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» 2011年09月07日 20時06分 UPDATE

農園でもゲームでもなくていい――Mobage屈指の“女子ゲー”、ヒット支えた9か条 (1/2)

Mobageの中でも月間100万ユーザーが遊ぶ人気ゲーム「農園ホッコリーナ」は、ユーザーの6割が女性。女性のニーズに応えるゲーム設計を心がけた結果、“農園”でも“ゲーム”でもないものになったと企画担当者は語る。

[山田祐介,ITmedia]
photo ディー・エヌ・エー ソーシャルゲーム統括部 企画部の山口隆広氏

 Mobageの中で、ソーシャルゲーム「農園ホッコリーナ」が女性に人気だ。月間ユーザー100万人のうち62%を女性が占め、Mobageで公開されている女性ユーザーのランキングでは「怪盗ロワイヤル」を押さえて1位(9月時点)を獲得している。

 今でこそ人気タイトルとして注目を集めているが、1年前はまったくの無名ゲームだった。ターゲットを女性に絞り、ゲームの既成概念を捨ててコンセプトを作り直したことが功を奏したと、企画を担当するディー・エヌ・エーの山口隆広氏(ソーシャルゲーム統括部 企画部)は考えている。

 名前に農園とあるが、今では「農園ゲームではない」と山口氏。それどころか同氏にとっては「ゲーム」ですらなく、女性が元気をだすための「ツール」だという。そんな農園ホッコリーナに込められた工夫はどのようなものなのか――9月6日に開幕したゲーム開発者向けイベント「CEDEC 2011」で山口氏が語った。

「ゲーム」ではなく「紅茶」のような存在へ

photo 農園ホッコリーナの紹介サイト。かわいらしい動物や植物のイメージが並ぶ

 山口氏は2010年8月にディー・エヌ・エーに中途入社し、農園ホッコリーナの企画担当を他の社員から引き継いだ。当時の農園ホッコリーナは、作物や家畜を育てて楽しむ“農園系ゲーム”としての要素は持つものの、先行のゲームより機能が少なかったりと「中途半端」(山口氏)な存在で、知名度はほとんどなかった。会社は怪盗ロワイヤルのPRに全力を注いでおり、ユーザーへの周知も難しい状態だったという。

 ただ、その一方で「動物がかわいい」など女性に好まれる要素を当時から備えており、ユーザーの6割が女性だった。「男女比を見ると怪盗ロワイヤルは男性向け。“女子”に振りきれば農園にも勝ち目がある」――そう考えた山口氏は、ターゲットを女性に明確化し、ゲームのコンセプトを練り直した。

 新たな農園ホッコリーナで重視したのは、ユーザー目線でのゲーム設計。言葉にするのは簡単だが、いざゲームを作るとなると“ゲームかくあるべき”という既成概念や男性視点にとらわれがちと山口氏はみる。例えば当時、社内からはゲームの多機能化や達成感を演出する“やりこみ要素”の強化を勧める声が多かったが、山口氏は女性ユーザーや社内の女性の声を聞く中で、こうしたゲーム設計のセオリーと女性ニーズとの間に“溝”があると考えるようになった。

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 山口氏によれば、農園ゲームを好む“農園女子”は20〜30代の女性がメインで、仕事の合間に「ケータイを開いてサクっとかわいい動物や植物を育てたい」といった人たちだ。かわいい画面に“ほっこり”し、「仲間の4、5人を回って水やりやコメントをし、ちょっとした達成感とともに終了」できれば満足。機能ややりこみ要素を増やすと手軽に遊べなくなり、かえってストレスになると山口氏はみる。ゲームの難易度やトライアンドエラーにやりがいを見出すのは男性的な発想で、女性の気持ちは「努力して損するなんてとんでもない」といったものではないのか――そんな肌感覚を山口氏は持っている。

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 さらに、女性目線でゲームを作っていくと「農業のリアルさ」も意味が薄れていったという。女性は作物や動物の「かわいさ」に引かれていて、農業のシミュレーションを楽しんでいるわけではない。「作物が病気になる」などのリアルさを追求するのではなく、かわいさ優先でファンタジーな世界もアリのゲームへと、農園ホッコリーナは進化していった。

 「農園ホッコリーナは農園ゲームであることをやめた。これが転機になった」(山口氏)

 山口氏はソーシャルゲームを「ちょっとした息抜きや元気をもらうためのツール」と表現し、「比較すべきはほかのゲームではなく紅茶のようなもの」と説明する。農園ホッコリーナのコンセプト変更に着手して1年、「女性ゲームは農園」という機運を作った自負はあるが、ユーザーが喜ぶならば“農園”や“ゲーム”に固執しないというのが、山口氏の基本的な姿勢だ。

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