ドルという価格を提示した通り、ミドルレンジを狙った製品である。

 現在のところNVIDIAのGeForce GTX 1080/1070はハイエンドセグメントにあたるので直接は競合しない。エンスージアスト向けを最後に取っておくことは両者共通として、新世代GPUのリリースに関し、AMDはミドルレンジから、NVIDIAはハイエンドからと選択を分けたことになる。


 それではRadeon RX 480の仕様を確認しておこう。

製品名 Radeon RX480 Radeon R9 380X Radeon R9 390X
コードネーム Polaris 10 Tonga Hawaii
GCN Units 36 32 44
ストリームプロセッサ数 2304 2048 2816
テクスチャユニット 144 128 176
ROPユニット 32 32 64
GPUクロック(MHz) 1120 N/A N/A
最大GPUクロック(MHz) 1266 970 1050
メモリ(Gbps) 8 5.7 6
メモリクロック(GHz) 2000 1425 1500
メモリタイプ GDDR5 GDDR5 GDDR5
メモリ接続バス幅(bit) 256 256 512
メモリ帯域幅(GB/sec) 224 182.4 384
メモリ容量(MB) 4096/8192 4096 8192
Board Power(W) 150 190 275
補助電源レイアウト 6 6+6 6+8
プロセス 14nm FinFET 28nm 28nm

 まず、前世代との大きな違いが製造プロセスだ。AMDが採用したのはGlobal Foundriesの14nm FinFETプロセス。先代の28nmプロセスから微細化が進んだ。半導体プロセスにおいて、微細化が進めば、単位面積あたりのトランジスタ数を増やすことができ、あるいは消費電力や動作クロックの引き上げといった点でメリットが生まれる。

Radeon RX 480のダイ画像

 Radeon RX 480のGCNユニット数は36基、ストリームプロセッサ数は2304基となった。同じセグメントで比較をすると、Radeon R9 380XからはGCNユニット数が4基、ストリームプロセッサ数は256基増加している。あわせてテクスチャユニットも16基増加しているので、このあたりでパフォーマンスの向上が予想できる。

 また、Radeon RX 480のGPUクロックは、定格が1120MHz、最大クロックが1266MHzとされている。従来モデルでは最大クロックのみ表記されるのが通例だったため、これで比較をすると、Radeon R9 380Xから296MHzほど引き上げられた格好だ。

 ライバルのNVIDIAがGeForce GTX 980→1080でも大きく動作クロックを引き上げてきたが、Radeon RX 480もそこまでではないにせよクロックを引き上げた。ミドルレンジ〜ハイエンド製品における、14/16nmプロセス世代の一つの特徴になりそうだ。

 メモリバス幅が256bitに抑えられている点ではRadeon R9 380Xと同じだ。GDDR5という点でも同じである。ただし、8Gbps品を採用しているので、5.7GbpsだったRadeon R9 380Xよりも帯域を向上させている。また、メモリ容量は8GB/4GBモデルがラインアップされる。4GBのみだったRadeon R9 380Xと比べ、高解像度、高品質テクスチャ使用時のパフォーマンスが向上しているものと考えられる。

 最後が消費電力と補助電源コネクタのレイアウト。Radeon RX 480のBoard Powerとして示された値は150Wだ。これはRadeon R9 380Xの190Wからは40W引き下げられている。補助電源コネクタも6ピン2基だったRadeon R9 380Xから1基削減された。

 さて、このようにパフォーマンスに関しては、ストリームプロセッサを増やし、より高クロックとなり、メモリ容量・メモリクロックも向上し、その上で省電力というのがRadeon RX 480の特徴である。

 ただし、これはRadeon R9 380Xに対しての比較だ。一つ上のセグメントであるRadeon R9 390Xと比較すると、GPUとメモリはより高クロックだが、ストリームプロセッサ数やテクスチャユニット、ROPユニットなどの数ではまだまだ差がある。

 アーキテクチャ面で、シェーダー効率の向上やジオメトリ演算性能の向上を掲げている。メモリも高クロックであるが、バス幅が半分なので、帯域幅ではまだRadeon R9 390Xには及ばない。ただし、Polarisではメモリ圧縮技術が向上しているという。そのメモリ圧縮によってどこまでメモリの実効効率が向上するのかがポイントになるだろう。

GPU-Zから見たRadeon RX 480。なお、3DMark/Fire Strike/Ultra実行中の最大クロックは1261MHzだった。表記上の1266MHzから5MHz低いが、個体の問題なのか検証状態による問題なのか切り分けができなかった。また、室温27度時の検証でのGPU温度はアイドル時で36度、3DMark時で最大83度だった。熱を持ちやすいRadeonの傾向は変わらない印象だ

 ここからはリファレンスデザインカードの特徴を見ていこう。まずクーラーの構造は、後部にブロワーファンを搭載するRadeon Rシリーズで馴染みのあるものを採用している。ただし基板自体は一回り小さいため、これまで見てきた中では、例えばGeForce GTX 960のリファレンスデザインカードに近い。

Radeon RX 480のリファレンスデザインカード

後部にブロワーファンを搭載するリファレンスカードの伝統デザイン

クーラーよりも基板が小さく、ファンは裏面からも吸気ができる

 映像出力端子は、DisplayPort×3、HDMI×1のレイアウトだ。DisplayPortはバージョン1.4、HDMIは記載がないが、おそらくはバージョン2.0対応だろう。端子は1列に収まっており、その上には小さなスリット、2段目には通常のスリットがあり、排気効率はよさそうだ。ただし、そのぶん、ベンチマーク中はブラケット部がかなり高温になった。

映像出力端子はDisplayPort×3にHDMI×1。スリットが大きく空いている

 補助電源コネクタは、カード上部の中央からやや後方、基板部の端にある。リファレンスカードなので6ピン1基だが、オリジナルクーラーモデル登場時にはまたレイアウトが変わることもあるだろう。ただ、6ピン1基でよいのは手軽だ。

補助電源コネクタは基板のサイズに合わせて後部よりやや中央寄りに6ピン1基を置く

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