第13回 ペイドパブってなんでしょう?コンテンツ業界の底辺でイマをぼやく

» 2008年10月06日 17時12分 公開
[トミヤマリュウタ,ITmedia]

 テレビや雑誌、Webなどで、何かの商品・サービスが紹介されているときに、「ここまでは記事だけど、こっちは記事広告だな」とか「うは、ペイドパブ全開w」「まーたインフォマーシャル番組か」なんていうことを感じる方って、どのくらいいるものなのでしょうか。

 広告業界、はたまたその近辺で働く人は当然として、それ以外の皆々さまで、「この情報は裏にお金の絡まない情報」「この情報は裏でお金が動いているに違いない情報」なんていうふうに、見極めながら情報に接していらっしゃる方ってどれくらいいらっしゃるんでしょう……。

 この「どれくらい」という感覚値の違いで、クライアントさまと話がかみ合わないということがよくあります。特にネットの案件では、そうなりがちです。ということで今回は、記事広告「ペイドパブ(paid publicity)」にまつわる話をまとめてみたいと思います。

ブロガーやホムペな若者は広告リテラシーが高い

 冒頭に書いたような疑問を解決するデータが見つからなかったので(もろに大人の事情な話ですからねぇ)、個人の意見として書かせていただくと、昔と比べれば明らかに「それが広告なのかどうかを見極められている人=リテラシーの高い人」は増えていると思います。

 さらにいえば、見極めている人の数はきっと、ネットリテラシーの高さとも比例するのだろうなと。例えば、個人的にやっているブログでアフィリエイト広告を入れているような人からすれば、雑誌の記事“風”広告は「アフィってんな」と見えるでしょう。ケータイの「ホムペ」作りにご執心なヤングたちも、「無料でサイトを作れるのは広告入るからなんだね」なんていう風にして、体験的に広告の仕組みを理解しています。

 最近では、ブログに記事広告をエントリーすると最大1万円 の報酬もあるという「ブログタイムス(外部リンク)」なんていうサービスまで始まってしまいましたし、10年前には隠されていた(?)「広告の仕組み」は、どんどん世間的に知られるものになってきているといっていいんじゃないでしょうか。

 もちろん、実際のところは分かりません。僕の考えすぎだといわれてしまえばそれまでです。ただ、作る側から言えば「それだけ見る目の厳しいお客さんが増えたと思って、ふんどし締め直してかかるべし!」と思ったほうが絶対にいい……と、僕は思います。「それってペイドパブじゃん」とバレバレな中、それでもきちんと「企業にも読者・視聴者にとっても有意義なコンテンツ」に仕上げていきましょうとあらためて思うわけです。

「言いたいことを言う」のではなく「お客さんが知りたいことを伝える」べきでは…

 さんざん、「バレバレ」などと書いておいてなんですが、そもそも記事広告・ペイドパブって、バレるとかバレないとかそういうものでもないですよね? 基本的には「PR」「広告」などと書いて、「これは広告である!」ということを明確にしなければならないのが記事広告ですから、それが通常の記事ではないとバレるべきなはず。

 もうちょっと突っ込んでいうと、「編集部目線、番組目線の通常コンテンツである」と受け手に誤認させて、情報の信頼性を高めるのが記事広告・ペイドパブ……なのではなく、雑誌のイメージ広告やテレビCMとは違って、雑誌なら記事を作る手法、テレビなら番組を作る手法を用いることで「分かりやすく商品・サービスの訴求をする」のが記事広告・ペイドパブの利点だと思う(というか思いたい)わけです。

 しかし、なぜか一部のクライアントは「編集部が独自に取材したみたいな感じにしてくれなきゃ、広告丸出しじゃん!」という感覚値になりがちです……。もう「クライアントさんったら欲張りさん♪」というか。もし本当に、バレずにやり遂げようとするなら、そこには針の穴を通すほどの繊細な演出が求められると思うわけですけど、そうした演出ナシで「あちゃー」となっているペイドパブコンテンツってけっこうありますよね……。

 読者の皆さんも、テレビや雑誌、Webなどの媒体で、目を覆わんばかりの様相を呈している記事広告・ペイドパブ、インフォマーシャル番組に出くわすこと、ありませんか?

 分かりやすいのは、“根拠”のない自画自賛もの。誰が書いているのか分からない、顔のない原稿でやたらと商品を褒めちぎっていたり、誰だかよく分らない若いモデルのおねーちゃんが「スゴーイ」を連発していたりするようなアレです。

 もちろん、広告ですから自社商品を褒めちぎるのは当然のこと。ただ、「編集部が編集部目線で書いてるんですよ〜」「うちの番組が独自の目線でお届けしているんですよ〜」という仕立てにすべし! とおっしゃる一方で、必要以上に美辞麗句を並べたててしまえば、その裏にあるお金のにおいをまき散らして、広告効果を減らすだけのように思うのですけれど……。心配しすぎですかね?

 企業が伝えたい情報を“読者・視聴者にとっても有意義なコンテンツ”へと昇華させるのは、とても大変で、ものすごくセンシティブなこと。企業側の都合で勝手に伝えたいと思っている情報を、世間さまが喜ぶ情報へと加工するわけですから、これはもう錬金術の世界です。

 いわゆる素の記事、番組、コンテンツを作るのとは似て非なる仕事で、本当に困ってしまう状況に陥ることが多く、泣きたくなる話もたくさんあります。宇宙船のようなビルの中にいらっしゃる大手広告代理店の方からしたらレベルの低い話だとは思いますが、例えばこんなやりとり。

 「ウチはあくまで協力っていう立ち位置にしといてくれなきゃ。純広告じゃないんだから、前に出すぎちゃうとだめでしょ。あ、でも、協力:●●●●っていう感じで、社名は必ず表紙に出しておいてくれなきゃ困るよ。え? それじゃ広告に見えるって? だからさ、それでもそう見えないようにするのがプロでしょ、キミ」

 ……。こういわれたらそうせざるを得ないのが、我々最下流にいるものの立場ですが、架空の誰かが書いている記事に「協力:●●●●」なんて書いていたらもういろんなことがバレバレで、内容の信頼性が減るばかり、かつ誰も得しないのではと思うわけですが、毎度毎度、それを止められない自分がおります。はぁ、反省。

“企業目線”の伝えたいことと“お客さん目線”の知りたいことのせめぎ合い

 記事広告などのペイドパブは、その媒体の軒先を借りて、その媒体のクリエイティブチーム(代理店の場合もある)とともに、「これは広告です!」と満天下に宣言した上で、「(その媒体の)読者・視聴者にとっても、広告クライアントにとっても有意義なコンテンツ」を作り込み、掲載し、お客さまに届け、伝えるというのがゴールだと自分は思っています。

 広告クライアントは“企業目線”でその商品・サービスの伝えたいことを整理し、媒体側は“お客さん目線”で知りたいことを整理する。それをテーブルに並べて、どう組み合わせたら「有意義なコンテンツ」になるのかを考えるわけですが、そこには金銭の授受関係というどうしようもないものが、はっきりと横たわっていて、そうそううまくはいきません。

 多くの場合は、おのずと“広告クライアント目線”の伝えたいことばかりが先行し、その伝えたいことがお客さんの知りたい情報になれないまま、誰にも響かない記事広告・ペイドパブが産み落とされていく……。

 こうした事態になる案件では、毎回とても不思議な気持ちになります。そして、思わずクライアントさんにこんなことをのたまってしまいます。

 「ちょっと待ってください、Aさんは雑誌に載っているペイドパブの記事、読みますか? あからさまなインフォマーシャル番組をテレビの前に座ってじっと見てますか? 見てないですよね? Aさん、このままだと、そんな誰も見ていないコンテンツになっちゃいますよ」

 深夜にお酒の席でこうした話をすると、多くのクライアントさまは「そんなもの誰も見てないよねぇ……。俺も見ていないもの」とおっしゃいますが、打ち合わせの席では「それでもそうしてほしい」とおっしゃる。

 「そうしないと社内会議で通らないから」と言われればそれまでです。そこを通らなければ、当社には一銭もお金が振り込まれませんから、結局はそうせざるを得ません。でも、個人的にはそれがなんで通りやすいのかも分かりません。皆さん、本心では「そんなペイドパブものは見てないよねぇ……」なのに、なぜ会議になるとそれが通ってしまうのでしょうか。いや、まぁ底辺の自分には分からない世界なのでしょうが。

媒体が「良い結論」を出して自己完結は避けたい

 とはいえ、記事広告などのペイドパブが、多くの媒体にとって「生命線」ともいえる収益の柱であり、そうした案件が底にまで下りてきて、我々の飯の種になっているというのも事実です。ならば、グチグチ言わないで、解決策を考えるべきということで、作り手的な観点からいくつか提言してみたいと思います。

 1つ言えるのは、いくら分かりやすい情報を作り上げても、情報の信頼性が低ければ、元も子もないということです。特にネットでは、ここを考えずに企画を立てることなどできません。実際、雑誌感覚で「やらせ」ブログをしてしまって、プロモーションブログが炎上したなんていうことが、過去にありましたよね……。そのこと1つをとっても、ペイドパブであることを隠すというのは、もう難しい時代だと思います。

 そして……。“媒体の上”にあるこのコラムでこんなことを言うのもなんですが、思い切って書きます。信憑性を上げるための根本的な解決方法は、“お客さんの目線を媒体側が担当しないこと”ではないでしょうか。そこに金銭の授受が発生していることがバレバレな以上、いくらアナウンサーなりライターなりがその商品・サービスを褒めちぎっていても、その賛美に人は納得できません。

 もう“お客さん目線”を媒体(およびそこから金銭の授受がある関係者)が代弁するのはやめて、お客さん自身から発信される情報をまとめて整理すべきなんじゃないかと思うわけです。特にネットには情報収集手段がいくらでもあるわけですから。

 “お客さん目線”はお客さんに返す。評価を下すのはお客さんです。媒体がお客さんの代表として、「使い勝手がいい」とか「すっごくお得!」などと結論めいたことをいい、商品・サービスに高評価を与えるようなペイドパブの作り方には、無理がきているように思います。

 お客さん自身の知りたいことと、広告クライアントさん自身の伝えたいことを1つの場所=媒体の上にセットして、評価はお客さんに委ねる。その評価がポジティブになるような“情報”を提供するのが媒体の役割で、評価・結論を下すのはお客さんの役割として考えるのです。

 もちろん、媒体はお金をもらって“情報”を作るわけですから、「あんな機能がある」「こんな機能がある」と企業のカタログやホームページでもできるようなコンテンツを作るのでは意味がありません。

 媒体の役割は、商品・サービスの機能説明ではなく、「こんな使い方がある」といった活用法にまでブレイクダウンした上での提案であったり、企業自身の口では語りにくい開発秘話であったり、その筋の専門家によるポイントの説明であったりといったものを、明確な根拠を元にしたうえで、コンテンツにすることでしょう。ただ、あくまで“情報”としての提示で止めて、評価や結論に踏み込まない。その領域はお客さんに委ねる。その姿勢を守ることがポイントかと思います。

 そう役割分担を分けて考えてみると、結論はやっぱり「読者・視聴者にとっても有意義なコンテンツ」を作るということになるんですよね……。

 評価や結論をお客さんに委ねるということは、もちろんネガティブな評価・結論を0にはできないということ。でも、それが普通ですよね。十人十色なんですから。問題は、相対的にポジティブな評価が多いかどうかということで。

 とはいえ、そんな施策を試みて、「ネガな話もちらほらあるけど、相対的にはポジティブな意見が多かったからペイドパブの効果があった! お金払ってよかった!」と考えてくれるステキ☆クライアントさまがどれくらいいるのかは分りませんが……。いや、けっこういると思うのですよね。実際のところ。

 例えば、企業によっては、すでにここで私が書いたようなことをケアしつつ、自らの手で質の高いプロモーションサイトを運営していらっしゃるところもありまして……。

 というわけで、次回は、お手本にしたいプロモーションサイト、ドコモさんの「ケータイ120%活用情報(外部リンク)」について、触れてみたいわけであります。というか、本当は今回、このサイトの話がしたかっただけなんですが、思わず前フリだけでコラムの1回分使ってしまいました……。ストレスたまってるなぁ。

プロフィール:トミヤマリュウタ

ときにライター、ときにデザイナー、ときにプランナー。某携帯電話関連会社にて某着メロ交換サイトを企画するなどといった若気のいたりを経て、2001年に独立。2004年には有限会社r.c.o.を設立。書籍、雑誌、ウェブの執筆・デザインなど、各種制作業務を中心に活動。2006年あたりから始まったケータイ業界再編の波にもまれていうるちに、近年では大手携帯電話会社のコンテンツ企画を手がけることになっていたりと、なんだか不思議な毎日。


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