Appleの「MacBook」および「MacBook Pro」が全面的な移行を進めてきたことで、PCの世界でUSB Type-Cがいよいよ本格普及の兆しを見せた2016年。これを中心として、2017年に実際のPC製品へ導入されること期待したい注目の技術をまとめよう。
USB Type-Cに集約される機能はさらに増えていく。2016年9月に公式リリースされた新仕様「Universal Serial Bus Device Class Definition for Audio Devices Release 3.0(USB Audio Class 3.0)」は、さらにUSB Type-C搭載デバイスの進化を促しそうだ。
この仕様では、USB Type-Cケーブルでオーディオ信号を流すためのルールを確立している。デジタルだけでなくアナログオーディオを流せるようになったことに加えて、パワードメイン(Power Domains)仕様により、効果的なパワーマネジメントも可能だ。例えば、ヘッドセットでヘッドフォンのみ利用しているときにマイク回路を休ませて消費電力を削減することができるという。
USB PDやAlt Mode(DP over USB-C、HDMI Alt Modeなど、詳しくは後述)といった仕様と併用すれば、映像、データ、電源、オーディオの信号をUSB Type-Cケーブル1本で伝送でき、VR(仮想現実)対応のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)やドッキングステーションの接続ケーブルをUSB Type-Cに1本化することが可能になる。
アナログオーディオを流せるようにした仕様の目的は、3.5mmのヘッドフォン・ヘッドセット端子の排除を促進することにある。というのも、この3.5mm端子およびアナログオーディオの出力回路が、PCをはじめデバイスの薄型軽量化における障害になっているためだ。
3.5mm端子自体に加えて、デジタル/アナログ変換(DAC)やアナログのノイズ処理、音響処理の回路実装が必要で、高音質を実現するにはオーディオメーカーとの技術提携も事実上必須となり、高コスト要因としても挙げられる。
しかし、現状であまりに普及している3.5mm端子とアナログ再生機器を同時に切り捨てるリスクはどのメーカーも取りづらい。
iPhone 7でいち早く3.5mm端子を廃止したAppleも、その発表会でフィル・シラー上級副社長がわざわざ「イヤフォン端子の廃止は勇気」と熱く語ったうえで、製品には変換ケーブルを付属している(この場合はUSB Type-CではなくLightningの端子だが)ほどだ。USB Type-Cに外部拡張端子を集約したMacBookとMacBook Proは、3.5mmのヘッドフォン端子だけは相変わらず搭載し続けている。
iPhone 7のLightningt端子ではアナログ回路を省いて変換ケーブル側にDACを搭載しているようだが、USB Type-CのUSB Audio Class 3.0のアプローチでは、本体側にDACやアナログ処理回路は搭載したまま端子だけを省ける。そのため、iPhone 7より低コストな変換コネクターで音質への影響も最小限に抑えて、アナログ再生機器をサポートできる。
もちろん、その場合は省スペース効果も低くなってしまうが、このようなオプションを残せば、デバイスメーカーは3.5mm端子の廃止という判断がしやすくなるし、ユーザーも導入しやすくなる。まず3.5mm端子を廃止し、そこからアナログからデジタルへの移行へとつなげる狙いだろう。もちろん、iPhone 7同様に本体側の回路はデジタルのみにして、省スペース化および省電力化を徹底することも可能だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.