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» 2012年07月05日 22時12分 UPDATE

モバイルトラフィック問題、端末メーカーやOS、アプリベンダーも解決に乗り出す (1/2)

モバイルトラフィックの急増によるネットワークのトラブルは、今や世界的な問題となっている。解決策が求められる中、Ericssonは端末メーカーやOSベンダー、アプリ開発者も巻き込んで対応を進めているという。【Ericssonのトラフィック&マーケットリポートも掲載】

[後藤祥子,ITmedia]
Photo 世界各国のスマートフォンの普及率

 スマートフォンの普及が世界レベルで加速しており、無線ネットワークにかかる負荷が急速に高まっている。

 これからはアジア地域での普及が本格化するとみられており、ネットワークインフラ大手のEricssonの調査によれば、2017年にはスマートフォンのトラフィックが2011年の20倍になるという。トラフィックの増加はネットワークの品質に影響することから、通信キャリア各社はオフロード対策を急いでいる。

 トラフィックに影響を与えているのは、実は“流れるデータの量”だけではない。パケット接続をリクエストするための信号や呼び出し信号といった、通信設備と端末の間でやりとりされる制御信号の増加が影響しているのだ。

 エリクソン・ジャパンのチーフ・テクノロジー・オフィサーで工学博士の藤岡雅宣氏によれば、データトラフィックもフィーチャーフォンに比べて10倍くらいに増えているが、制御信号の量が3倍からそれ以上に増えていることも問題になっているという。

 何が原因で制御信号が増えており、その対応策にはどのようなものがものがあるのか――。藤岡氏がエリクソン・ジャパンの取り組みとあわせて説明した。

Photo スマートフォンのトラフィック特性

アプリの仕様、端末の仕様が制御信号の増加に影響

 制御信号が増加する理由の1つは、スマートフォン向けアプリが“予測できない振る舞いをする”点にあるという。「アプリ開発ベンダーが自由にアプリをつくるため予測が難しく、これが問題になっている」(藤岡氏)。スマートフォンで人気が高いVoIP系アプリなども、短時間で多くの制御信号を発生することが分かっており、これらの振る舞いを理解して信号量を計測し、それに適したパラメーターを設定することが重要になるという。

 藤岡氏はまた、同じアプリやサービスを利用する場合でも、端末ごとに発生する信号量や電力の消費量が異なる点も問題だと指摘する。さまざまな端末から同じYouTubeのサイトにアクセスし、信号量や電力消費量をモニターしたところ、大きな違いがあることが分かったという。

 「ある端末は、一気にYouTubeのコンテンツをダウンロードしてあとは休んでいるので、消費電力は少なくネットワークへの負荷も低い。別の端末は、少しずつビデオをダウンロードするため、接続が有効であることを確認するためのKeepAliveという信号を出し続ける。この場合はネットワークへの負荷が高くなり、消費電力も大きくなる」(藤岡氏)

sa_er26.jpgPhoto 増加するスマートフォンの制御信号(画面=左)。端末やアプリの作りによっても信号の量が変わる(画面=右)

 こうした課題を解決するためにEricssonが設立したのが、スマートフォン・ラボだ。スマートフォン業界の「チップセット」「端末」「サービス/OSプロバイダ」の3分野で関連会社と連携を図ることを目的に設立され、互いに協力してさまざまな試験を行っているという。「相互接続して、バグがあったら対応するところまでを含めて取り組んでいる。端末は、市場に投入する前のものを持ち込んでもらって試験を行い、OSのレベルでも深く協力している。信号を減らし、端末の負荷も減らす方向でやっていこうというのが、スマートフォン・ラボの活動の1つ」(同)

 アプリ開発者向けには、テストの結果から得られた“推奨仕様”を公開しており、最新のAndroidガイドラインにもスマートフォン・ラボの推奨事項が含まれているという。

sa_er28.jpgPhoto Ericssonはスマートフォン・ラボを設立し、端末メーカーやOSベンダーと協力して解決策を探っている(画面=左)。アプリ開発者向けには水曜する仕様も開示している(画面=右)

標準化仕様の策定も進む

 3G移動体通信システムの標準化を手がける3GPPも、新たな仕様を策定して、モバイルネットワークの負荷軽減を図ろうとしている。Release 8で設定された「Fast Dormancy」も、その1つだ。

 スマートフォンは、アプリを起動した後、ユーザーがしばらく触らない状態が続くと、かなり早い段階でデータを通信している状態からアイドル状態に移行する。そしてアイドル状態からHSPA(高速データ転送状態)に行くときには、30以上の信号が転送される上、遷移に2秒くらいの時間がかかる。この繰り返しが大量の信号を発生させ、ネットワークに高い負荷をかけるというわけだ。

 そこで、アイドル状態にするのではなく、“無線ネットワークとしては生きているが、データ通信をしていない”「URA」(ユーラ)という中間状態でスタンバイする設定を設けたのがFast Dormancy。「URAからHSPAへの遷移では、信号量が約半分になり、遷移時間も0.5秒程度と短くなる」(藤岡氏)。

 藤岡氏によれば、最近では多くの端末がFast Dormancyをサポートしており、ネットワーク側が対応すれば負荷の軽減につながるという。日本での対応が待たれるところだ。

sa_er32.jpgPhoto URAとFast Dormancyの適用前(画面=左)と適用後(画面=右)の違い

sa_er34.jpgPhoto Fast Dormancyに対応する端末群(画面=左)。ネットワークを最適化することで、ネットワーク性能が大幅に改善された例もあるという(画面=右)


 Ericssonによれば、欧州のある国がネットワークの最適化を図ったことで、平均値で3倍くらいパフォーマンスが上がった事例があるという。生活する上で欠かせないインフラとなったモバイルネットワークを安定した形で運用するためには、関連するプレーヤーの相互協力が欠かせない時代になったといえそうだ。

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