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» 2010年09月02日 11時00分 UPDATE

古都の魅力がiPhoneで見える――飛騨高山で広がる“iPhone街おこし” (1/3)

岐阜県の観光地、飛騨高山でiPhoneを活用した街おこしが広がっている。歴史ある街の景観を損なうことなく、iPhoneアプリを使った観光案内やクイズラリーを展開。まだまだ取り組みは途上だが、そこにはモバイルデバイスを介した観光地と観光客の新しいコミュニケーションの姿がある。

[山田祐介,ITmedia]
photo 鮮やかな赤が印象的な中橋。高山の観光名所の1つだ

 名古屋から高山本線に乗り飛騨高山を目指す道中、車窓に青とエメラルドグリーンの川が飛び込む。「何川だろう」と無知な筆者がながめていると、「右手に見えます木曽川は……」と車内アナウンス。さすが観光路線だ。往復8時間以上の出張が、途端に観光気分になる。

 しかしよくよく考えてみると、ポケットの中にあるiPhoneを使えば木曽川の名前なら簡単に調べられたのだ。マップで現在地の地図を表示し、川をたどって地図を移動すれば、木曽川の文字に行き当たる。美濃太田の先、飛騨川へと分かれることも、簡単に分かる。

 情報機器から離れ、地図を片手に古都や自然を訪ねるのは素敵な旅行の楽しみ方だが、一方でITを使った新しい観光のスタイルも生まれはじめている。特に、インターネットや地図、動画など、さまざまな機能がスムーズに連携する昨今のスマートフォンを使えば、何の予備知識もなく観光の見どころや街の情報がその場で調べられる。実は、こうした可能性に着目した観光地の1つが岐阜県の飛騨高山なのだ。


photo 高山の街をiPhoneアプリ「セカイカメラ」でのぞくと、さまざまな情報が浮かび上がる

 高山では、県のふるさと雇用再生特別基金を使い、観光客の回遊を促進させる「ひだっちプロジェクト」を展開中だ。その一環として、iPhoneアプリ「セカイカメラ」に観光情報を載せ、商店街のWi-Fiエリア化に取り組み、店にiPadを置いたり、3G回線対応フォトフレームをデジタルサイネージとして使ってみたりと、規模は小さいながらiPhoneを中心にさまざまなITの取り組みが行われている。同プロジェクトを引き受けた地元の印刷会社、山都印刷の平和民代表取締役社長らに、IT活用の狙いや効果を聞いた。

iPhoneで観光客の回遊を促進したい

photo 山都印刷の平和民社長

 ひだっちプロジェクトの目的は街の活性化であり、当初から街のIT化を目指していたわけではない。高山は上三之町、上二之町などを中心とした古い町並みが観光スポットとして人気が高い一方、商店街も含めて「一歩道を外れると人がまばら」(平氏)という課題があった。商店街の衰退は全国的によく耳にする話題だが、特に高山では高速道路の整備によって観光のスタイルが変化していることが、こうした流れに影響していると平氏は話す。

 平氏によれば、高山の観光客は愛知県をはじめとする中部圏からの来訪が一定の割合を占める。「東京や大阪から来られた方は宿泊していきますが、名古屋なら車で2時間程度。すると日帰り型にシフトしてしまい、古い街並みなど主要なスポットを見て、あとは飛騨牛を食べて帰るといった観光になりがちです。我々としては少しでもほかの場所に足を運んでほしいし、観光を滞在型にしていきたい。そのために観光施設以外に面白いことを提案できればと考えていました」(平氏)


photo 「ひだっちマガジン」

 平氏が社長を務める山都印刷では、プロジェクトの以前から無料の観光情報誌「ひだっちマガジン」を発行し、“ご当地ゆるキャラ”の「ひだっち」を使いながら地元の商店街の活性化に取り組んできた。ひだっちプロジェクトではこれらの活動と連動する形で、商店街の空き店舗にアンテナショップを展開したり、クイズラリーを実施したりと、街の回遊性を高める施策を行っている。しかし、こうした取り組みだけでは「目新しさがない」(平氏)とも感じ、異なる視点の施策も探していた。

 そんな中、県との話し合いでふと話題に登ったのが、県が取り組むIT振興策だ。県が大垣市に整備したIT拠点「ソフトピアジャパン」に入居している頓智ドットが、空間に仮想的に浮かんだ電子情報をiPhoneのカメラでのぞけるアプリ「セカイカメラ」を開発していると知り、興味を持った。また、時を同じくしてソフトバンクモバイルからiPhone 3GSが登場。iPhone 3Gよりもキビキビと動作し、新搭載の電子コンパスによってナビゲーションアプリがより便利に利用できることが、導入を後押しした。

 岐阜県は現在、iPhoneアプリの開発者集積やiPhoneによる地域振興を図る「GIFU・iPhoneプロジェクト」を展開し、その一環として開発者向け勉強会「iPhone塾」をソフトピアジャパンで実施するなど、県を挙げてiPhoneの活用に取り組んでいる。また、県内の街情報をセカイカメラのコンテンツ「エアタグ」にして全市町村に配備していることも話題を呼んだ。ひだっちプロジェクトは、こうした県のIT振興と連携して、ひだっちマガジンの観光案内コンテンツをエアタグ化し、コラムやクイズをエアタグとして街に浮かばせるなど、独自のIT施策を展開することを決めた。

photophotophoto セカイカメラのエアタグの中には、ひだっちプロジェクトが独自に用意したクイズやコラムがある。ひだっちのキャラクターがアイコンとなっており、アイコンをタップすると詳細が閲覧できる
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