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» 2016年11月05日 06時00分 UPDATE

牧ノブユキの「ワークアラウンド」:なんだか質が落ちてない? サポート窓口の向こう側で起きていること (1/2)

メーカーにとってサポート部門は重要だがコストが掛かる。コスト削減のため、さまざまな対策が取られるが、ユーザー視点では疑問符が付くようなことも少なくない。

[牧ノブユキ,ITmedia]
workaround

 購入した製品について分からないことがあって、メーカーのサポート窓口に電話をしたことがある方は少なくないはずだ。こんな経験はないだろうか。

 国内販売の製品について電話したところ、電話で応対してくれたのは外国人と思しき、たどたどしい日本語の担当者。実際の受け答えそのものには問題がなく、製品に関する疑問はきちんと解決できたが、予想とは異なる応対に慌ててしまう。

 面食らったのもつかの間、後日同じメーカーの別製品について問い合わせをしたところ、今度は明らかにネイティブらしき日本人が電話口に出た……こんな事態に遭遇すると、裏で一体何が起こっているのか、不思議に思ってしまうに違いない。

 幅広い製品を取り扱っているメーカーの場合、製品のカテゴリー、および電話をかけた時期などによって、こうしたケースが往々にして起こりがちだ。今回はこうした、メーカーのサポート部門の裏側について見ていこう。

サポート部門はコスト食い

 メーカーにとってサポート部門は、顧客満足度を向上させるのに欠かせない存在である一方、コスト面での負担が大きい部門でもある。

 なにせ製品の出荷数が増えてユーザーの数が多くなると、それだけ問い合わせは増え、その対応に必要なサポート部門の人員を増やさざるを得なくなるからだ。

 取引先の訪問頻度を減らすことで人員減を一時的にしのげる営業部門に比べ、1日の工数が決まっているサポート部門はそれだけ人員が削減しにくく、いざ会社を挙げて人件費を削減しようとした際も手がつけにくい存在である。

 それだけ多くの人員が必要なのであれば、取りあえずOJTを兼ねて新卒社員をあてがっておけばよい……という人もいるが、残念ながら話はそう簡単ではない。

 というのも、最低限の応対マニュアルは用意されているにせよ、サポート部門にはそれらを自信を持って説明するための予備知識に加えて、客ときちんとキャッチボールするためのコミュニケーション能力、およびビジネスマナーが必要とされるからだ。新卒の社員がこれらをOJTで身につけるというのは、なかなか難しい。

 またサポート部門自体、おかしな客の対応などで心身をすり減らすのは日常茶飯事であり、どの会社も離職率はかなり高い水準にある。豊富な製品知識とコミュニケーション能力を持った精鋭スタッフを投入したとして、数週間後にはいなくなっていました……では会社にとっても大きな損失だし、期待されて入社した新卒社員でもこれは同じことだ。

 かつては、他部署から「使えない」と烙印(らくいん)を押され、いつ辞められても構わない社員をわざとサポート部門に転籍させる企業というのも少なからず存在したが(今もあるかもしれない)、コミュニケーション能力不足により応対がこじれて客を怒らせるトラブルに発展しがちだ。

 当初の問い合わせ内容とは関係ないところで上司が頭を下げる羽目になったという逸話は、そのスケールの大小の違いはあるものの、どのメーカーでも1つや2つは伝説として語り継がれているものである。

サポート部門を丸ごとアウトソージング

 と、ここまで見てきたのはあくまでもサポート部門を自社で持っているメーカーの話である。

 実は最近、といっても既に登場してから四半世紀になるのだが、サポート部門は多くのメーカーでアウトソース化されつつある。企業向けにアウトソージングサービスを提供している専門業者にサポート業務を丸投げし、自分たちは応対マニュアルの作成など彼らを支援する立場に回る……というわけだ。

 大ざっぱなシステムを説明しておくと、専門業者はサポート電話を受けるスタッフ(人数は規模によって異なる)、およびそれらを統括するマネジャー、さらにメーカーとの窓口にあたる担当者でチームを編成。メーカー側から応対マニュアルの提供を受けて、ユーザーからの問い合わせに対してサポートを行う。

 窓口ではメーカーを名乗っているが、実際にはその専門業者のコールセンターに電話やメールは転送されているわけである。

 もっともIT系の製品では、新しいOSが登場すれば対応の可否についての問い合わせが増え、本体機器の仕様変更があればそれに関連した問い合わせが増えるなど、問い合わせの内容は常に変化する。

 こうしたケースに臨機応変に対応するため、専門業者とメーカーは常に応対マニュアルのアップデートを行うとともに、メーカーはCRM(顧客管理システム)を通じて寄せられた問い合わせの内容をオンラインで参照し、適切な回答例を専門業者に指示する。

 今やこうした仕組みは、一定規模以上のメーカーのほとんどが導入している。これにより、メーカー社内のサポート部門の人員は、専門業者に対してディレクションを行う限られた人数だけで済むようになり、自前でサポート部門を持つのに比べて、人件費は大幅な削減が可能になった。

 その反面、応対マニュアルを作成するための人員を、サポート部門ではなく開発部門が持たなくてはいけなくなったが、全社的に見るとそれに要する人件費は微々たるものである。

 ちなみにこれら専門業者の料金体系は、その多くが処理件数ベースであり、これに電話回線の占有率、1件あたりの所要時間などを考慮し、基本料金が設定されている。

 あまりにも問い合わせが多く、回線が完全にふさがる状態が続けば、専門業者からメーカーに対して回線数および人員の増加と、それに伴う料金増が提案され、メーカーがそれを受け入れれば回線の混雑は少なくなるし、メーカーがそんな予算はないと突っ張ると回線がふさがった状態がその後も続くというわけである。

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