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» 2011年05月13日 16時13分 UPDATE

神尾寿のMobile+Views:ネットの大海原に出るための「再定義」――ドコモ伊倉氏に聞くスマートフォン時代の“パラダイムシフト”戦略(後編) (1/3)

ジャーナリスト神尾氏によるドコモ伊倉氏へのインタビュー。後編では、スマートフォン時代に向けたサービスの再定義、そしてARPU向上という目的にとどまらないスマートフォンの“その先の意義”への意気込みが語られた。

[神尾寿,ITmedia]

――(前編:「開発サイクルは半分」――ドコモ伊倉氏に聞くスマートフォン時代の“パラダイムシフト”戦略

サービスを“再定義”する

photo NTTドコモ スマートコミュニケーションサービス部オープンサービス企画室 室長の伊倉雅治氏

神尾氏 スマートフォンに対するサービスの移植やコンテンツマーケットの取り組みでは、若干KDDIの方が先にやっている印象を受けているのですが、ドコモマーケットも2011年は変わってくるのでしょうか。

伊倉氏 ドコモマーケットというか、iモード関係のものも含めて、かなり変わってくると思いますよ。

神尾氏 コンテンツサービスレイヤーの部分が充実してくると。

伊倉氏 ドコモとしては、なるべく責任のきっちり取れるやり方でやっていきたいので、やっぱり時間かかるわけです。iモード、iチャネル、メール、すべてバリューを再定義して、インターネットに合うように作り変えなくてはいけない。東京湾から太平洋に出るようなものだから、今までみたいにはできない。セキュリティも必要だし、外敵もいるし、難易度も高いかもしれない。作りましたけどボロボロ、じゃダメなんです。

神尾氏 今まで培ったものを生かしはするが、スマートフォン時代に合わせて抜本的に見直して、作り変えをしている最中だと。

伊倉氏 再定義ですね。ドコモの提供しているサービスの再定義をして、きちんとバリューを提供する、ということです。

神尾氏 この辺りは今年の重要な部分になってきますよね。一方で、コンテンツプロバイダーと話をしていると、「誘導」と「導線」がスマートフォンは全然できていないという話題が出ます。フィーチャーフォンであれば、誘導という点だと端末にコンテンツポータルへの物理的なボタンがある。しかも、入った後に自分たちのコンテンツを売りやすくするための導線が設計されている。

 けれど、Android Marketにはそれがありません。それがないと、スマートフォン上でのビジネスが難しいという声がすごく多いのですが、この辺りの改善は、今後ドコモとしてやっていかれるのでしょうか。

伊倉氏 今、ドコモの契約者数は約5000万で、そのうちスマートフォンが200万くらいです。ほとんどの方がiモード端末なので、もっとスマートフォンに移ってくるでしょう。iモードを利用されているお客様が移ってくると、iMenuみたいなものは必要かなと思うんです。ただ、導線を作れば同じように儲かるのかというと、僕はそうではないと思っています。

 もしAndroid Marketにiモードにあるようなものが全部、それも無料で存在しているとしたら、従来のiモードコンテンツ(携帯コンテンツ)が有料のままならば負けます。Android Marketにないようなものは確かに有料でも生き残れると思いますが、似たものがあれば「だったらこっちだよ」となるし、そういう情報は口コミで広まってしまう。最初の半年や1年は有料コンテンツでも利用してくれるかもしれないですけど、いずれは移ってしまうでしょう。

 我々は従来のコンテンツを引き継ぐ仕組みを作りますし、導線の設計、構築もします。お客さんが移ってくるときに利便性が高ければ、それはやっぱりあった方がいい。しかし、移ったからといってそのままのモデルでユーザーが付き合ってくれるかというと、そんな甘い世界ではない。例えばニュースだって、インターネットでは無料で見られるし、RSSリーダーなどを入れてしまえばリアルタイムです。

 Android Marketに20万以上ものアプリがあって、無料のものもある。今までは“携帯コンテンツ”で、インターネットとは違う世界だったので価値があった。だけどWebには無料で楽しめるコンテンツがあり、「それでいいや」というお客さんがいる。それらと同じような内容で月額300円、500円をいただくというのは難しい。そこに工夫が必要なんです。

 例えば、無料のニュースは記事と写真のみだけど、有料のものは写真をクリックすると動画が流れて、記者が説明してくれるといった具合に、新しい価値を追加する。インターネットにあるものと同じものを出しているだけだったら、そのコンテンツプロバイダーは1年以内に消滅しますよ。電子書籍でも同じようなことがいえると思います。

神尾氏 コンテンツプロバイダーが従来の延長線上でスマートフォンのコンテンツビジネスを考えると、かなり厳しいということですね。

伊倉氏 厳しいでしょうね。

神尾氏 今のコンテンツ市場の規模を維持するのも難しいと。

伊倉氏 難しいでしょうね。というのはインターネット上に「フリー」があるからですよ。スマートフォンは幸か不幸か、インターネットのサイトを、きれいに見ることができるんですよ。しかもタブレットなんて、ほぼ同じじゃないですか。

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