スマートフォンを業務で使っていて困るのが、ビジネス文書のレイアウト崩れだ。スマートフォン向けにはさまざまなビューワアプリがリリースされているが、それぞれにクセがあり、PC上で見るのとは異なる形で表示することが多々ある。
こうした課題の解決を目指して、富士フイルムが開発したのが「GT-Document」。オフィス文書をキャプチャし、画像データとして見せることで、レイアウト崩れを防ぐサービスだ。画像データなので編集はできないが、PCで見るのと同じ状態でスマートフォンやタブレットでデータを確認できる。急なプレゼンの時でも、レイアウト崩れやデータの欠けを気にすることなく、データを用意することが可能だ。
GT-Documentは企業向けだけでなく、個人向けにも提供されている。iOS端末ユーザーとAndroid端末ユーザーは、オンラインストレージサービス「Dropbox」に保存したMicrosoft WordやExcel、PowerPointなどの業務データを崩れなく表示する「GT-Document Lite for Dropbox」を無料で利用できる。
そして、ビジネスデータをさらに見やすくするために開発されたのが「GT-Layout」という技術。この技術を利用することで、PCに比べて小さいスマートフォンの画面でも、上下左右のスクロールなしにビジネス文書をサクサク読み進められるようになった。
GT-Layoutは、GT-Documentで画像化されたデータの中の文字部分を検出し、1文字ごとにばらばらにして、画面の幅に合わせて自動で改行される状態に再構築する技術。この技術が実装された「GT-Document Lite for Dropbox Ver.1.2」のAndroid版では、ビジネスデータの読みたい部分をダブルタップするとデータの再構築が開始される。処理が終わると画面の上部に、改行できる状態になったテキストが表示される。
画像を再構築しているので、フォントや文字色はもとの文書と同じように表され、ピンチ操作で拡大、縮小が可能。このとき文字は、文字の拡大/縮小に合わせてスムーズに改行される。画像をよけて文字の部分だけを再構築するので、画像入りのプレゼン資料のテキストだけを読みたい場合にも便利だ。
画像をベースにしているため、文書内のテキスト検索ができないのが難点だが、「技術的には可能」(富士フイルムネット応用ビジネス推進部の山崎晋氏)とのことなので、今後の開発に期待したい。
この技術は、スマートフォンのビジネス活用が増える中、もっとOffice文書を読みやすくできないか、という思いから生まれたという。スマホの画面上で拡大・縮小しながら文書を読むと、なぜ読みづらいのか――。その理由を教えてくれたのが、GT-Layoutの開発に携わった富士フイルム ネット応用ビジネス推進部の山崎晋氏だ。
「文字を拡大した画面では、1つの画面に表示される行が切れてしまい、各行間で文脈的に関連がない文字列が連続して表示されることになる。人間の目は、1つの文章を見ながら前後の文書を参照しながら意味を読み取っているので、切れていると見づらく感じてしまう。だったら、1つの画面で全ての文脈がつながるような、見やすい表示を目指そう――ということで、GT-Layoutの開発が始まった」(山崎氏)
現状、この技術は無料のAndroid向けアプリ「GT-Document Lite for Dropbox Ver.1.2」のみに実装されており、iOS向けアプリへの対応は検討中としている。
法人向けサービスの展開はまだ具体的には決まっておらず、無料版サービスのフィードバックや法人顧客の声を聞きながら検討を進めるという。また、電子書籍分野の企業からの引き合いも予想以上に多かったため、デジタル雑誌などとの連携の可能性も探っていく考えだ。
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