新「iPad Pro」を試して判明した驚異の実力 もはやパソコン超えか本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/5 ページ)

» 2018年11月06日 08時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

 新しい11型と12.9型の「iPad Pro」が登場した。製品の位置付けは、コンテンツの閲覧が中心のタブレットである「iPad」を、知的生産性やクリエイティブのためのツールとして高めた「iPad Pro」シリーズの後継モデルだ。

iPad Pro 新しい「iPad Pro」。写真は12.9型モデル

 しかし、その実態はiPadの誕生以来、最も大きな更新といえる。昨年、「iPhone」は登場から10年を経て、操作体系や個人認証の仕組みなど、製品全体を形作る枠組みを変え、「iPhone X」ファミリーとして新しい進化の基礎を築いたが、今回のiPad Proはそのときと同じような立ち位置にある製品だ。

 iPhone Xファミリーのようにホームボタン(Touch ID)が廃止され、コーナーを丸く切り欠くことで本体形状にピッタリとスクリーンが寄り添うデザインへと変更。全体のフォルムも、従来は背面側が丸みを帯びていたのに対し、より表裏均等な1枚の石板のような風貌となった。加えて、赤外線プロジェクターを用いた立体センサー内蔵の顔認証機能「Face ID」も搭載している。

 こうした一連の技術、操作の枠組みは、iPhone Xから続く新しいiPhoneの技術とノウハウをiPadという製品ジャンルに持ち込んだものだ。

 まさに刷新という言葉が似合うほど、大きくイメージを変えたiPad Proだが、従来のノウハウをきちんと反映しているという意味において堅実な進歩も果たした。2015年に発表された初の12.9型iPad Proから続く従来型製品で得られたノウハウを反映し、「Apple Pencil」の扱いやキーボード機能を兼ねた本体カバー「Smart Keyboard」の装着方法を改善。いずれも、扱いやすいものになっている。

 結論からいえば、新しいiPad ProはApple Pencilを用いてクリエイティブな作業をするアーティストやクリエイターだけではなく、パソコンを仕事や学習の道具として毎日持ち歩くライフスタイルを送っている全ての人にとって、「次の世代のパーソナルコンピュータ」となる製品だ。

 米Appleの発表会が開催されたニューヨークから東京に戻り、いったんは落ち着いて振り返り、100%パソコン世代である自分の頭をクリアにしてから、新しいiPad Proに向かい合う。同時発表された「MacBook Air」の新モデルにも思いをはせているが、新しいiPad Proを使い始めると、「仕事の全てをここに集約できるのではないか」という考えが頭を離れない。

 筆者がテストしたのは、12.9型ディスプレイと1TBストレージを搭載したモデルだ。Appleは公式にアナウンスしていないものの、1TBストレージ搭載モデルのみ、メインメモリが標準の4GBから6GBに増量されている。理由は明らかではないが、あるいはフォトグラファー向けのアプリなどで、将来的に活用されるのかもしれない。現時点では、両者にパフォーマンスの差はないようだ。

圧倒的に使いやすくなったキーボードカバー

 iPad Proには大きく改良されたApple独自開発SoC(System on a Chip)の「A12X Bionic」が搭載され、その処理能力が大幅に向上している。「大幅に」と書いたが、実は総合性能では、多くのモバイル型コンピュータを超えている可能性が高い。

 しかし、そうした基本的な改良点については、Apple公式Webサイトからも伝わる部分が多いだろう。せっかく実機が目の前にあるのだから、それよりも強く印象に残っている部分にまずは触れておきたい。「キーボード」「ペンシル」「USB Type-C(USB-C)」の3つだ。

 キーボードはとりわけPC USERという本誌の性格を考えれば、極めて重要なポイントだろう。ファブリック素材でキーをラミネートした構造のSmart Keyboardは、独特のキータッチへの賛否よりも、膝の上に置いて使ったときの安定性と角度調整が不能な点、そして耐久性に問題があった。

 新しいiPad Pro向けに開発された「Smart Keyboard Folio」は、キースイッチの基本構造が同じであるため、例えば1年間、ずっと使い続けた際にどのぐらいの耐久性を持つのか、といった疑問はまだ残る(キーボードだけ簡単に変更できるという点では、いくらでも換えが効くともいえるが)。

 しかし、キータッチはシャープになった上、スタンドとして使った際に底面に折れ曲がる部分がなくなった。これにより、膝の上に置いて使う際、どんな姿勢でも、また多少、体を動かしても安定した使い心地になった。

iPad Pro 文字入力の快適さが高まった「Smart Keyboard Folio」

 画面の角度も2段階から選択できるが、キー操作を行う際にはより寝かした角度の方が重量バランスはいい。立て気味の角度ではバランスがやや崩れるが、こちらはテーブルに載せて映像を楽しんだり、向き合った相手にプレゼンテーションを行ったりする際などに使いやすい角度だ。

iPad ProiPad Pro 画面の角度は2段階に調整できる。ちなみに重量の実測値は、iPad Pro本体(12.9型のWi-Fi + Cellularモデル)が630g、Smart Keyboard Folioが403gだった

 これまでにもMicrosoftの「Surface」シリーズなど、幾つかの2in1 PCを使ってきたが、Windowsをベースに進化してきた2in1と比べても、トップクラスの使い心地だ。とりわけフルサイズのキーボードが提供される12.9型iPad Proは扱いやすく、文字入力が仕事の大半を占める筆者のようなユーザーでも、日常的な道具としての違和感がない。

 この新しいSmart Keyboard Folioでの改良は、iPad Proへのカバーのホールド方法が変更されたことが大きい。これまでのように本体の側面ではなく、背面の各所に多くのマグネットを配置して固定するようになった。マグネットの数は実に120個にのぼり、しっかりと確実に装着できる一方、付け外しがしやすいよう適度な強さに設定されている。

 もともと、iPadのカバーは画面の保護とスタンドに使うことが目的だったが、iPad Proではキーボードを固定するため、根本的に本体との固定方法を見直したということだろう。

 ただし、これまで裏技的に使えていた12.9型モデル用のSmart Keyboard Folioを10.5型モデルに装着して使う(サイズは合わないが、コネクターの位置とマグネットは合うため、コンパクトなiPad Proとフルサイズのキーボードを両立できる)という運用は不可能になった(これは同業の西田宗千佳氏が考えたもので、一部では「西田方式」といわれている)。

 キーボードの説明に多く割いたが、それだけパソコンを使ってきたユーザーにとっては大きな改良である。

 ただし、それだけにMacやWindowsなど、日本語入力IMEの使い心地を高めるため、長年進化してきた部分が、iOSには反映されていない点が気になってくるのも確かだ。欧文入力だけであれば、もはやパソコンとの差はないに等しいだけに、iOSの入力メソッド、サードパーティー製入力メソッドのAPI機能などにmacOS並の幅が欲しい。

 2015年にiPad Proが導入されて以来、一貫して指摘されてきながら根本的な改良が進んでいない弱点でもある。

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