「不安定さというのは、いつもアートに表現されるもの。私たちが生きる不確実な現代において、『逃げ場』として表現される、理想化されたもう1つの世界がある」と、前出のブレンダ氏は語る。
そのもう1つの世界とは、自然への尊敬の念を保ちながらも、幻覚や強烈なインパクトを付け加えられた世界。葉の色がピンクになったヤシの木の赤外線写真や、頭部が木と合成された人物、ビーチに横たわる人魚など、イマジネーション豊かに自然と人間が混ぜ合わされている。
不確実な時代にこそ、人は過去や歴史を振り返りそこから学ぼうとするのではないだろうか。Adobeいわく、クラシックアートからインスピレーションを受けた手法や、過去において何が貴重な存在だったかを伝えたり、古い技術と新しいテクノロジーを組み合わせたりする作品が著しく増えているという。
例えば、ヴィンテージの洋服を身にまとった人物や、美術館で見るクラシックアートのような配置の果物、何百年もの前の医学書に出てきそうな人体など古典的なもの。そして、モダンな洋服を着た彫刻の男性像や、モザイク処理されたモナリザといったユーモアを感じさせるものまで幅広い。
スマホやデバイスのスクリーンなどデジタルなモノに触れることが増えている一方で、「実際の世界」との触れ合いが減ってきていると感じている人もいるだろう。
その寂しさを埋めるため、言葉によるコミュニケーションや実際に触れ合うこと、誰かと同じ空間にいることを表現技法がトレンドとなっている。
ブレンダ氏は、「人々は直接触れ合うことに対して敏感に反応し始めている。ビジュアルの世界では、多彩なテクスチャーを含んだり、プライベートな瞬間を切り取ることで『つながり』を表現している」と解説する。
大人の手を取ってうれしそうな笑顔を見せる子どもや、手をそっとつなぐカップル、夕日に向かって差し伸べられている手など、「手」で表現されるものが多い。人間の暖かさを伝えることで、見る人を安心させる。
2018年の6つのトレンド、いかがだっただろうか。これから年末年始休暇に入り、帰省したり旅行へ出かけたりする人も多いのでは。今回紹介したトレンドを参考に、目の前の風景をとらえ直してみるのもいいだろう。
執筆:中井千尋
編集:岡徳之(Livit)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.