GPS使えぬ場所でも測位 歩幅や方角をケータイで推定――KDDIワイヤレスジャパン2010

» 2010年07月22日 08時00分 公開
[山田祐介,ITmedia]

 KDDIは、無線技術の展示会「ワイヤレスジャパン2010」で行われたセミナーで、ケータイの6軸センサー(3軸地磁気センサーと3軸加速度センサー)を使った「デッドレコニング」と呼ばれる位置推定技術を披露した。ユーザーの歩数や歩幅、方向などをセンサーデータから解析し、累積的に現在地を推測する技術で、GPSでの測位が難しい屋内などの位置推定に役立つという。

環境側の準備がいらない位置推定

 携帯電話の位置情報サービスは、GPS衛星からの信号を受け取ることで端末の現在地を測定する手法が主に用いられているが、屋内など衛星の電波が届かない場所では測位が難しい。「IMES」と呼ばれる屋内GPS測位技術や、屋内にある無線LANの電波強度から現在地を割り出す技術なども存在するが、いずれも測位用の機材を設置する必要があり、万能ではない。

 KDDIの研究活動の中核を担うKDDI研究所では、こうした位置情報サービスが抱える位置精度の課題をさまざまな手法で解決しようとしている。例えば、ワイヤレスジャパンのKDDIブースで人気だった開発版「セカイカメラZOOM」は、画像認識技術によって看板などの矩形オブジェクトを認識し、看板の内容にあったコンテンツを表示する機能を搭載していたが、こうした看板のデータに位置情報を持たせて、測位に活用することも同社は想定している。

 ただし、同技術はあらかじめ矩形オブジェクトにデータをひも付ける必要がある。一方、6軸センサーを使ったデッドレコニングでは、センサーデータさえ取得できれば位置を推測することが可能だ。

photo ケータイ向けデッドレコニングの概要
photo KDDI研究所の上坂大輔氏

 「デッドレコニングという言葉自体は古くからあるもので、直前の位置から“どちらの方向にどれだけ進んだか”を推定することにより、累積的に現在地を求める手法のこと」――そう説明するのは、KDDI研究所でデッドレコニングの研究に関わった上坂大輔氏だ。今回披露されたのは歩行者向けの技術で、「従来型と違ってセンサーを腰や足に取り付ける必要がない」ことが特徴だという。

 同技術ではセンサーデータを基に、ユーザーの端末の持ち方や、歩行/停止の判定、歩数や歩幅の推定、進行方向の推定などを行い、ユーザーの現在地を推測する。機能はスタンドアローンでも動作し、事前に地図データを取得しておけば圏外でも利用できる。

 セミナーでは実際に、BREWで開発された位置推定エンジンを搭載した端末を持って研究員が会場を歩行し、端末の位置推定結果をセミナー会場のスクリーンに映し出すデモンストレーションが行われた。研究員が1分ほどの時間をかけて会場付近を一周した結果、スタート地点とゴール地点には1〜2メートル程度の誤差が発生していたものの、端末所持者の動きに追従して歩行の軌跡が描かれる様子がうかがえた。

photo デモシステムの構成
photophoto 研究員が最初に立っていたポイントが四角、現在地が丸として表示されている。会場裏のスペースを一周して元の場所に戻ってくると、多少の誤差はあるものの歩行の軌跡も円を描いた

 累積的に位置を推測する同技術は、利用を続けるほどに位置の誤差が大きくなるため、同技術のみで位置情報サービスを構築することは難しいが、GPSが利用できないエリアでの補佐的な役割を担うことができる。また、画像認識による測位も含め、複数の測位技術を端末がサポートし、それらを併用することができれば、位置精度を総合的に高められるようになるはずだ。

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