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» 2018年04月10日 07時00分 公開

製造業の転換点になるか――Appleが再生可能エネルギーで自社電力を100%調達 (1/2)

自社だけでなくパートナー企業まで“エシカル”に。

[林信行,ITmedia]

 このニュースは大企業の経営層には特に深刻に受け止めてもらいたい。「Appleは特殊な会社だから」――そんな言い訳は、いつまでも続けられない。

Appleの新社屋、Apple Parkにあるオンサイト屋上太陽光パネル

 Appleがクリーンエネルギーでの製造を目指していることは、何年も前から明らかだった。筆者も2015年に同社を「エシカルIT企業」と呼んで、クリーンエネルギー化を含む、Appleの環境に関する取り組みの先進性がかなりすごいことになってきている、と訴えたつもりだった(参考記事:林信行が語る「エシカルIT企業」という視点: アップルが森林を買い、ソーラーファームを建設する理由)。

 Appleは1つ1つの動きを無駄にせず積み上げて行く会社だ。あの記事から3年、同社は回収された中古iPhoneを完全に解体し、レアメタルなどの資源を再生できる道を作るなど、着実に先進的な環境への取り組みを重ねてきた。

大きくリードを広げたエシカルIT企業、Apple

 今回の発表に関して、同社CEOのティム・クック氏はこう語っている。

 「私たちは自分たちが生まれてきた世界をさらに良いものとして次世代へ残すことに全力で取り組んでいます。何年にもわたり努力を重ね、ようやくこの意義深い数字に到達することができたことを誇りに思います。私たちの製品に使われている材料、そのリサイクル方法、私たちの施設、そしてサプライヤーとの取引において可能なことの限界を今後も押し広げ、新しい創造的かつ未来志向の再生可能エネルギー源を確立するつもりです。なぜなら、未来はそれに依存していることを私たちは知っているからです」

 ここで、筆者が3年前の記事の最後に書いた言葉をここで繰り返させてほしい。

 Appleは「この会社のIT製品を選ぶことで消費者も環境に貢献できる」という“エシカルIT企業”の急先鋒といってもいいかもしれない(「エシカルな製品」という意識が芽生えることで、逆にそうでない製品を買う人は、環境に対して無配慮であるという認識が広がり、それが将来、そうした製品を作る企業の環境への取り組みにも変化をもたらす可能性がある)。

 そろそろ他の大企業も、とってつけたようなCSR活動はいったん止めてでも、もう1度、21世紀の製造業が環境に対して果たすべき責任を真剣に議論すべきタイミングが来ているのかもしれない。

製造業の転換点!? 再生可能エネルギーについての2つの重大発表

 もったいをつけた書き出しになってしまった。ここで、改めて今回、Appleが何を発表したかを簡単におさらいしよう。

 発表内容は主に2つある。

 1つはApple自身による再生可能エネルギーの発電プロジェクトに関する発表で、現在、世界で25の発電プロジェクトが立ち上がっており、同社のデータセンターなども全て自社電力でまかない、全世界の施設から排出される温室ガス(CO2e)を54%、210万t(トン)削減したという話。

 もう1つは、Apple自身のみならず、Apple製品の開発に欠かせないパートナー企業にも再生可能エネルギーへの移行を促し、新規サプライヤー9社を含む23社が100%再生可能エネルギーで稼働することを約束したという内容だ。

 平たくいえば、自分たちだけ「クリーンなフリ」をして、下請け会社たちに手を汚れる仕事をさせているということはなく、それどころか、そのままではどうだったか分からなかなかったサプライパートナー企業が、「Appleと一緒に21世紀型の製造業に移行する手伝いを始めた」ともいうことができる。

 スティーブ・ジョブズの師匠ともいわれるジェイ・エリオット氏をインタビューしたとき、「(Appleでは)パートナー会社も製品を成功に導く重要な一員だとみなすこと」、「アウトソースするのではなく、仲間にインソースする」と捉えているという話を聞いたのを思い出した(参考記事:「何よりも大事なことは情熱」――ジョブズ氏の師が語る“スティーブの素顔”)。

 今回の発表が何を意味するのか、1つ1つ細かく見ていこう。

世界に再生可能エネルギーを広めるApple

 まずは再生可能エネルギープロジェクト。Appleとそのパートナーは世界各地で再生エネルギープロジェクトを立ち上げ、地域社会、そして国全体が活用するエネルギーの選択肢を増やし続けている。プロジェクトの中にはAppleが独自に立ち上げたものもあるが、地域の公益事業体と協力して開発しているものも多い。

クリーンエネルギーを供給するSunseapは、シンガポールの800以上の屋上で32MWの太陽光パネルを管理する

 例えば、日本では地元の太陽光発電会社、第2電力株式会社とパートナーシップを組み、300基以上の屋上太陽光発電システムを設置する計画だ。これにより毎年生み出される1万8000MWh(メガワットアワー)のクリーンエネルギーは、3000戸以上の日本家屋に電力を供給できる。

 こうした再生可能エネルギープロジェクトは現在、世界各地で25に及び発電容量は626MWに達する。2017年には太陽光発電だけで286MWを発電している。

太陽光パネルを地上から高い場所に設置。太陽光が通り抜けることで地表に草が生える

 現在では太陽光パネル以外にも風力発電基地やバイオガス燃料電池、マイクロ水力発電、そしてエネルギー貯蔵技術とさまざまな技術を活用して再生可能エネルギーの有効利用に取り組んでいる。

 現在、上記25プロジェクトに加え、先に触れた日本を含む15のプロジェクトが建設中で、完成すると1.4GW(ギガワット)を超えるクリーンな再生可能エネルギー発電が11カ国で行われることになる。

 2017年にお披露目されたばかりの新社屋、Apple Parkも今や北米で最大のLEEDプラチナ認証取得オフィスビルとして、17MWの屋上太陽光パネル設備や4MWのバイオガス燃料電池を含む複数のエネルギー源から100%再生可能エネルギーを調達し、電池貯蔵を持つマイクログリッドで制御。人が少ない期間などは余ったクリーンエネルギーを公共のグリッドに還元しているという。

 その他、Appleの主な発電プロジェクトに関しては表にまとめた。

Appleの主な再生可能エネルギープロジェクト
米国カリフォルニア州クパチーノ市。Apple Park 17MWのオンサイト屋上太陽光パネル設備や4MWのバイオガス燃料電池を含む複数のエネルギー源。電池貯蔵を持つマイクログリッド。
中国の6つの省 85MWを超える風力および太陽光プロジェクト(+製造業の上流工程からの排出問題に対処)。
米国アイオワ州ウォーキー市 40万平方フィートの最先端のデータセンター。稼働初日から100%再生可能エネルギーで稼働。
米国オレゴン州プラインビル市 風力発電基地、モンタギューウィンドパワープロジェクトとの間で200MWの電力購入契約。2019年末までに稼働。
米国ネバダ州リノ市 NV Energyとのパートナーシップで過去4年間で4つの新プロジェクトを開発。太陽光発電量は合計320MW。
日本 太陽光発電会社、第2電力株式会社とパートナーシップ。300基以上の屋上太陽光発電システムを設置。毎年1万8000MWhのクリーンエネルギー。3000戸の日本家庭の電力に相当。
米国ノースカロライナ州メイデン市 年間2億4400万kWhの再生可能エネルギーを発電するプロジェクトでデータセンターを運用。ノースカロライナ州の1万7906戸の家庭で使われるエネルギーに相当。
シンガポール 限られた国土でも、800カ所の屋上に再生可能エネルギー設備を設置。
デンマーク 建造中のに2つの新しいデータセンターは1日目から100%再生可能エネルギーで稼働。
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