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» 2017年04月10日 23時00分 UPDATE

単なる「タッチキーボード」じゃない:「YOGA BOOK」のHalo Keyboardに秘められた“大和魂” (1/2)

レノボ・ジャパンの「YOGA BOOK」の大きな特徴の1つが、ペンタブレットとしても利用できる「Halo Keyboard」だ。このキーボードには、ThinkPadの研究開発で知られる同社大和研究所の“魂”が込められていることをご存じだろうか?

[井上翔,ITmedia]

 Lenovoが「IFA 2016」で発表した「YOGA BOOK」。日本でも10月中旬に発売され、一時は入手困難になるほどの人気を集めた。

 YOGA BOOKの大きな特徴として、ペンタブレットとしても利用できるタッチセンサー式キーボード「Halo Keyboard(ヘイローキーボード)」が挙げられる。このキーボードには、レノボ・ジャパンの大和研究所(横浜市西区)にある「Research & Technology, Japan(R&T Japan)」という部署の研究成果が随所に投入されている。

 R&T Japanの研究員たちは、YOGA BOOKにどのような“大和魂”を注入したのだろうか。

Yoga Book with Windows Yoga Book(写真はWindows 10を搭載した「Yoga Book with Windows」)

「R&T Japan」とは?

 R&T Japanは、2005年に日本アイ・ビー・エムの研究部門とPC部門から計6人を集めて発足した「Japan Research Lab」が前身だ。発足当初はThinkPadの3〜6年後を見越した研究を行っていたが、2008年にR&T JapanとしてLenovoのグローバル組織の一部に組み込まれた。「ThinkPad Active Protection System」「静音ファン」「インスタントメディアモード(ThinkPad X1用)」など、その研究成果はThinkPadファンにもなじみ深い技術や機能に反映されている。

 現在のR&T Japanは、人間のスマートデバイスに対するインタラクション(操作や反応)に関する研究・開発活動と、その成果を実際の製品を開発する部署に提案する活動が主な業務となっている。

 YOGA BOOK自体は、中国・北京にある開発部隊が開発を担当している。開発部隊からの問い合わせを受け、約2年前にR&T Japanが技術提案をした結果、それをたたき台としてYOGA BOOKのHalo Keyboardが作られた。

R&T Japanの歩み 大和研究所「R&T Japan」の歩み。研究・開発の成果の多くは、ThinkPadファンにもなじみ深い
Halo Keyboard研究・開発の経緯 Halo Keyboardの研究・開発をR&T Japanが担った経緯

タッチセンサーでも物理キーボードに匹敵する入力環境を目指す

 タッチキーボード自体は、特段珍しいものではない。スマートフォンやタブレットのタッチスクリーンを使った「スクリーンキーボード」はその典型例だ。

 スクリーンキーボードは画面上に出すという特性上、物理キーボードと比べてレイアウトが簡素になりがちで、パームレストやフィンガーレストを設けることができない。また、文字入力のレスポンスが遅く、タイプエラーも起こりやすいという課題もある。そのため、長文を入力しようとするとストレスがたまってしまいがちだ。

 YOGA BOOKのHalo Keyboardは、スクリーンキーボードと同じ原理で動作する。しかし、一般的なノートPCの物理キーボードと同様にタッチタイピングができるようにソフトウェア面でさまざまな取り組みを行っている。

キー配列:ThinkPad 10用キーボードをベースにタッチならではの改良

 使い勝手を物理キーボードに近づけるためには、まずはキーボードのキー配列が重要となる。

 R&T Japanでは当初、キー入力アルゴリズムの開発に専念する予定だったが、開発部隊からの依頼もあって、キー配列についても合わせて検討することになった。

 まず、生産性を確保する観点からThinkPadと同等のキー数を維持することを念頭に置き、ほぼ同じサイズ感を持つ「ThinkPad 10 ウルトラブック キーボード」をベンチマークに据えることとなった。

 普段はモバイルデバイスの研究・開発を主業務としているチームが担当したため、開発過程では「(ファンクションキーの段を省いた)5列キーボードでも良いのでは?」という議論もあったという。最終的には、ファンクションキーを多用する日本ユーザーに配慮して、ThinkPad 10用キーボードとほぼ同じ配列の6列キーボードに落ち着いた。

ThinkPad 10 ウルトラブック キーボードがベンチマーク ほぼ同じサイズ感の「ThinkPad 10 ウルトラブック キーボード」(左)をベンチマークに配列が決められた

 ただし、開発陣には「全てを物理キーボードと同じにして良いのか?」という疑問もあった。そこで社内でテスターを募り、平面上でタイピングをしてもらった結果、キーピッチはJIS(日本工業規格)で定められた19(縦)×19(横)mmよりやや狭い方が良いという知見が得られたため、最終的に18.1×17.4mmというピッチとした。また、タッチキー採用によるタイプミスが減りきらないことを考慮して、キーボード右上に大きなBackSpaceキーを配置している。

キーボードレイアウトの工夫 キーボードレイアウトに関する工夫
日本語キーボード YOGA BOOKの日本語キーボード(写真)では、縦長にBackSpaceキーを取っている

タッチセンサー:ファームウェアに工夫

 先述の通り、Halo Keyboardのタッチセンサーは、タッチパネルと同じ原理で動作する。手のひらを置く「パームレスト」の部分も、実際にはセンサーがあり反応する。この部分をキー入力中に「不感」とすることはソフトウェアレベルでも実装可能だが、Halo Keyboardではタッチセンサーのファームウェアレベルで「不感帯」として指定している。これはキー入力のレイテンシ(遅延)を最小限に抑えるための工夫で、ソフトウェア実装よりも20%(10〜20ミリ秒)改善するため、キー入力の比較的速いユーザーでも遅延をあまり意識せずに使えるという。

 また、このファームウェアにはタッチパッド相当部の誤動作防止機能も備えている。キータイプ中、タッチパッド相当部は中心に描かれた円の部分以外反応しない。タッチパッドを操作したいときは、円の部分をタップするとタッチパッドが再び使えるようになる。これは、タッチパッドに手のひらが触れることによる「誤爆」がHalo Keyboardではより多くなることから実装されたものだ。

タッチセンサーのファームウェアレベルで工夫 タッチセンサーのファームウェアレベルで誤操作対策を施すことで、ソフトウェア処理よりもレスポンスを向上している

 物理キーボードと同じ感覚で使う場合、キー入力の情報をなるべく早く出力(確定)する必要がある。一般的なスクリーンキーボードでは、キーに触れて離した後に入力情報が反映されるが、それでは遅すぎるのだ。そこで、Halo Keyboardではキーに触れたら迅速に入力情報を反映するようにしている。

 ただし、この場合、指をキーに置いておく「フィンガーレスト」と「キー入力」をしっかりと区別しないと誤入力が頻発してしまう。そこで、タッチした瞬間の指密度(タッチポイントの間隔)などを独自のアルゴリズムで検知してフィンガーレストか否かを判定している。

タイピング検出 タッチセンサーから送られている情報をもとに、独自アルゴリズムで意図したキー入力か否かを判断
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