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» 2012年04月27日 21時33分 UPDATE

MCPCアワードグランプリ受賞:“命をつなぐ1分”iPadで短縮――救急現場のモバイル活用、県の全面支援で“使えるシステム”に (1/2)

救急車の中からひたすら電話をかけ続け、受け入れてくれる医療機関を探す――。住民の高齢化で救急搬送が増加した佐賀県のこんな事態を解決したのは、iPadと県の全面支援だった。

[柴田克己,ITmedia]

 モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)の主催による「MCPCアワード2012」の表彰式が、2012年4月20日に開催された。MCPCアワードは、モバイルコンピューティングの導入と活用により「業務効率化」「売上拡大」「コスト削減」「業績向上」といった成果をあげている企業や学校、団体、自治体の事例に対して顕彰を行い、今後の導入を検討するユーザーへの指針とすることを目的としたもので、今年で10回目の実施となる。

 今回のMCPCアワードでは、5つの事例がグランプリにノミネートされ、表彰式の会場で最終審査のためのプレゼンテーションを行った。その結果、佐賀県の事例である「佐賀県医療機関情報・救急医療情報システム『99さがネット』」がグランプリを獲得した。

 グランプリの最終候補に残った他の事例も含め、特別賞、奨励賞を受賞したのは一般企業や学校法人が多かった中、この「99さがネット」は、県としての取り組みという点でも注目に値する。最終プレゼンテーションについても、佐賀県知事を務める古川康氏が自ら行うなど力が入っていた。

救急の現場が抱える課題に「iPad」が有効だった理由

Photo 「99さがネット」のプレゼンテーションを行った佐賀県知事の古川康氏

 99さがネットは、佐賀県内における救急医療に関する情報を、病院と現場の救急隊員間で共有し、救急医療の質の向上を目指すためのシステムである。

 救急隊員が現場で情報入力や参照に利用する端末として「iPad」を全面的に採用しているのが特徴で、「Q-iPad」という通称でも呼ばれているという。古川氏は冒頭、「佐賀県内で、モバイルコンピューティングによって『命がつながれている』ということを感じていただきたい」と述べて、プレゼンテーションを開始した。

 佐賀県においては、住民の高齢化などの要因から、救急車で搬送される人の数が年々増加の傾向をたどっているという。同県内での救急車による年間搬送人数は、1999年に年間2万2000人ほどだったが、2011年には3万人を超えた。この搬送人数の増加に伴い、搬送先の医療機関が見つからなかったり、搬送先が高度な機能を持った特定の医療機関に集中したりといったことが起こるようになり、それが現場スタッフの疲弊や、救急患者のたらい回しなどの事態を引き起こしていたという。

 こうした問題に対応するため、国では以前から医療機関が急患の受け入れ可否に関する情報を入力し、救急隊員や他の医療機関との間で情報共有を行う「救急医療情報システム」を構築していたが、残念ながら全国的にその活用率は低かったのが実態だ。活用率が低い理由としては「救急車にはインターネット環境がないこと、そして医療機関が多忙なため入力率が低いことなどが挙げられる」(古川氏)という。

 事態の改善に向けて現場入りした担当者が目にしたのは、救急車の中からひたすら電話をかけ続けて、受け入れてくれる医療機関を探す救急隊員の姿だった。「何とか救急車の中で隊員が情報を得られるようにすれば、ムダな電話が減り、搬送の効率は上がるのではないかと考えた。また、医療機関側からだけの情報入力に頼るのには、やはり限界があると思われた。であれば、最も情報を必要としている救急隊員が、搬送終了後や帰りの救急車の中での時間を役立てることはできないかと検討した」(古川氏)

 この問題の解決にあたっては、すべての救急車にインターネットに接続できる環境を用意するとともに、医療機関だけでなく救急隊員からも搬送後に最新の情報を簡単に入力できる仕組みが必要だった。そのために、通信機能、端末のサイズや入力のしやすさといった観点で、PCでもスマートフォンでもない、タブレット端末である「iPad」の導入が必然だったという。

 救急現場で利用するiPadには、統一されたオレンジ色のカバーと、身体にかけて持ち運べるキャリングベルトを用意した。これは、iPadを「業務の中で使ってもらう」ことを意識したチャレンジだったという。

Photo ユーザビリティなどの観点からタブレット端末として「iPad」を選択した
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