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» 2011年07月11日 19時00分 UPDATE

「情報弱者って、結局はキーボード弱者なんじゃないか」――手書きアプリ「7notes」に浮川氏が込めた思い (1/2)

手書き文字を認識する独自の文字入力システムを採用したiOS向けノートアプリ「7notes」――アプリを作り上げたジャストシステム創業者の浮川氏が、開発の背景やアプリに込めた工夫を語った。

[山田祐介,ITmedia]
photo ジャストシステム創業者でMetaMoJi社長の浮川和宣氏

 ジャストシステム創業者の浮川和宣氏が設立したMetaMoJiが2月、iPadの“手書き”の可能性を追求した1つのノートアプリを発売した。「7notes for iPad」と名付けられたこのアプリは、手で書いた文字をテキストデータに変換できる独自の文字入力方式「mazec」(マゼック)を採用しているのが最大の特徴。変換精度の高さや変換方法の柔軟さがIT系ライターを中心に高く評価され、App Storeの有料iPadアプリのランキングで1位にもなった。6月にはiPhone向け「7notes mini(J) for iPhone」も発売し、その世界を広げている。

 「“情報弱者”という言葉があるが、結局は“キーボード弱者”ということになるんじゃないか」――iPad向け手書き文字入力アプリ「7notes」を開発したMetaMoJiの浮川和宣社長は、開発にかける思いの一端をこう表現する。6月28日、同氏はデジタルハリウッド東京本校で講演し、アプリの開発思想を語った。


photo 講演はITジャーナリストの神田敏晶さん(写真左)を司会に迎えて行われた

「母」にも使える文字入力システムを

photo 「7notes for iPad」の画面。手書き文字をテキストデータに変換できる

 MetaMoJiはジャストシステムの研究プロジェクトを引き継ぐ形で浮川氏らが2009年に設立した企業だ。同社ではいくつかの技術研究を進めていたが、iPadの登場を機に、手書きアプリの開発に注力したという。

 「iPadを見て、これは世の中変わるなと。『同じような物は何年も前からあった』と言うメーカーさんもいるだろうが、手書きの性能をはじめ完成度の高さが違う。みんなで触っているうちに『絶対これで(事業を)やろう』ということになった」(浮川氏)

 製品には何よりコンセプトが必要だと語る浮川氏。同氏の言葉からは、PCで日本語を“自然”に扱えるようにする長年のこだわりが伝わってくる。日本語入力の黎明期、コンピューターの記憶媒体の容量がとぼしい時代には、アルファベットよりもデータ容量を食う日本語表示は不要とされる向きもあったが、「日本にいれば日本語が当たり前」(浮川氏)という信念で同氏はジャストシステムを立ち上げ、日本語入力のソフトウェア開発を行なってきた。

 同社初のワープロソフト「JS-WORD」(1983年)では、「ニコニコしながら使えるワープロ」(浮川氏)をコンセプトに、マウスでハサミのアイコンをクリックすると文字が削除できるといった、当時としては画期的なインタフェースを導入。また、ホームポジションからなるべく手を動かさなくて済むように、変換キーをファンクションキーではなくスペースキーとするなど、今に受け継がれるキーボードの操作方法を作りあげた。その後、ワープロソフト「一太郎」や日本語入力システム「ATOK」が登場したのは周知のとおりである。

photo 「JS-WORD」の画面

 こうして長年、キーボードによる文字入力システムに関わってきた浮川氏だが、一方で「これでよかったのか」という思いもあったという。「キーボードには乗り越えるべき壁(操作を覚える必要性など)があった。“情報弱者”という言葉があるが、結局は“キーボード弱者”ということになるんじゃないか」(浮川氏)。

 キーボードの複雑さが、シニア層を中心にPC利用のハードルとなっている――そう考えていた同氏の前に登場したのがiPadだ。「こうしたデバイスが誕生した以上、いつまでもキーボードだけじゃなく、新しい価値観を提案するべき」(浮川氏)。こうして、「手で書く」というコンセプトで文字入力を見つめなおした7notesが誕生した。

 「一太郎が完成したとき、私の母親は60才ぐらいだった。頭の柔らかい優秀な女性だったが、キーボードが必要な一太郎はずっと使ってもらえなかった。けれど、手書き技術を試しに使ってもらうと『これなら私もできる』と。開発中から自信はあったが、それを聞いて『やってよかった』と思った」(浮川氏)

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