結論から言おう。半分はYes、半分はNoだ。
VR Oneは2つのバッテリーパックを搭載している。このバッテリーはホットスワップに対応している。つまり片方のバッテリーが刺さっていればもう片方を外し、満充電した別のバッテリーパックを刺す、といった運用でVR Oneの電源を落とさずにバッテリーの交換が可能だ。
この点で、まず電源というケーブルから解き放たれている。
次にVR OneとHTC Viveの接続だ。VR Oneの上部に固められたポートの並びは、HTC Viveから伸びる電源・HDMI・USBの3つの端子をそのまま接続できるようになっている。
これによってHTC ViveはVR Oneから電源の供給も受けられるため、ACアダプターをつなぐ必要がない。当然、初めに挙げた「ケーブル問題」は解消される。
ここまで読むと、「もうVR OneとHTC Viveだけで動くじゃないか」と思われるかもしれない。私もそう思った。だが、いざ触ってみるとこの2つだけで完結しない場合があることがすぐに分かった。――セットアップである。
VR Oneの起動からログイン、HTC Viveのセットアップにはこれらの他にディスプレイ・キーボード・マウスが必要不可欠となる。
キーボードとマウスはBluetooth、ディスプレイはワイヤレスディスプレイレシーバーやリモートデスクトップを使用すればこれらのワイヤレス化は不可能ではない。しかしVRを楽しむ上で本来不要なものをインストールすると、何か問題が起きた時に原因の切り分けが面倒になる。やはりこの点は割り切って有線接続した方が無難だろう。
もう1つ「解き放たれていない」のは、HTC Viveでの活動範囲だ。HTC Viveはユーザーの現実での位置情報をVR空間に反映するのが特長だが、そのためには部屋の隅などに「ベースステーション」という位置トラッキング用のデバイスを2つ設置する必要がある。
2つのベースステーションの距離は最大で5mとされ、この範囲からヘッドセットが出るとトラッキングできなくなり、Viveのディスプレイには何も映らなくなってしまう。
HTC Viveのヘッドセットにはカメラが内蔵されており、ヘッドセットを被っていても現実の室内の様子を眼前に映し出して確認することができる。
「カメラ機能を使えば、この格好で街を歩き回ることができるのでは」というのが先ほどから記事中に現れる、外でVR OneとHTC Viveを使用しているイメージ画像だ。
実際には、ベースステーションを設置したスタジオから一歩出た瞬間目の前がまっしろになった。ケーブルの呪縛からは解放されても、HTC Viveの仕様の限界が立ちはだかった形だ。
もっとも、HTC Viveは屋内での使用を前提としているし、ヘッドセットを付けたまま外を歩くのは(仮にカメラが作動したとしても)視界が狭まり危険なのでくれぐれもまねはしないようにしていただきたい。
先日の「Japan VR Summit 2」のトークセッションではHTC ViveのバイスプレジデントであるJoel Breton氏が、VRのワイヤレス化について「2020年までにPC向けVRのワイヤレス化が進んでいくだろう」と語っていた。
これからのVRのワイヤレス化が、VR OneのようなVR対応PCの小型化・モバイル化で進んでいくのか、映像の転送技術でPCとVRデバイスが切り離されるのか、あるいはスマートフォンのVR機能が進化していくことでリッチコンテンツもプレイ可能になるのか、未来はまだ誰にも分からない。
しかしこれからのVRの流れがワイヤレス化だとすれば、VR Oneはその第“一”歩を踏み出したといえる。
「ショルダーホン」という製品がかつて存在した。固定式の電話機から現在の携帯電話が生まれるまでの歴史の中で、初めての「持ち運べる電話」といえる製品だった。VR OneはリッチコンテンツVRの歴史の中の「ショルダーホン」に当たる製品なのかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.